ある日のこと、俺は仕事を終えていつも通り帰路についていた。
◆ ある日のこと、俺は仕事を終えていつも通り帰路についていた。
自宅マンションまであと10分ほどのところにあるコンビニに立ち寄り、夕食を買い求めることにした。
俺が住んでいるのは、いわゆる高級住宅街と呼ばれる場所で、俺の自宅もかなり立派な家に住んでいる。
そして、俺はコンビニの店内に入ると、まっすぐに弁当コーナーに向かい、今夜の夕飯を選ぶ。
今日はハンバーグステーキ弁当にするか。
俺が選んだのは、最近お気に入りのハンバーグ弁当だ。
今日は奮発してデザートのプリンも買っていこうかな。
そう思いながらレジに並ぶと、俺の後ろに1人の女性客が並ぶ。
彼女は、俺より3つほど年上のOLさんだろうか? 美人だし、なかなかのスタイルをしている。
胸の大きさはEカップくらいはあるんじゃないかな。
そんなことを考えていると、彼女の方から声をかけてきた。
「あ、あの……」
「はい、なんでしょうか?」
「あの、お恥ずかしい話なのですが、私、お金を家に忘れてきてしまったようでして、後払いでもいいですか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。
では、先に支払いを済ませてしまいますね」「すみません。
お願いします」
彼女が申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げる。
「いえ、気にしないでください。
それじゃ、ちょっと待っていてください」
俺はそう言って店員に声をかけてから会計をしてもらう。
「ありがとうございましたー」
こうして、無事に支払いを済ませた俺は、購入した商品が入った袋を手に提げて店を後にした。
さぁ、早く帰って夕飯を食べよう。
そう思って歩き出したところで、背後から誰かに呼び止められた。
「あの! すみません!」
「はい、どうかしましたか?」振り返ると、そこには先ほどの女性が立っていた。
「いきなりで失礼だとは思うのですが、私のことを助けてくれませんか!?」
「助けるって、いったいどうしたというんですか?」
「はい、実は私……」
そこで一旦言葉を区切った女性は、大きく息を吸い込んで、意を決したように口を開いた。
「私は、魔王なんです!!」
「……はっ?」
「ですから、私が魔王なんですよ」
何を言っているんだろう、この人は。
こんな夜中に人を呼び止めておいて、自分は魔王だなんて、ふざけてるのか?
「いや、冗談ならもう十分ですよ。
それではこれで」
呆れたような口調で言い放つと、俺はその場を立ち去ろうとした。
しかし、「ちょ、ちょっと待ってくださいよぉ!」と言って、俺の腕を掴んできた。
「放してください」
「嫌です。
あなたに信じてもらうまでは」
「はぁ……。
分かりました。
それで、どうして俺に助けを求めるようなことを言ったんですか?」
「それはですね、私と一緒に来て欲しいところがあるんです。
でも、普通に誘っても来てくれないと思ったので、あんな風に言ったんですけど」
「なるほど。
そういうことだったんですね」
「はい。
だから、一緒に来てもらえないでしょうか? 絶対に損はさせませんから」
うぅん、正直なところ面倒くさい。
だけど、このまま彼女を帰してしまうのは気が引ける。
それに、よく見ると彼女、足が震えているじゃないか。
おそらく、今の今まで緊張していたのだろう。
まぁ、それも仕方ないか。
いくら相手が自分よりも背の高い男性とはいえ、知らない人に自分の素性を話すというのは、かなりの勇気が必要だ。
しかし、それでもなお、彼女は俺に真実を話してくれた。
ならば、今度はこちらが応えてやる番だ。
「分かった。
あなたの言うことを信じよう」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、本当だよ」
「良かったぁ~」
心底安心したのか、彼女はその場にへたりこんでしまった。
「それじゃあ、早速行きましょうか」
俺は彼女に手を差し伸べて立たせてやった。
「はい。
よろしくお願いします」
こうして、俺と彼女は夜の闇へと消えていった。
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