第19話 ほれ、それをこすると・・・

ジャッキーはようやく念願のランプを手に入れた。長い年月探し求めて手に入れたランプ。実の所このランプは曰く付きで「ランプをこすると願いが叶う」と言われているのだ。ジャッキーは誰にも見られない場所で早速ランプをこすってみた。するとランプから煙が出始め、何か起こりそうな予感に興奮しつつもそれを続けていると突然ランプから魔神が飛び出てきてこう言った。


「呼ばれて飛び出・・・、チッ、なんだ男か。」


「その登場の仕方に男か女か関係あんのかよ!?」


「気分的なものだ。気にするな、ニンゲンよ。」


「今更魔神っぽい話し方にしてもオセェよ!」


「遅いなんて事は無い。今からだってやり直せるんだ。」


「なんか良い事言った風なドヤ顔ヤメロ!」


「それでなんの用ですか。こちらは忙しいんですよ。」


「話キケヨ!」


「聞いてますが何か?」


「そもそもランプの中に居るだけのお前が忙しいってどういう事だよ。」


「そんなプライベートをあなたに話す必要があるんですか?何を理由に?どんな権利で?」


「面倒な奴が出てきたよ・・・」


「失礼な。世の中キッチリ順序立てて話をしないと要らぬクレームがつくものです。リスクマネジメントは当然ですよ。知らないんですか?」


「ああ!もういい!とりあえず話進めるぞ!?」


「呼び出しておきながらその言い草。呼び出される側の身にもなってもらいたいものですね。」


「御託はいいから願いを叶えろ。お前、魔神なんだろう?」


「なんだ、そんな事ですか。ではとりあえずもう一度ランプをこすってください。」


「それでうまく行くのかよ。」


「ごちゃごちゃ言わずにさっさとこすりなさい。」


「わかったよ。」


ジャッキーは魔神の言った通りにランプをこすり始めた。ちょっとこすった程度じゃ魔神が納得せずダメ出しをしてくるのに半ギレのジャッキーだったがこれも願いを叶えてもらうためだと思い我慢しながらこすってみた。するともう充分なのか魔神が話し出した。


「ほら。かなり綺麗になった。そこなんてピカピカですよ。」


「願いの話はドコ行ったんだよ!」


「ですから、私の『ランプが綺麗になったら良いな』という願いが叶いました。」


「ち、っがうだろうが!俺の願いを叶えろよ!」


「なんだそういう事ですか。ならもう一度ランプをこすってください!」


「今度はちゃんと願いが叶うんだろうな?」


もう一度ランプをこすれと言われたジャッキーは半信半疑で睨みつつ魔神に言った。そんなジャッキーの問いに当然だと言わんばかりの顔で頷きながら魔神は答えた。


「ええ。そのままにしてください。すぐ別の担当が来ますから。」


「お前が叶えろよ!おかしいだろ!ちょっと待てよ!帰ろうとすんな!」


「何に不満があるんですか。そのまま待ってたらいつか他の魔神が出てきてくれますよ。」


「いつかも分かんねぇのかよ!おかしいだろ!そもそもそのランプの中にお前以外の魔神がいんのかよ!」


「そんなプライベートをあなたに話す必要があるんですか?何を理由に?どんな権利で?」


「それはさっき聞いたよ!話ちゃんと聞けよ!」


「聞いてますよ。ほら、手が疎かになってます。ちゃんとしてください。」


「だから!他の魔神を呼んでどうする。お前が願いを叶えろよ!」


「だからちゃんとランプをこすってくださいよ。そうすれば・・・」


「そうすれば?」


「そのランプの綺麗さはランプの精である私の状態に関係するのです。分かりますか?」


「それで?もしかして力が強くなって願いが叶えられる様になるのか?」


「ハハ!まさか!ランプをこすって綺麗にしているんだから私のお肌がピチピチのツヤツヤになります。」


「いい加減にしろよ!」


「そもそもですね。」


「なんだ?」


「こすれば何か夢が叶うなんて何それオイシイノ状態ですよ。そんなのがあるなら俺がやりたい。」


「お前が言うな!」


「あなたも物分かりが悪い人ですね。こすって願いを叶えたいならこれでもこすってください。」


「それって・・・」


「ほら、そのスクラッチをこすると当たりが出てくるかも知れない。」


「なんで賭けなんだよ!」


「同じ他人頼みじゃないですか。似たようなものです。」


「・・・」


「そもそも『願いが叶う』とあなたがたが話を伝えてるんですよね?私はそのお手伝いをするだけですよ?ですからあなたの望む方法で実現出来るアプローチを提案しているんです。なぜ都合良く解釈するんです?」


ジャッキーは答える事が出来なかった。

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