第18話 いつ、覚醒進化するんだ?

ハリーはベラと結婚した。幼馴染の二人がいつも一緒の所を周囲の人達は見てきたから、「ああ、ようやく結婚したんだな」と思い、結婚しても変わらない二人に微笑ましくももう少し浮かれても良いんじゃないかと思いもした。

周りの皆はハリーを良い奴だと口々に褒めた。正直ベラの見た目は良くない。平均より下、善し見して何とか平均かという位だった。そんなベラ本人でさえ気にしている容姿の事などハリーは何も気にしておらず、子供の頃の口喧嘩でベラの事を悪く言う友達から何度も庇っていたのを皆が知っている。

あれが幼馴染効果か、と子供の頃から一緒に居ればそんな事は気にならないんだなと皆は思い、ハリーに気があった女友達はハリーのベラへの態度を見てどうしてあそこにいるのが私じゃないんだろうと溜息をついた程だ。その女友達から見ればハリーに会うのが数年早いかどうかだけであれだけ大事に扱ってもらえるのだ。チャンスを逃したと思うのも当然なのだろう。


そうしていつもの日常が過ぎていくのだが、周りにはいつもの二人に見えてもベラはどうもハリーが何か言いたいが言えない素振りをし出しているのに気づいた。いつもあけっぴろげで大喧嘩する時はお互いの小さい頃からの周りに聞かれて恥ずかしい事まで言い合う二人なのになぜハリーはそんな素振りをするのか気になった。

そうしてまた日常が過ぎていくのだが相変わらず歯にものが挟まったような態度をする事があったので、ベラはハリーを問いただした。


「ねぇ、ハリー。何か言いたい事あるの?あるならちゃんと言ってよ。私とあなたの間で遠慮してどうするのよ。」


ベラの一言にハリーはどうしようかと悩んだ後に話し始める。


「その、なんだ。お前も頑張ってるとは思うんだが、その、なぁ。」


ほら、やっぱり何か不満があったんだ、とベラは思い、それにしてもハリーらしくない、とも思った。どうしてそこまで口ごもるのか。そんなに重大な何かなのかとベラは思いながらも聞き返した。


「ねぇ。言ってくれないと何が不満なのか分からないじゃない。はっきり言ってよ。」


強気に言ったベラにハリーはようやく話す気になったのか、重々しい口調でこう言った。


「いつ覚醒進化するんだ?」


「へ?」


「だから、いつ覚醒進化するのかって言ってる。」


思わずベラは呆けて変な声を上げ、それを聞いたハリーはよく聞き取れなかったのかと思い再度同じ事を口にした。当然何の事を言っているのか分からないベラは聞き返す。


「覚醒進化って何の事よ。」


「惚けなくたって良い。俺は知ってるんだ。」


「じゃあ、何を知ってるの?」


そう答えたハリーにベラは何を知っているのかと話を聞いてみた。そうしてハリーは子供の頃に聞いた話をベラに話し出した。

ハリーは子供の頃に誰が言ったかは忘れたがこう聞いたそうだ。『子供の頃に不細工な女の子は成長すると必ず美人になる』と。そして子供の頃に見ていたアニメでこう言っていた。『小さい頃に弱くて醜いキャラクターを大事に大事に育てれば究極進化した時にものすごい美しいキャラクターになる』と。成長を急かしてはダメで、急かすとそのキャラクターが無理をして究極進化出来なくなるかも知れないとも言っていたそうだ。


そこまで聞いてベラは気づいた。ハリーはいずれベラが美女になると思っているから今まで優しかったのだと。


「それで、もうそろそろだよな?今までさんざん焦らしたんだ。もう少しなんだろう?」


「・・・」


ハリーの言葉にベラはどう答えていいか分からなかった。

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