第6話 ダグラスは今日も憑いている

ダグラスは今日、張り切っていた。

いつもの賭場に向かうのだが興味を持った、というよりダグラスが熱心に面白さ半分、旨味半分で語った事で3人程ついてきた。

ダグラスは先輩風を吹かせて気取った態度で案内をする。

賭場といっても大きなカジノと言える程ではなく、少しこじんまりとした場所だ。それでもルーレット、カードと何種類かある。その中でもダグラスはカードを皆に勧めた。カードは駆け引きがあるから慣れるまで時間がかかるがブラックジャックなら運の要素が強いからディーラーがプロでも充分に勝負出来るはずだと説明し、皆もそれに従った。

連れがいくつかあるテーブルの空いた場所に散らばったのを確認した後にダグラスは顔馴染みのエディと隣り合ってポーカーの台に座った。


「ヒャア、ついてる!」


今日のダグラスはツイていた。いつもはショボくれた手札捌きでディーラー相手に駆け引きなんてして見せているのだが今日は違うとエディは思った。やっと俺にも波がやってきた、乗るなら今しかないと強気に攻めているようにも思え、ブラフを張ってもディーラーが降りてくれ、微妙な勝負もダグラスが勝ちを拾っていた。そんないつもと違うダグラスを見ながらエディは『今日はツイてないな』と自分の不幸に溜息を漏らした。

そんなダグラスの相手をしているディーラーは客の相手をしながらも思いに耽る。



この客はカードは下手な癖にのめり込むから扱いやすい。そして他の客を連れてくるから上得意なわけで、およそ賭博師がやるような巧妙な駆け引きもないからこちらが流れを作っても疑う事なく乗ってきて勝たせやすいのだ。新たな客を連れて来ればこちらがサービスするのを知っているから勝ちたい時には何とか誰かを連れてきて勝負する。今日の勝負も先日かなり負け越して懐具合が悪いからどうにか取り戻そうとしている様でいつも以上に強気に勝負を挑んでくる。こちらも偶には客に勝たせないと商売にならないから構わないし今日は新規の客も連れてきた。その分はサービスしてやっても良いだろう。新規の客には多少でも勝たせて成功体験を植え付けてまた来て貰わないとダメだし、この客が今日は大勝すればそれを見て欲が出て通ってくれるかも知れない。先行投資と思えば安いものだ。そういえば、この客も誰かが同じ様に連れてきたんだったな。誰だったかは忘れたが。



そうして時間はあっと言う間に過ぎ去り、ダグラスはエディのやっかみを受けながらも誘った皆と合流して帰る事になった。皆も一番ツイてない者でも少額だが勝てていて、それでも勝ちは勝ちだ、とダグラスも含めて少し興奮気味に騒いで仲間内で一番の勝ちになったダグラスが酒を奢る流れになりそのまま酒場へ乗り込んだ。

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