第5話 ラプラスの魔と1と0で彩られた世界

遂に世界の全ての謎を解き明かし私達の世界の法則も心理も解き明かした。


はずだった。



夏の暑い日にとある若者2人は料理しようと集まっていた。

お料理参考本は『簡単完璧お手軽料理100』だった。

全てを解き明かしたと言って過言ではない世界なのだ。マニュアルに、レシピに、ルールに従ってさえいれば全て予測の範囲を出ずに完璧なのだ。何も不安になる事はない。


「えっと、まずはイワシを水で洗って、えらや腹のまわりに残っているうろこをこすり落とす。えらぶたの下に包丁を当てて頭を切り落とす、と。」


「おい、包丁大丈夫か?変わろうか?」


「大丈夫、大丈夫。慣れてきたから。」


「慣れるの早いな。」


「任せろ。レシピもあるしバッチリさ」


「次はっと。腹を斜めに切って内臓を取り出す、っと。」


「結構グロいな。でもまあイケる!」


そうして身締めてからさばいたイワシとクレソン、そして香辛料とオリーブ油で味付けして完成した料理に2人はご満悦だった。


「な?おれらでも出来るだろ?」


「ああ、なんかいい感じだからこれからもやろうぜ」


2人は気分良く乾杯しながら少し遅めの昼食を食べる事にした。しかし、



それはサバだった。



全てを解き明かしたはずの世界は2名程病院送りにした。




その部隊は作戦前の準備に忙しかった。


「よぉし。お前ら、装備はしっかり揃えたか?」


「ハイ!」


「じゃあ、確認するぞ。毛皮帽、厚手のコート、ロングブーツ、ミトン、後、出来ればマフラーもだ。ちゃんと着たか?」


「ハイ!」


「これでマニュアル通りだ。行くぞ!」


そして部隊は完全装備で作戦へと向かうのだった。しかし、



それは夏の出来事だった。



全てを解き明かしたはずの世界は熱中症で部隊を病院送りにした。




とある職場でリーダーは部下にこう言った。


「このプリンターを使えば仕事の効率が10%アップするんだ。いいな?動かしておけよ?」


「え、でもずっと良く分からないものを印刷してますよ?」


「それで良いんだよ!そのプリンターを稼働させれば効率10%アップなんだ。余所の企業の研究成果でそう実績が出てるんだよ!」


「はあ・・・」


そしてプリンターは何か良く分からないものを印字し続けた。しかし、



それはただの無駄遣いだった。




とある作業員が清掃するために洗剤を使っていた。教えられたマニュアルを忠実に守って業務用洗剤を使って作業していた。誠実な、本当に誠実な作業員は丹念に、丹念に掃除をしました。その誠実さで置物はピカピカになりました。


「よし。マニュアル通りしたぞ。これだけ入念に擦れば充分だろう。今日も良い仕事したぞ」


そして置物は本当にピカピカになりました。しかし、



それは磨きすぎで置物の表面を多く削っているのだった。




ある為政者が言いました。


「この場所に大きなテーマパークを作れば300の経済効果が生まれ経済全体が活性化する」


そして大きな、国家としては無目的なテーマパークが出来たのでした。しかし、



それは好景気の時に算出した結果で作られたのだった。




ある研究者が言いました。


「大多数の被験者に協力してもらい、ある環境下での装置の性能結果を出しました。お喜びください。近年稀に見る高性能です。従来より30%向上しています」


研究者は声高く自慢げに言いました。しかし、



それは研究者とその一族が権力と財を駆使し、多くの共犯者を集めて行われた実験だった。




とある研究者が言いました。


「貴様、私に逆らうのか?科学でプラシーボ効果は実証されているのだ。つべこべ言わずに投薬しろ」


「しかし・・・」


「くどい。効果が実証されているのだ。気にいらないなら否定出来るだけの証拠を出してみろ」


「・・・」


そして投薬は行われ患者は回復したのでした。しかし、



それは本当に奇跡的な出来事だった。




とある計画者が言いました。


「計画を成功させるためにこの案を実行します。イチャモンツケルナッコーラ効果により成果が実績として証明されています。」


「しかし、それでは今までのルールにも影響が大きく、皆に負担をかけることに・・・」


「ならあなたが代案を出せばよい。成功させるための案、出せるんですか?」


「・・・」


「それと、ツベコベイウナー効果も同時に期待出来るこの案も実行します。」


「いや、しかし、そんな事をしたら拠点も設備も変えないと」


「だからそれならあなたが代案を出せばよい。成功させるための案、出せるんですか?」


「・・・」


そして、案は実行され計画は達成された。しかし、



それは単なるその場しのぎで既存のリソースを切り売りしただけだった。




ある計画者が言いました。


「というわけで、ヘッポコポコペン効果で150の経済の活性化が数値として認められているのでこの計画を実行します」


そして計画を実行したのだが、それだけの効果は出なかった。皆が計画者を追及するが計画者はこう言った。


「科学が証明した実績や理論を基に導き出した数値であり、それは証明されている。だから私は悪くない。どこかであなたがたが失敗したのだ。だから私は正当な報酬を受け取ってよいのだ」


そう言って、成果も出ていないのに報酬をきっちり貰って去りました。



ある計画者が言いました。


「何が何でもやるんだよ!規則?ルール?知ったことか。数値を達成させろ!やれば出来るんだよ!結果が全てなんだよ!」


そう言って今までの取り決めも無視して強引に目標を達成してしまいました。


「目標の数値はしっかり達成した。きっちり結果を出したんだから出した結果の分だけ報酬は貰っていく」


そう言って、後の事は考えずに報酬をきっちり貰って去りました。

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