第2話 王様の耳は超高性能ロボの耳
昔々あるところに王様がいました。
王様は世の中を良い方向へと導こうと思い、出来る限りの事をしました。
王様は言いました。
「大臣、上手く治政出来ているか?」
大臣は言いました。
「王様のお蔭で全てうまくいっております。こちらが報告書です」
王様は言いました。
「司法長官、悪人を捉え、善人が生きやすいようになっているか?」
司法長官は言いました。
「王様のお蔭で全てうまくいっております。こちらが犯罪数をまとめた報告書です」
王様は言いました。
「大臣、経済は安定しておるか?民が苦しむ事ないように支援しているか?」
大臣は言いました。
「王様のお蔭で全てうまくいっております。こちらが計画書と経過報告書です」
ある日王様は街を視察に行きました。するとどうでしょう。どこからか声が聞こえてきました。
「王様の耳はロバの耳ィー!」
その声に腹を立てた王様はその声の持ち主を探して問いました。
「ロバの耳とはどういう事だ」
するとその声の持ち主の男はこう言いました。
「もちろんそのままでございます。大臣などの言う事をそのまま鵜呑みにして聞いて疑う事すらしない王様の耳は、まるでロバのようだと言っているのです。そこの路地を少し奥に行ってくだされば分かります。表通りとは違う景色になるでしょう」
そして王様が男の言葉を疑う事もなく奥へと足を向けようとした時に大臣が言いました。
「王様。そのような男の言葉を信じてはなりません。その男は王様を路地に誘い込み襲うつもりなのです」
さて王様は困りました。どちらも信じれば行動できません。
ですが男がこう言いました。
「この映像をご覧ください。表通りは綺麗ですが、裏通りは今やこのように退廃している状況です。どうか王様、現状をその目でお確かめください」
王様は言いました。
「分かった。その映像を信じて奥を見に行こう」
そして王様は裏通りを見て、自分が大臣たちに騙されている事を知りました。
王様はすぐに調査して原因を追求し、その原因であった大臣たちを変え、善政を行い民は喜びにあふれました。
そしてしばらくしてからの事。
王様は言いました。
「大臣、上手く治政出来ているか?」
大臣は言いました。
「王様のお蔭で全てうまくいっております。こちらが証拠の映像と報告書です」
王様は言いました。
「司法長官、悪人を捉え、善人が生きやすいようになっているか?」
司法長官は言いました。
「王様のお蔭で全てうまくいっております。こちらが証拠の映像と報告書です」
王様は言いました。
「大臣、経済は安定しておるか?民が苦しむ事ないように支援しているか?」
大臣は言いました。
「王様のお蔭で全てうまくいっております。こちらが証拠の映像と計画書と経過報告書です」
ある日王様は街を視察に行きました。するとどうでしょう。どこからか声が聞こえてきました。
「王様の耳はロボの耳ィー!」
そう。王様の耳はロボだったのです。
王様は以前の経験を活かして情報をより多く集めるために改良していたのでした。
周囲1キロをソナーで索敵、同時に通信を受け、いかなる状況にも対処出来る装備を装着しているのでした。
しかしわざわざ叫ぶその男の事が気にかかり、その声の持ち主を探して問いました。
「わざわざロボの耳とはどういう事だ」
するとその声の持ち主の男はこう言いました。
「もちろんそのままでございます。大臣などの言う事をそのまま鵜呑みにして聞いて疑う事すらしない王様の耳は、まるで判断能力を持たないロボのようだと言っているのです。そこの路地を少し奥に行ってくだされば分かります。表通りとは違う景色になるでしょう」
そうして男は以前とは違う路地を指差しました。
そして王様が男の言葉を疑う事もなく奥へと足を向けようとした時に大臣が言いました。
「王様。そのような男の言葉を信じてはなりません。その男は王様を路地に誘い込み襲うつもりなのです」
さて王様は困りました。どちらも信じれば行動できません。
ですが男がこう言いました。
「王様。ほんの一部の映像だけでその他の全てが同じだと思ってはなりません。集める映像や証拠をあえて偏らせる事で錯覚させる事が出来るのです。これがそこの裏路地から向こう側の映像です」
王様は言いました。
「分かった。その映像を信じて奥を見に行こう」
そして王様は裏通りを見て、自分が大臣たちに騙されている事を知りました。
王様はすぐに調査して原因を追求し、その原因であった大臣たちを変え、善政を行い民は喜びにあふれました。
そしてしばらくしてからの事。
王様は言いました。
「大臣、上手く治政出来ているか?」
大臣は言いました。
「王様のお蔭で全てうまくいっております。こちらが証拠になる何点かの場所の映像と報告書です」
王様は言いました。
「司法長官、悪人を捉え、善人が生きやすいようになっているか?」
司法長官は言いました。
「王様のお蔭で全てうまくいっております。こちらが証拠になる何点かの場所の映像と報告書です」
王様は言いました。
「大臣、経済は安定しておるか?民が苦しむ事ないように支援しているか?」
大臣は言いました。
「王様のお蔭で全てうまくいっております。こちらが証拠になる何点かの場所の映像と計画書と経過報告書です」
ある日王様は街の声を自慢の高性能センサーで収集していました。するとどうでしょう。どこからか声が聞こえてきました。
「王様の耳はロボの耳ィー!」
またあの男です。
王様は以前の経験を活かして情報をより多く集めるために改良していたのでした。
耐腐食性、耐防塵性、防菌防カビ防錆性を高め耳の形をよりエレガントにしていたのでした。
しかしわざわざ叫ぶその男の事が気にかかり、その声の持ち主を探して問いました。
「わざわざロボの耳とはどういう事だ」
するとその声の持ち主の男はこう言いました。
「もちろんそのままでございます。大臣などの言う事をそのまま鵜呑みにして聞いて疑う事すらしない王様の耳は、まるで判断能力を持たないロボのようだと言っているのです。気づいていますか?王様。王様が指定した場所、王様が見るであろう場所はあらかじめ王様が疑う事のないように綺麗にされています。その場所では王様が疑う事ないようにエキストラが配置され、全てがうまくいっているように演出されています。彼らはその映像などに記録されている行動から生み出される収益から生活しておらず、その行動を王様に見せるために演技する事で収益を得て生活をしております。その収益はその映像には残らない行動で不当に集められその映像などを作成するために消費されているのです」
王様はどれだけ高性能のセンサーを実装したとしても無駄な事を知りました。表面を見るだけではどうにもならない事を知り途方に暮れましたとさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます