外伝2話

…今日は過ごしやすい日だ。私はそう思う。私の住んでいるところは天候は不安定だが、今日はなかなかの晴天だった

私の名前は女帝龍マドカ。みんなからは女帝様。だったりマドカ様って呼ばれてるわ

でもだいたい女帝様とは言われる。やっぱりそういうふうに言われたほうがいいのかしらね?

言いやすい名前で呼んでくれたらいいわ。でも、この龍人のネットワークは地位が低い高いは関係ないけどね

女帝。というのだから私はリーダーであって能力は逆らえない指示を出すことが可能だ。ただあまり使わないわ

せいぜい使うとするなら部下に言ったりカチトに何かするときぐらいだ。無差別にこの能力は使わない

でも私は名前が女帝だからある意味リーダーっぽいイメージあるけど、龍宮寺ハルカと豪龍焔ソトノはよくわからないわねえ

基本的に龍人だったら名字に「龍」ってつけるのが基本になってる。例えば何々龍ってね

ただハルカのほうは基本的に総合運を司る龍人だけどあまり運を司るような名前はしていない

ソトノに至っては健康運と金運アップなのに名字がやたらとかっこいい。ソトノは炎なんて吐かないわね

まあソトノの場合だときちんと子孫を残してるし豪龍焔だなんて名前のある子孫じゃないからとりあえず安心だわ

そんなこんなで私はとある龍人へ会おうと今日は車でお出かけだ。部下とカチトが玄関前でお見送りしてくれる

メイド「女帝様。どうか安全運転で」

カチト「マドカー。気をつけてなー」

マドカ「大丈夫よ。安全運転はいつだって心がけるわ」

そう言うと私は車のエンジンをかけた。ちなみにこの車、ハイブリッド車で燃費はいいわ。意外と最新型よ

私はペダルを踏み、出発した。この山道で対向車に会いませんように…会うとめちゃくちゃ大変だからね

山道を走る。今日はさっき言ったがいい天気だ。今日は一日中晴れだろうか?山道を抜ける

県道に着いた。対向車はいなかった。その時点で安心だ…私は目的地まで走った

目的地…今日はこの前巴が話してたあの子に会おうとした。暴雨龍ウジのことだ。彼女は普段から幽閉されている

でも、不思議なのは彼女自身の能力で悪用なんてしないはずなのに厳重に閉じ込められているのだ

そう考えると町中へとたどり着く。だがまだ目的地ではない。もうちょい先にある

暴雨龍ウジ…彼女には何度も会ってるけど、龍人の中でもまだ若輩者。と言った感じ。年齢もそこまで行ってはいない

町中を車で走る。今日も人と車が多い。車にあるナビをちらっと見て渋滞してないか確認しつつ、走った

あの子は元気だ。前に会ったときも元気だし初めて会ったときからとても元気よ。そんな子である

そろそろ着きそうだ。ウジはソトノみたく洞窟で暮らしてるわけでは無くちゃんと一軒家で住んでいる

その一軒家の前の門に着いた。私は門番の人に挨拶をする

マドカ「私よ。マドカよ」

門番「ははっ!マドカ様。今門を開けます」

そう言うと門は開いた。門の周りにも壁があってとてもじゃないが乗り越え不可能な壁の高さだ

どれだけ重要な龍人か…その思いがよくわかる。門が開くと私はその中を車で走行した

この壁に覆われた敷地はウジの他にも著名人も暮らしてるが、ウジ以外は会ったことないし興味はない

ウジの住んでいる一軒家へと来た。私は駐車場に車を止めて降りる

その一軒家は新しい家だ。私の暮らしてる屋敷よりもキレイな気がする。今度屋敷の壁に高圧洗浄させようかしら

そんなことより、私はウジの住む家のインターホンを押す。すると明るい声が届いた

?「マドカお姉ちゃん!?」

マドカ「そうよ」

?「待ってね~!今ドア開けるから!」

ほら明るい。彼女のいいところが早速現れた。ドアが開くと中学生ぐらいの子が迎えてくれた

ウジ「わー!マドカお姉ちゃんー!」

そう言うとウジが飛びついてきた。そう、私にはお姉ちゃんと言われている。嬉しい限りよ

マドカ「元気だったウジ?」

ウジ「うん!ぼくはいつだって元気だよ!」

思ったが彼女がとても一声で雨を降らす龍人とは思えない。年頃の中学生そのものの明るい子だ

身長はだいたい145センチだろうか。恐らく体重もそこまでない。黒髪ショートで目は緑色。キレイな瞳の色ね

一人称は「ぼく」だがちゃんとした少女だ

ウジ「ぼくの家に入ってよ!」

そう言うとウジはグイグイと腕を引っ張って中に入れようとする。痛い痛い。元気すぎる

マドカ「痛いからわかったって」

私は引っ張られながら家に入る

玄関を通り、リビングへ。そのリビングもまるでいつも掃除をしてあるかのようなキレイな場所だった

ある程度快適に過ごせるかのような備え付けのテレビだったり空調設備、キッチンまである

私の屋敷は古めかしい感じのキッチンなのでなんだかちょっとだけ嫉妬。新しい家はいいものだ

ウジ「ねえねえ座って!」

私「はいはいわかったわよ」

リビングのソファーに座る。ウジはお茶を淹れようとしてた

ウジ「お姉ちゃん来るといっつも嬉しい!」

マドカ「私が来るだけで嬉しいだなんて来たかいがあったわ」

慣れた手付きだろうか。もうお茶が来た

ウジ「はい!ぼくが好きなお茶だよ!」

マドカ「ありがとう」

そう言うと私はお茶をすすった。ずずー…。うん?確かに美味しいお茶だがなんか味わったことあるお茶のような…?

野菜…なのかしら?にしてはなんだろう。ほうじ茶では無さそうだ

ウジ「それね!ごぼう茶って言って美味しいんだよ!」

ご、ごぼう…

そう言えばウジは野菜が好きで中でも人参、ごぼう、ピーマンが好きだった気がする

人参だのごぼうだのピーマンなんて子供が食べたくない野菜ベスト5ぐらいには入ってるがウジは好きらしい

ウジ「ぼくの大好きな野菜のお茶があるなんて嬉しいからついつい買っちゃった!」

マドカ「そ、そう…よかったわね…」

ごぼうは確か食物繊維が豊富だから女性にはいい…かもしれない

ふと、お茶を飲んだら周りを見渡す。あまり散らかってる感じはしない。よくできた子だ

ウジ「どうしたのお姉ちゃん?」

マドカ「いや、あまり散らかってなくて良い子ね。って思ったわ」

ウジ「うん!ぼくもお掃除やるけどお手伝いさんが来てキレイにしてくれるんだよ!」

やっぱりお手伝いさんがいたのか。でもウジもやるというのだから褒めてあげたい

そんなウジは私の座ってるソファーの側に座る

ウジ「お姉ちゃん」

マドカ「どうしたの?」

私は言うと彼女は言う

ウジ「あのね。ぼくはあっちへこっちへ行って周りの地形に暴雨降らせるんだけど…たまに違う依頼が来たりするの」

違う依頼?なんだそれは

マドカ「どんなこと?」

ウジ「最近あったんだけど…ダムってこと行って水を増やしてほしいってね。それやってダムの水かさを増やしたの」

ああ、なるほど…。確かにダムの貯水は大切だ。あえてウジに頼み水を増やしたのね。でもそんな仕事していいのかしら

マドカ「でも貴女は畑に雨を降らせるのが仕事でしょ?あまり関係無い仕事はしないほうがいいわよ?」

ウジ「ううん。ぼくのことでみんなが喜ぶんだったら、ぼくはなんでもやるよ。そうしたほうが、ぼくだって嬉しいから」

…純粋。

その一言だった。こんな立派な子、滅多にいない。正直そこらへんにいる大人よりも純粋だ

はっきり言うと私以上に立派かもしれない。なんだか私の能力のほうが恥ずかしさを感じる。純粋な子で、立派な子ね…

私はふと思ったことを言う

マドカ「ねえ、ウジ…貴女はほぼ一人ぼっちで寂しくないの?」

ウジ「ぼく?お手伝いさん来るから寂しくないよ」

マドカ「違うわ。お手伝いさんはどうでもよくて夜一人でいるとき悲しい気分にはならない?」

ウジ「…大丈夫だよお姉ちゃん。だって、この家…もういなくなったパパやママがいた家だもん。いなくなったとき悲しかったけど

それでもパパとママの魂がここを守ってくれてるって言うんだったら悲しくないし、怖くもないよ」

…やっぱり純粋。

そう思うと少し涙が溢れそうになる。そこまで言うのなら、きっとこの子の未来は明るいだろう。私が手出ししなくてもいいわね

彼女の親は突然死んでしまって、私も葬式に出たけど…ウジは決して泣きはしなかった

その時点でウジはなんて強い子だろうと思ったわ。一番つらいのはウジのはずなのに、悲しみを堪えてた顔…いつまでも忘れない

だけど、私は言う

マドカ「…もし、何かあったり頼りたいことがあるなら遠慮なく私に言いなさい。頼っていいからね」

ウジ「うん!いつだってお姉ちゃんを頼りにしたい!」

…あら。そう言えばこの子スマホなどを持ってただろうか。一応確認してみよう

こうやってこの家に来るときは一体なんの連絡手段をつかっているのだろうか

マドカ「ねえ、ウジって何か通話手段のあるもの持ってる?」

ウジ「つーわしゅだん?」

おっと…遠回しに言ってしまった

マドカ「スマホとかガラケーのことよ」

ウジ「すまほ?この折りたためる電話のこと?」

…それはガラケーって言うのよウジ

マドカ「ガラケーね。持ってるならいいわ。固定電話でもいいのよ」

ウジ「うん!でもこてーでんわ?で話すかも!」

…固定電話だと電話番号わからないような気がするわ。ああでもメモっておけば大丈夫ね…

今までウジへかけてきた電話は全部固定電話かもしれないわ…。もしかしてまだ子供に近いからあまりスマホには興味ないかも…

マドカ「わかったわ。じゃあそうしましょう」

ウジ「うん!お姉ちゃんとの話、とっても大好き!」

何度もこの子は大好きと言ってるだろうか。もう正直私の屋敷に招待してそのまま暮らしてほしい

だが、彼女はそんなことはしないとさっきの会話でわかる。この家を守るようにして、暮らすだろう

そう言えば何か困ったことはあるだろうか。ちょっとだけ聞いてみるわ

マドカ「…ウジ、何か困ったことはない?」

そう言うと彼女はちょっとだけ考える。そして私の目を見て答える

ウジ「…友達が、ほしいなあ…」

友達…やっぱりこの子は年頃の女の子である。もしかしてテレビなどで中学生ぐらいの子がワイワイしてるのが羨ましいのだろうか

マドカ「そしたらウジ、頑張って勉強して大学に行ってみたらどうかしら。大学なら受験するだけで入れるから」

しかしこんな子に大学なぞ入れるだろうか。だが、いい案だったのかウジは明るい表情になる

ウジ「大学!いいかも!ぼく、勉強してみる!」

よしよし。なら後は門番に許可をとって外出してみるべきね

マドカ「大学に入ることができれば、きっと友達ができるわ。貴女の明るい性格なら絶対できる」

ウジ「うん!面白い案をだしてくれてありがとうお姉ちゃん!」

お、面白い…真面目な案なんだけどね。だけどさっきよりか明るい表情になってるウジ。将来の夢ができるかも


しばらく会話したあとそろそろ帰ることにした私。やっぱり別れるのは寂しいのか、悲しい顔をしていた

ウジは門の前まで来ていた

ウジ「もう帰っちゃうのお姉ちゃん?」

マドカ「ごめんね帰らないといけないの。大丈夫、また今度会いましょう?」

ウジ「…うん。わかった」

そう言うと私は車に乗り、帰ることにする。車にエンジンをかけて窓を開いてウジに言う

マドカ「ウジ!もし何かあったら遠慮なく私に言ってね!私は駆けつけるから!」

ウジ「わかった!お姉ちゃん!またね!」

その言葉を聞くと私は車を発進させた。別れるのはちょっと悲しい。だが、明るいあの子なら大丈夫だ。そして強いのだから

私はあの子の未来がすごい楽しみで仕方ない。だってまだ希望に満ちた龍人なのだから。友達だって絶対できる

そう思うと私だって笑顔になる。さて、屋敷に帰ったら屋敷の壁を洗浄するように指示しましょう


ジパングの昼過ぎ

未来と希望に満ちたウジに会い、私は嬉しくなった


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