外伝1話

…今日もそろそろ終わろうとしてる。窓に映る夕日を見た。今は16時。そろそろ閉店だ

アタシは緑心龍サチ。緑と心と書いて『えんしん』っていうのさ。簡単な名前でしょ?

アタシの主な仕事はカップルの縁を結び、幸せな生活を送れるようにすること。それも簡単な仕事だろ?

アタシが縁を結ぶとほぼ高確率でそのカップルは別れない。まあたまに別れたり離婚しちゃうことあるけどね。絶対とは言えない

分かるんだよね。縁結びで来ても『このカップルなら大丈夫』とか『うーん、駄目かもね』というのが。その内容は伝えないけど

ただ、アタシの仕事の内容はそれだけじゃなく、義兄弟だとか義姉妹の縁を結び、本当の兄弟姉妹にする役割だってある

今日もその義理の縁の結びがあった。本当に仲のいいのならそうすべきだ。任侠とはまた別だけどね…

アタシは縁結びの間の部屋を鍵を付けた。今日はもう終わり。神社の終わりがあるならこの縁結びも明日にまわしてほしい

アタシは早速隣にある縁切りの龍人に会おうとしてた。そんな距離はない。歩いてすぐだ

アタシは今でもあの龍人と妖怪の契を思い出す。やっぱりあの場所を紹介したのは正解だ。あの2人なら絶対未来は安泰だ

龍人とだからという特別なこともあるが、一目見ただけで太い赤い糸で結ばれた2人…後はどうするのかな

まあそんなことを考えつつ、縁切りの神社へとたどり着く。縁切りの神社も16時閉店だ

ワクワクしながら、アタシは縁切りの間の扉を思いっきり開ける

サチ「斬裂龍キリコー!」

そう言って扉を開けるとその龍人はいた。その縁切りの間はかすかに暗い。雰囲気を保ってるのだろうか?

明かりを保ってるのはせいぜいろうそくのみ。その間の上座部分に彼女はいた。こっちを見ている

彼女はあまり笑顔を作らない。威圧感のある口調をしていて、そこはちょっとだけハルカと似ている

アタシが元気に言うと、キリコは口を開く。黒いロングの髪がなかなか良い

キリコ「…俺になんのようだ。そもそもフルネームで言うな」

斬裂龍キリコ…黒い服を来て、こちらを睨むかのように鎮座してた。これはいつもどおり。決して怖くは無い。アタシはね

一人称『俺』って言ってるけど、体はちゃんとした女性だ。胸もまあまあある。そんなアンバランスな感じだからアタシは結構好みだ

サチ「何言ってるんだ。迎えに来たんだよ!」

キリコ「俺に迎え?どうせ遊びに来たのだろう?」

アタシは立ちながら言う

サチ「今日も結構来てた?」

アタシそう言うとキリコは答える

キリコ「お前…人と話すときに立って話すか?まずは座れ」

ちょっとした注意をされてしまった。アタシは言われるがまま、座ることにした

サチ「よいしょ…今日もアタシは結構来てたよ」

ようやくアタシが座ったからキリコもしゃべるようになる

キリコ「まあお前は縁結びだからひっきりなしにくるだろう。俺は縁切り。今日も縁切りの客が来てたな」

キリコは無表情で言った。怖いイメージのある縁切りだが、決してマイナスイメージのある縁切りではない時がある

サチ「そう言えばキリコの縁切りっていうのはただ単に別れるだけの縁切りじゃないんだよね?」

そう言うとキリコは説明する

キリコ「そうだ。俺は基本的に離婚などの縁切りがあるが、ストーカー被害に会ってるヤツの縁切りをして

二度とストーカー被害をさせないようにすること。虐待されてる子供の縁切りをして二度と虐待させないようにすることと

パワハラセクハラと言ったハラスメント関係の縁切りをして二度とさせないようにする

また、最近ではいじめられてる子供のいじめっ子との縁切りをしていじめを無くすというのもある…色々あるんだ」

そう。それ。縁切りというとマイナスイメージあるけどその人がプラスになるような縁切りだってあるんだ

アタシにはできない、このキリコのみしかできない祝福…?ができるのがアタシはキリコを気に入ってるとこなんだ

サチ「そんなことができるキリコが、アタシの気に入ってるとこなんだよ」

そう言うとキリコは少し笑ったような気がする

キリコ「俺を気に入ってもなんも意味はないぞ、サチ。…で、俺に会うからには何かあるのか?」

ああそうだ。本題があった

サチ「そうそう!飲みに行こ!」

キリコ「…なんだそんなことか。わかった。今着替えて支度するからそこで待ってろ」

そう言うとその場を立ち、別の部屋と行った。ふふふ、キリコは意外と腰が軽い。それはわかっていた

アタシと縁切りの龍人…会ったときから絶対仲悪い感じにはしたくないと思ってこうやって訪問もする

この斬裂龍という家系も昔からある家系だ。もちろんアタシの緑心龍というのも長い家系なんだけどね…

ちょっと経つとキリコが来てくれた。着替え早いなー。そう思ったら彼女から言う

キリコ「ふん。待たせたな。行くぞ」

サチ「うん!行こうよ」

そう言うとアタシとキリコはその場を後にした


神社を出て、街へと行く。キリコはアタシより身長は上だ。アタシは168センチだがキリコは172センチ

そんな身長差も好きでキリコがいいなあと思うとこのひとつなんだ。でも龍宮寺ハルカはぶっちゃけるとでかすぎ

究極とも言われるこの龍人は全員が全員でかいわけではない。まあ究極なんて言われるのは加護されてるって意味でもあるからね

自分で思ってるよりもこの究極な種族はあまり究極とか思ってない。アタシもそうだし、キリコもそう思ってる

しばらく歩くとアタシが見つけた良さげな酒屋へと到着する

キリコ「ほう。ここは見たことないな」

サチ「とても美味しい酒が出るんだよ。入ろう」

そう言うとその酒屋へと入る

酒屋に入り、それぞれのお酒を頼む。後酒の肴もね。ここは酒も美味しいし料理だって美味しい

お客さんも結構はいってるだろう。色々な座席から声がある。賑わってるのは何よりだ

酒が早速届いていた。アタシはビール。キリコは焼酎だ。彼女は焼酎が好きらしい

サチ「今日もお疲れ様!かんぱーい!」

キリコ「…ああ、乾杯」

そう言うと早速アタシはビールをグビグビ飲む。キリコは抑えめに焼酎を飲んだ

サチ「あー!ビール美味しい!」

キリコ「一気飲みか?後でヘトヘトになっても知らんぞ」

サチ「大丈夫大丈夫!龍人は酒強いから!」

キリコ「過信は禁物という言葉を知ってるか?」

サチ「しらな~い!」

キリコ「全く…」

そう言うとアタシはまたビールを追加で頼もうとしてた

しばらく、アタシとキリコは喋っていた。ちまちまと酒の肴をつまみつつ、お酒も飲んでた

サチ「…でさー。今日まだ未成年なのにうちの縁結びの場所来たのは驚いたね。もう結婚するみたいだし」

キリコ「ふん。そんな奴らの祝福なぞ面白くないな」

サチ「そうなんだよー。話をよく聞くともう子供ができてるってヤツだったし。あちゃー。早すぎるよなーって」

キリコ「…そういう奴らこそ、簡単に別れる」

サチ「アタシは未来が見えるから見たけどあまり幸せにはなれなさそうだったね」

キリコ「恋愛を勢いで過ごす…そんな奴らの気が知れないな」

そう言うとキリコはテーブルに置いてあった灰皿を近くに置いてタバコを吸おうとした。火を付けて、吸って、はいた

サチ「キリコのそのタバコの吸い方、なんだかかっこいいね」

そう言うとキリコはタバコを吸うのを止める

キリコ「俺はかっこいいと思えるか?」

サチ「だってかっこいいじゃん。かっこいいって言われたほうがいい?」

キリコ「俺の場合はどう言われてもいい。周りから邪龍なんて呼ばれてるからだ。それもどうでもいい」

そう言うとキリコは持ってたタバコを吸い、またはいた

邪龍…そう言えばキリコはその姿と縁切りの龍人なんて言われてるから邪龍と言われるときがある

だが、アタシはそうは思わない。邪龍なんて自分勝手な言われ方だ。アタシはその邪龍という言葉が理解できないし嫌いだ

今度アタシの目の前でキリコを邪龍なんて呼んだら助走付けて殴っていいかもしれない。そのぐらいだ

おっと、楽しいのにマイナスな感じになってしまった。アタシは話を切り替える

サチ「でもアタシは一番凄いなって思ったのは巴とハルカ。あの2人は最高だったよ」

キリコ「…風の噂で聞いたな。お前、特別な場所を案内したのだろう?」

キリコがそう言うと今日何杯目かの焼酎を飲む

サチ「そうだよ~。そこでセックスさせたからね~」

ぶふっ!キリコが少し吹き出した。少しながら飲んでた焼酎が垂れた

キリコ「お、お前…突然何を言い出すんだ」

サチ「言ってるとおりだよ?巴とハルカにセックスさせてアタシのとびっきりの祝福をさせたんだよ?」

そう言うとキリコは無表情で言う

キリコ「なるほどな…。女性同士のセックスだからある程度わかるような感じはするがな」

サチ「巴とハルカね、最初抱きついておっぱい揉んでその後おまんこをいじって最後は貝合わせでフィニッシュ!」

キリコ「お前、そこで淫語を使うのか…」

そう言うとまたキリコはタバコに火を付けて吸う。ああ、こういう話は聞いてるだけでエネルギー使うよね。アタシは吸わないけど

キリコ「…だが、そういう奴らほどもう離れられない関係にはなりそうだな」

サチ「未来を見たけど明るい未来だったよ。後は2人がどう結ばれるか…」

タバコの煙を吐き、キリコは言う

キリコ「ふん。俺がもしむりやり引き裂こうとしても無理だ。お前の祝福は強いが、特別な場所でやったならもうできない」

サチ「つまりはそういうこと!結婚いつかなー。楽しみだなー」

アタシは笑顔で言う。キリコは相変わらず無表情だ

キリコ「…しかし、今は変わったな。龍人なぞ高嶺の花なのに、ハルカが恋人を作るなんて…俺には無理だ」

サチ「そんなことないじゃん。キリコだって人間の心持ってるんだから大丈夫だよ」

キリコ「どうだろうな…」

この龍人、恋に関してはちょっと奥手だ。もしもアタシが…この人を付き合えるなら…そう思った

別の家系の豪龍焔ソトノはちゃんと結婚して今は子孫もいるほど恵まれた環境にあると言う

そう思ったらもう遅い時間になってしまった。そろそろ出ないと次の日に影響出そうだ

サチ「今日はもうこのへんにして出よっか?」

キリコ「そうだな。次もあるしな」

アタシたちは座席から離れた


神社まで着く。今日はもうそろそろお別れだ

キリコ「じゃあな。サチ。明日も頑張れよ」

サチ「うん!キリコも明日頑張ってね」

アタシはとびっきりの笑顔で言った。そしてキリコは神社に戻る

キリコ「…俺が、お前を愛せる心があればな…」

サチ「え!なんか言ったキリコ?」

キリコは何も返事をせず神社内へと入った

何か言ったような気がする。小声で。しかし聞き取れなかった

アタシは不思議に思いつつも、自分の神社へ戻ろうとした。さあ、明日はどんなカップルが来るかな?


ジパングの夜

アタシは気持ちいい環境で明日も縁結びの龍人として生きる


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