第5話
彼岸神社…洞窟…
ここではハルカが祈りをして参拝客も祈りをする
静かな場所だ。当然私語は禁止。なぜならうるさいとハルカの集中力が途切れるからだ
幸いうるさい参拝客はおらず、ちゃんと参拝客もお祈りをしてる
ハルカが祈りをしてる席の前にはお賽銭箱のようなものもある。これは全部ハルカの物だ
神社の前にもお賽銭箱はあるが、実はそこより洞窟というか祠のお賽銭のほうが多い
そんな参拝客がお祈りをしてる中、男女2人がヒソヒソと声を出す
男「なあ…最近この龍人様って肌がつやつやしてないか?」
男が小さな声で言うとハルカは心の中でつっこむ
ハルカ(私語厳禁よ。うるさいわね)
そして女が言う
女「そうだね…前と比べるとすごいキレイになってる気がするよ…」
静かな場所なのでそのヒソヒソ話もかすかに聞こえる。ハルカにも十分に伝わる内容だった
ハルカ(そう?巴と一緒にいるからそうなってるのかしら)
男「化粧してるのかな」
ハルカ(化粧なんてしてないわよ)
女「化粧…なのかなあ…そんな感じはしなさそうだけど」
男「ま、いいか…おっと、賽銭箱にお金入れよう」
その男女は賽銭箱にお金を投入する
男「行こうか」
女「そうだね」
そう言うと男女はそこから出た。男女が言ってたことをハルカは心で思った
ハルカ(私が…キレイ?巴といるからキレイになってるのかしら)
恋人がいると肌がキレイになる…そんなことを思ってた
お祈りの間を開ける時間は過ぎ、誰もいなくなった洞窟内。そこで今日のお賽銭をハルカは見ていた
ハルカ「んー。まあまあな数ね。この神社あまり宣伝とかしないからたくさんの量は出ないのよねー」
まああまり強欲でもない龍人なのでお賽銭の量はそこまで関係は無かった。ただ…
ハルカ「…最近巴の姿が見えないわ。どうしたのかしら。仕事…忙しいのかな」
自分の恋人を思っていた
デートをした日から1週間…巴はやっぱり忙しい時期に入っていた
会社が制作をする時期になり、早朝から仕事に入ったり、残業もあった。さすがの巴もこれは疲れる
パソコンばかり見てたので目は疲れるわ肩が凝るわ…すっかり疲れてしまったため神社に行く余裕が無かった
早朝代も残業代も入るが、それでも疲れるというのは変わらない。昼ごはんですら余裕が無い
そんな夕方…金曜日になり、巴はすごい疲れた体で会社を出た。正直、ここまできついとは思わなかった
ハルカとの会話もほどほどにしないと駄目だった。さすがのハルカは心配するような発言もあった
だが、巴はなるべく会話を続けようとしたのだが、すぐに会話が途切れる。早く寝ないといけないからだ
そんなことでいいのだろうか…。優しいハルカは今の状況をわかってはくれた
私がハルカの心の隙間を埋めないと…とは思ったが、今ではそんな余裕すらない。忙しすぎる
バス停前に着き、この日何度目かのため息をつく。親友の恵里菜は全然余裕そうで仕事をしてる
巴は空を見上げる。夕日がキレイだ。遠い国のヒダンゲは夕日がすごいキレイだと言う。そこに住む人たちが羨ましい
そう言えばシダレカという国はこの国と似ていると聞く。春の国、と言われてるからきっと相性が合うのだろう
バス停にバスが来た。疲れた体でバスに乗り込む。あまり多くない客だった。巴は座席に座る
正直無表情だ。そんな表情で、巴はここ最近多くなかったハルカとの会話を見た。心配する会話が続いた
そしてなんとなく写真を写したり画像が送られたハルカの体を見る。癒やしである
明日は休み。休日出勤も無さそうだが、何かあるかわからない。帰ってもスマホを持つことにする
巴「ハルカ…あまり行けなくてごめんね…」
巴の瞳から涙が溢れそうになった
自宅へと帰る。巴は郵便受けから何かを確認するとそのままベッドへと横たわる。正直疲れて食欲もでない
食事をしないとエネルギーが出ないことはわかってるが、疲れが優先して駄目だ
カップ麺でいいか…そう思い、買い置きしてるカップ麺に手を出す巴だった
食べた後、やはりというかハルカから連絡が来る。今日いっぱいは会話する余裕があった
ハルカの声が聞きたい…そう思い、巴は声を聞こうと電話をすることにする
巴「ハルカ…」
そう言うとハルカはその力の無い声にびっくりする
ハルカ「大丈夫巴!?全然元気ないじゃない!?」
巴「うん…この1週間怒涛のような感じで、疲れちゃったよ」
ハルカ「巴…」
巴「1週間でこんな感じだからもっと忙しくなるだろうなって…」
ハルカ「やつれた巴なんて見たくないわ…元気が貴女が好きよ」
巴「そうだね。でも、本当に疲れたよ」
ハルカ「そういう時は私の体を見て…」
巴「うん」
発言にも力が無い。ハルカは困ってしまったが…ふと、思い出した
ハルカ「ねえ、明日…暇?」
巴「うん。ハルカの元に行こうと思ってる」
ハルカ「私に会うのはいいけど、巴がもっと元気出るような人に会わせたいわ」
巴「…?元気が出る…人?」
そう言うとハルカは説明する
ハルカ「あのね。私の友人に健康を司る生き神様がいるの。その人から祝福を受け取れば、健康でいられるの
大丈夫。遠くないしバスで行ける距離だから、明日そこに行きましょう」
巴「わかった。ハルカのことだからきっと龍人様なんだね」
ハルカ「そうよ。彼女も私と同じぐらいの年数を生きてるけど、良い人だから安心してね」
巴「うん。じゃあ、明日そうしよう」
ハルカ「じゃ、明日ね!」
そう言うとハルカとの通話を終える。健康を司る生き神様?そんな人がいるとは初めて知った
巴はそう思いつつまたベッドで横たわる
一方、ハルカは巴との通話を終えるとすぐにその友人を伝えようと電話をする
ハルカ「…ソトノ?我だ。明日、我と一人がお前の元に行く。それはな…」
翌日…巴はハルカと神社で合流した後、山奥まで通じるバスへと乗る
山奥なのである程度進んだら道の周りの風景はすっかり森だ。巴は心配しつつ、ハルカに話しかける
巴「ね、ねえ…こんな山奥にあるの?」
ハルカ「そうよ。心配いらないわ」
そうは言ってもどんなものかわからない。そんなこと思い、目的地のバス停に着く。そこも森に囲まれてあった
巴「こ、こんな場所?」
ハルカ「このバス停から階段を上がるわ」
そう言うとバス停からすぐ横に階段があった。その階段も大きい幅で人工的に作られたような階段であった
2人はその階段を上がる。少し段はあるものの、疲れるぐらいの段でもないため上がる
上がった先に大きい門が見えた。その横に小屋もある。そしてその門には警備員らしき人もいる
ハルカ「着いたわ。ちょっと警備員に挨拶するね」
そう言うとハルカは警備員に言う
ハルカ「ハルカだ。その門を開けてもらいたい」
警備員「ハルカ様ですね?お話は伺っております。すぐに開けます」
警備員と門があるほどの人物?巴はますますよくわからない状況だった
門の周りにも鉄格子があってまるで侵入できないかのような風景。そのぐらい重要な人物であろうか
警備員が門を開ける。自動ドアだった。開けた後、ハルカは巴に顔を向ける
ハルカ「さ、行きましょう。ここまで来ればすぐよ」
そう言うと2人は門の先に行く。警備員は帽子を脱ぎ、一礼する
少し歩くとすぐに門は閉じられた。すぐに門を閉じる…その人物の顔がイメージできない
先へ進むと洞窟が見えた。ハルカは言う
ハルカ「ここが私の友人の家なのよ」
巴「ここが…」
そう言うと2人は洞窟内へと入る。そこも決して暗い道でも無く、明るい道であった
洞窟を進むとまた扉があった。木製の扉で、新しい木製だった。ハルカは横にあるインターホンのボタンを押す
するとすぐに声があった
?「はーい?」
ハルカ「ソトノ、我だ」
ソトノ「はいはーい。開けるねー」
そう言うと門が開いた。そこには、女性が笑顔で出迎えてくれた。顔は若い
その女性、銀色ロングをしており瞳の色も銀色であった。やつれてる感じは一切しない、健康体な体をしている
身長はハルカ以下だろうか。巴は175センチぐらいかな。とは感じた
ソトノ「いやー、ハルカ!久しぶりねー!」
ハルカ「相変わらず元気だな。…おっと巴、紹介するわね。彼女の名前は豪龍焔ソトノっていうの」
ご、ごうりゅうえん…?まず漢字が一切わからない
巴「ご、ごう…」
巴が一言言うとソトノは説明する
ソトノ「ごうは豪傑の豪でりゅうは龍。えんはほむらと書いて焔よ」
そう聞くと巴は手の平で漢字を書いてみる。なるほど。そんな名字なのか
巴「な、なるほど…すごい名前ですね…。私、東風平巴って言います」
ソトノ「巴ちゃんって言うのね!はじめまして!」
そう言うと握手をする。その手は暖かく、すべすべしていてまるで封印されてるかのような人でも無かった
巴「よ、よろしくおねがいします…」
ソトノ「さ、中に入ろ!」
巴「お、おじゃましまーす…」
そう言うと3人は中に入る
その中身というのも決して暗い雰囲気ではなかった。テレビ、ベッド、椅子、テーブル…住心地は良さそうだ
2人とソトノは椅子に座る。封印されてるような人…一体どんな人物だろうか?
2人は座ると早速ソトノは飲み物を用意してくれた。冷蔵庫から出したジュースであった
ソトノ「はい!ジュース!」
巴「ありがとうございます」
ハルカ「ありがとう。変わらない様子で何よりだ」
そう言うとソトノは笑顔で言う
ソトノ「変わらない変わらない!たまに子孫がこっちに遊びに来てくれて決して寂しくないわよ!」
言われてると巴はふと、思う。子孫?
巴「子孫?ソトノさん、子供がいるんですか?」
そう言うとソトノは椅子に座り言う
ソトノ「私には子供と孫がいるのよ。まあその子孫も豪龍焔とかいう名字じゃない別の名字なのよ」
そこまで言うと巴ははっと気づく
巴「孫…!?ということはソトノさん、おばあちゃん!?」
巴が言うとソトノは明るく言う
ソトノ「そうなのよ~!もうおばあちゃんなのよね!っていうか孫も恐らく結婚するだろうからひいおばあちゃんかもしれないわ!」
巴はさすがにびっくりする。その若い顔でひいおばあちゃんだの言われると理解ができない。若すぎる顔である
巴「え、ええ…」
もう何も言えない。龍人とは長生き種族すぎて普通の種族とは別すぎる次元だ
ハルカ「ソトノとは長い付き合いよ。もちろん、その子孫には会ったことあるわ」
いつの間に…
ソトノ「え、ハルカその口調可愛い。私にも向けて言って?」
ハルカ「駄目だ。この口調は巴のみの口調だ」
ソトノ「えー。そんな口調ってことは…恋人同士かしら?」
巴は言われるといや、ちょっと恥ずかしいかな…とは思ったが
ハルカ「そうだ。我と巴は恋人同士。誓いあってる」
そう言うとソトノは言う
ソトノ「そうなの!いやー、こんなキレイな恋人をゲットできるとかハルカやるねえ~!」
よかった。同性愛がわかる人で。だが巴は不思議に思った
巴「でも、ソトノさん一人なんですか?旦那さんは?」
そう言うとソトノは笑顔でまた言う
ソトノ「いや、私の旦那、もういないのよ。55歳ぐらいで死んじゃったから!」
巴「そうだったんですか…すいません」
ちょっとタブーだったか。だが、ソトノの顔は明るい
ソトノ「いいのよ。私に尽くしてくれて…良い夫だったわ…。種族はもちろんヒューマンよ」
そう言うと話を切り替えようとしたハルカ
ハルカ「ねえ巴、そろそろ本題へ入りましょうか」
巴「健康を司る龍人だよね?」
ソトノ「そうそう!私、生き神様だから健康と金運が良くなる龍人なのよ~。巴ちゃんに特別に!祝福してあげるわ」
巴「わかりました。おねがいします」
そう言うとソトノは巴の頭に手を置き、祝福の術をかける
一瞬だけ光が灯り、そして終わる。祝福の術とはそういうものが多い
ソトノ「はい!終わり!ねえ、体が軽くなったと思わない?」
巴は体が軽く感じたと思った
巴「あ!本当だ!すごい、体が重く感じない!今からでもダッシュできるぐらいには体が軽いです!」
ソトノ「は~い成功~!後、金運アップもあるから貴女はお金が増えるわよ」
ハルカ「良かったわね。巴」
巴「ありがとうございますソトノさん!ハルカも紹介してくれてありがとう」
そう言うと巴はふと、思う
巴「ソトノさん、もしかしてまるで幽閉されるようにここに住んでるのはこういう術が使えるから?」
ソトノ「半分正解。もう半分はこの術、効果が強すぎるからあっちこっちでできないのよ」
巴「ハルカとは違う生き神様なんですね」
ソトノ「実はまた別の龍人の家系でもっと効果の凄い龍人がいるのよね。挙げ句には縁切りの龍人とかいるわ」
巴「え、縁切り…!?」
その言葉を聞き、ちょっとだけ恐怖を感じた巴
ハルカ「ソトノ、あまりマイナスイメージの龍人を紹介するな。我だってその龍人と会いたくない」
ソトノ「失礼失礼!あっはっは!」
ハルカ「全く…」
そう言うとソトノはまた笑う。明るい性格で嬉しい感じがした巴であった
そろそろ帰る。玄関ドアで2人を見送るソトノ
巴「今日はありがとうございます。祝福をかけたこと、感謝してます」
ハルカ「お前の効果は凄いからな。ソトノ、我からも言う。ありがとう」
ソトノ「いえいえ!いつでも来ていいわよ!ずっと暇なんだから!」
ハルカ「ああ。じゃあな。達者でな」
そう言うと巴とハルカは帰る。見えなくなるまでソトノは見ていた
見えなくなったらソトノは静かにドアを閉じる。そして、備えてあった鏡を見てソトノは言う
ソトノ「若いとか言われて私、ちょっと自信ついちゃったわね…うふふ!街に言って男か女、どっちかをナンパしようかしら!」
その明るい表情は決して曇ってはなかった
ソトノ「あ。でもあの2人なら愛結びの龍人を紹介すればよかった。あの龍人なら…きっと2人の愛がもっと深くなるわ」
ソトノは早速その愛にまつわる龍人に連絡しようとした
ソトノ「もしもし?ソトノよ。実は、ちょっと紹介したいカップルがいてね?それは…」
ジパングの昼すぎ
明るい太陽で2人の未来も明るいようだ
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