第4話

彼岸神社…

夜、ハルカは神主に外出の許可を出そうと言おうとしていた

神主は既に全ての作業を終え、居間にいた。ハルカが見つけると声をかける

ハルカ「…大越神主よ」

そう言うとその神主はその声に振り向く

神主「おや。龍宮寺殿。いかがなされた」

ハルカは言う

ハルカ「我は、外出をしたい。許可を出してくれるか?」

言うと神主は少し驚くような顔をした

神主「外出?龍宮寺殿。貴女は今まで外出はしないと言ってたはずだが」

だが、ハルカは言う

ハルカ「我もそろそろ周りの環境に慣れないと今後もどういう参拝客が来るかわからん。だからこそ。だ」

神主は少し考えた。どこか変わったのだろうか?しかし何か目的がありそうだ。断ることもいかない。そして言う

神主「…わかった。外出の許可を出そう。あまり暗くならずに帰ってくるといい」

ハルカ「助かる。明日行くからそのつもりでいてくれ」

その言葉で終わる。ハルカは去った。だが、神主は思った

神主「龍宮寺殿がそんなこと言い出すとは…何かあったのだろうか?」

祀られる龍人。外出すると言うのは珍しいことだ。だが、これ以上のことは思わなかった

ハルカは自室へと戻った。自室の戸を閉めた。そして喜んだ

ハルカ「やったわ~~~~~!こんな簡単に許可降りるとかかなり楽勝だったわね~~~~~!」

もう早速明日が待ち遠しい。スマホを見て巴に返事を送る

ハルカ「…巴、私、今から楽しみよ」

そう言いながら夜は過ぎていった


朝…

巴は早速家を出た。もちろんその目的はハルカとのデートである

神主とちょっと話しただけで簡単に許可が降りたというのは少しびっくりしたが、それも生き神様だからこそ…簡単だったのかも

巴はちょっとオシャレな格好をしてる。しかしハルカのほうはどういう格好で来るんだ?それも気になる

もちろん、あまりオシャレなぞでき無さそうだからどの格好でもいいが…

待ち合わせ場所は小さい遺跡だ。神社と巴のマンションの中間?あたりにある場所だ

この国にも4つの国と同じように遺跡がある。だが、その遺跡は小さい。そしてそんな意味の深いものでもない

ヒダンゲのようにたくさんある。というわけでもない。一部大きい遺跡だってあるが…

その遺跡まで歩いていく。徒歩で行ってもそこまで時間のかかる場所ではない。巴は思う

巴「楽しみで仕方ないけど、ハルカどういう格好で来るんだろ」

一番気になってたのはそれ。だがどの格好でもいいような気がする。なんせ龍人なのだから

てくてくと町中を歩く。最近ここらへんもマンションや大きい家が建築ラッシュのごとく建ってる気がする

何気なくスマホを見る。どうもその待ち合わせ場所にそろそろ着くらしい。早いな…

大きい龍人だからこそか…歩幅もでかいのだろう

その遺跡へと着きそうだ。だが、待ち時間というのは無くなったに近い。既にハルカがいたからだ

その姿を見てすぐに声をかける。ハルカの格好はどこか可愛らしい服を着ていた

巴「ハルカ~!」

ハルカ「あ!巴~!」

2人は近寄る。そしてお互い笑顔になった

巴「ハルカ、その可愛らしい服は?」

ハルカ「ふふふ。これ、奉納よ」

出ました奉納。前の下着と言い、これも奉納されたものなのか。絶対ハルカのファンがいるかもしれない。そう思った

フリフリの服でいつも着てる龍人の服ではない。いや、龍人の服でもそれはいいのだが…。そんなこと思ってたらハルカは言う

ハルカ「ねえねえ都会に行くんでしょ?」

巴「そうだよ。バスに乗って都会へ行くよ」

ハルカ「うん!楽しみよ!」

バス停で待ってると巴はひとつ確認したいことがあった

巴「ねえ、ハルカ。お金…持ってる?」

なにせ龍人で祀られる人物なのだからあまり持ってはいないだろう。その場合はおごるしかないと思ってたが…

ハルカ「うん。持ってるわ。ほら」

ハルカの財布からたくさんのお金がたんまりと持っていた

巴「え!?何このお金!?なんでそんなに持ってるの!?」

びっくりするとハルカは答える

ハルカ「これも奉納よ。たまにお祈りの間でお金を置いてく人いるの。これ全部私のものよ」

な、なんと…奉納とか言う便利な言葉でここまで持ってるとは思わなかった。さすが龍人…

巴の給料ではあまり持ってないのにそこまで持つとは…

巴「そ、そうわかった。じゃあバス賃は大丈夫だね」

ハルカ「余裕よ~」

そう言ってるとバスが来た。2人はバスに乗る

バスに2人乗りの座席へと座る。大きい女性なのでなんだか目立つ。だが、そんなこと関係無しである

2人は寄り添うように座った。この龍人は甘えん坊だ。まあ下着姿や裸体を送ったのだから当然だろう

ハルカ「ねえねえ都会ってどんな感じなの?」

巴「そうだね。ビルとか店がたくさんあるとこだよ」

ハルカ「楽しみだわ~。恋人と一緒に行ける都会はきっと良いとこなんだね!」

巴「ふふふ…行けばわかるよ」

そう言いながらバスは都会に向けて発進する


バスを降り、2人はその都会の風景を見る。ハルカは驚く

ハルカ「ここが都会…!?すごいわね!」

ビル、店、様々な建物が並ぶこの場所。ここはマルノウチ。都会のど真ん中だ。ハルカはキョロキョロした

巴「私は慣れてるけど、ハルカは初めてに近いよね」

そう言うとハルカは巴の顔を見る

ハルカ「今からワクワクしちゃうわ。どこでも楽しそうだわ」

ハルカは言われるまでもなく巴の手を繋いだ

巴「さ、いこ。ハルカ」

ハルカ「うん!」

2人は都会を歩く

この国の都会だから様々な種族がいる。ハルカと同じ種族は恐らくいないとは思う。恵里菜と同じ種族はいるだろう

大きい女性であるハルカはやはり目立つのか。少しばかり通り過ぎる人からちらっと見られる

だが、あまり感じはしない。ただ単純に大きいのと小さいのが歩いてるだけだ。そして2人はカップルなのだから

しばらく歩いていると良さげなアクセサリー屋へと着く

巴「あ、ここのアクセサリー屋は私が贔屓にしてるとこだよ」

ハルカ「じゃあ入ろう!」

その店に入るとキレイなアクセサリーだけで無く可愛らしいアクセサリーがある店だった

ハルカ「わあ…なんて素敵な店なんだろう」

巴「実は私の首飾り、ここの店で買ったんだよ」

ハルカ「そうなんだ!じゃあ私も買いたいわ」

そう言うと2人は店内を見渡す

ハルカのことだからすぐに決まりそうな予感はするが、似合いそうなアクセサリーというのも少し難しい

ハルカ「うーん…。これ…いや、これかな…」

ハルカがアクセサリーを見つつ、ふと、冬美の書いたエッセイを思い出す

冬美はアルエルとの最初のデートが工業地帯に行ったとのことだ。元々アルエルはそういう工業地帯が好きだったから。らしい

だがこの国、工業地帯はあるがそこまで面白い場所ではないのでハルカとは行かないだろう。巴も興味ない

そんなこと思い出しつつ、ふと、ちらっとアクセサリーを見てみる

巴「あ…これ…」

前に愛の舞をしてくれた時にそのハルカを見て例えた花のアクセサリーがあった。そう、月下美人である

彼女にはこれがピッタリだ。ハルカを呼ぶ

巴「ハルカ、これ…どう?」

巴が言うとハルカは巴の側に行き、そのアクセサリーを見る

ハルカ「わあ…!なんてキレイな花…!これ、なんていうの?」

巴「月下美人だよ。夜咲いて、早朝にしぼむ。切ない花なんだけどね。その満開になった月下美人は美しすぎる花なんだよ」

そう言うとハルカは心が躍る

ハルカ「見たことないけど、きっと凄いキレイな花なんだね…!」

巴「それでね、これ別名は『クイーンオブザナイト』って言って、わかる?夜の女王って意味だよ?」

ハルカ「夜の女王…もしかして私のことを言ってるの?」

そう言うと巴はあの時舞を見せてくれたことを思い出す

巴「そうだよ。本当にあの時のハルカは素敵でキレイだった…満月の夜に舞って、月下美人だって思ったからさ」

巴が言うと、ハルカは喜びを爆発させた

ハルカ「私は月下美人!女王!嬉しい~!」

巴「これ、どう?」

ハルカ「買うわ~!」

決まった。そして買った

店を出ると店前でその月下美人のアクセサリーをハルカに付けた。ハルカはとても喜んでいた

ハルカ「ふふふ…私は月下美人…夜の女王…」

巴「気に入ってくれたなら私だって嬉しいよ」

そう言うとお次はどこに行こうか。様々な店があるから色々なところへ連れて行きたいが…

ハルカ「うーん。そろそろお腹すいたわ」

巴「あ、もうこんな時間か…」

ハルカ「どこか、美味しい店ないかしら」

巴「ハルカ、ここはジャンキーな店で食べない?」

ハルカ「ジャンキー?どういう意味?」

そう言うと巴はとある店へと行かせた。そこはハンバーガー屋。そこでハンバーガーを頼んだ

ハンバーガー、フライドポテト、ジュース。それだけでハルカは目を輝かせてた

ハルカ「こ、これ…噂には聞いてたけど…美味しそう…!」

本当ならこんなデートでハンバーガー屋なんて駄目だろうが、ハルカは世間知らずなのでこういうのは良いと思いこの店に来た

ハルカはいただきますも言わずハンバーガーはむさぼり食った。食べたら笑顔になった

ハルカ「お、美味しい~!私、実はこういう肉料理好きなのよ~!」

巴「良かった。ハルカ、こういうの好きそうだから」

ハルカ「大好きよ!はむっ!はむっ!肉ってどうして美味しいのかしら~!」

巴「落ち着いて食べて。食事は逃げないよ」

ハルカ「あ!このフライドポテト?っていうのも美味しい!じゃがいもってこんなに美味しいのね!」

巴「話を聞いてない…」

ハルカはあまりの美味しさでちょっとだけ我を忘れている

ここのハンバーガー屋も美味しい店で店内は賑わっている。巴とハルカはその客の一員だ

あっという間にハンバーガーとフライドポテトを平らげたハルカ。その顔は満足そのものだった

ハルカ「ふー!美味しかった~。…あー、ちょっとトイレ行くわ」

巴「うん。いってらっしゃい」

そう言うとハルカは席を離れトイレに行く

巴はハルカの食べっぷりに驚いたが、初めてなのだからこれは仕方ないなとは思った

巴「しかし本当に喜んで食べてたから…正解だったね」

男「よーよーそこねえちゃん」

突然男が寄ってきた

巴「え?!何!」

男「なんだかキレイな女だなあ。なあ俺と遊ばないか?」

ナンパか?だが、巴は断る

巴「い、いやだ!あんたなんかとは行かない!私は…!」

そんなこと言いつつ男は巴の腕を引っ張ろうとしてた

男「行こうぜ。遊ぼうぜ」

巴「や、やだ!助けてハルカ…!」

そこまで言うと戻ってきたハルカはすぐにその緊急事態を察知した

ハルカ「貴様ぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

店内に響きわたる怒号。その声は全ての客、店員に聞こえた。男はその怒号で思わずハルカのほうに振り向いた

男「な、なんだ…!?」

ハルカ「貴様…!この女に手を出すな!!我は龍人。そしてこの女は我のもの!!貴様…女と我に手を出したら…わかるな!!」

男「りゅ、龍人!?そんな…!龍人がなんでここに…!?」

男は恐怖した。龍人という存在を知ってるからだろう。男はガタガタする

男「う、うわああああ!!」

男は巴に何もせず店内を逃げるかのように出た

ハルカはその男を出たのを確認するとすぐに巴のほうへ行く

ハルカ「大丈夫だった!?怪我はない!?」

巴「う、うん大丈夫だよ。ありがとうハルカ。一歩遅かったら大変なことになってたよ」

ハルカ「うんうん…もう大丈夫だから。私が守るからね」

そう言ってハルカは抱きしめてた


店内を出るとより力強く手を握って2人は歩いてた。恋人繋ぎである

巴「あの男…どうして龍人だと聞いて逃げたんだろ…」

そう言うとハルカは言う

ハルカ「…知ってる?『龍人に手を出したら罰が当たる』って話を」

巴「罰が当たる?そりゃ神聖な龍人だからそうなるだろうけど…」

巴が言うとハルカは説明する

ハルカ「私とは違う龍人の家系なんだけど…ある日ね、誘拐事件が起きたのよ。狙いは龍人の子。車で誘拐されたのよ」

巴「誘拐…」

そう言うとハルカは神妙な顔で話す

ハルカ「でも、その誘拐はすぐに終わったわ。あっという間にね。なんでかわかる?」

巴「車で誘拐されたから…事故?」

ハルカ「そのとおり。誘拐したヤツは交通事故起こしてね。車は大破されそいつは重症を負い、そのまま逮捕。

でも誘拐された子は怪我ひとつもせず保護され家族の元へ戻っていったの」

巴「すごい…そこまで守られた龍人なんだね…」

ハルカ「だから、あの男も龍人のこと知ってて逃げたのでしょう。そう、加護のある種族だからね」

なんて種族なんだ。加護のある天使や悪魔の話は聞いたことあるが、まるで神様に加護された種族とは。巴は驚くしかなかった

巴「ハルカ…やっぱり貴女はすごい。龍宮寺家って龍人の中でも究極中の究極じゃないかな」

なんせ一発の怒号で男を追い出したようなものだから…。そう言われるとハルカは笑う

ハルカ「ふふふ…そうでもないわよ。まあ生き神様って形でいるけど…私だって、今は恋人といる女性だからね」

巴「…そうだね。私とハルカ。一緒にいる、恋人同士だもんね」

ハルカ「だからハルカと共に生きたい…そう思えるようになったの」

巴「ハルカ…」

そう言いながら2人は恋人繋ぎをしながら都会を歩いていた


夕方。色々な場所を回った2人はそろそろ帰ろうとしていた。せっかくだからと言って巴は彼岸神社へとお見送りをしてた

彼岸神社の前に着く。2人を邪魔する僧侶は近くにいないな。辺りを見渡して、2人は抱きつく

ハルカ「今日はありがとう。貴女とのデート…最高だったわよ」

巴「うん!ハルカと一緒にいれて嬉しかった…!また行こうね!」

そう言うと2人は見つめ合う。そして自然とキスをした

ハルカ「…じゃあね。私の巴。また会話アプリで話しましょう」

巴「またね!ハルカ」

そう言うとハルカは後ろに振り向き、神社の中へと戻っていった

…しかし、巴はその後ろ姿がどうにも寂しそうな背中をしてるのを見逃すことができなかった

どこか、なにか、悲しい背中だった。楽しかったとは言ってたが、やはり別れるのは悲しいのだろうか

巴「…どうにかして、ハルカの心の隙間を埋めることができないかな…」

そう言いながら巴もそろそろ自宅へ帰ろうとして神社を後にした


ジパングの夕日

ヒダンゲとは違う夕日で、今日一日が終わろうとしてた



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