第1話

4つの国とは別の島国、ジパング

ここは他の国いわく黄金の国とも言われていた。と、言っても黄金というのは昔の話なので今はそうでもない

この国、ちゃんと春夏秋冬があり暑い寒いがはっきりした国でもある、珍しい国である

ジパングはとある国と提携してる国がある。4つの国のひとつ、シダレカだ

シダレカとジパングはどこか似たりよったりな国であり、仲良くお互いの国を褒めあってる。そんな国関係であった

この国はもう完全に都会化が進んでおり、昔ながらの街、というのが消え去りつつある

だが、それでも昔ながら。というのは神社、寺というのは残っている。だが、そのぐらいである

10年前から新しい国として改築、工事が進み、古い家屋はもうない。耐熱耐震の問題もあるからだ

様々な国には様々な種族がいるが、ここの国は人間、妖怪、鬼、そして祀られる龍人と人気者兎人が中心である

妖怪と鬼は様々な国にいるためそう珍しい種族でもないが、ジパングには龍人と兎人というここだけしかいない種族がいる

今日もその中心種族は元気にそれぞれの場所へ向かう。学校、会社、色々だ

ジパング首都トウキョー。ちょうど春で桜が舞う季節である。桜というのもこの国の一番の花。各国から観光客が来ている

桜を見に集まり、今日も夜遅くまで宴会をする会社の多いこと…ちゃんと桜に感謝して宴会をしてほしい

そんな中、朝に一人の女性が急いで自分の会社に向かおうとしてた。これは遅刻か

「はぁはぁはぁ!なんで私いっつも起きるの遅いんだろ~~!」

彼女の名前は東風平巴。種族は妖怪でまだ入社して間もない社会人だ。ちなみに一人暮らししてる

慌ててダッシュするもんだからすっかり身体は汗でにじんでいる。その会社もバス停前も無く、結局走るしかなかった

ちらっと散歩してる犬を見る。あ~癒やされる~とは思ったがパッと切り替え会社に行くことだけ集中する

朝ごはんも全然食べてない。妖怪だからと言ってさすがにお腹がすいてきた。それは今は我慢するしかない

ようやく会社に着いた。急いで自分が務める部屋まで行き、タイムカードを押す。間に合った。ほんとギリギリである

なんとか間に合ったためその場で深いため息をする。今日の気温は温かいため既に汗が出ていた

自分のデスクに座る。すると同期の子が近寄った

「また巴~。遅刻ギリギリじゃ仕事が集中できないよ!」

巴「恵里菜…私やっぱり朝早く起きるの辛いよ…」

ケタケタ笑われる。同期の子の名前は草間恵里菜。兎人で明るい雰囲気を持つ人気者だ

しかし、この2人は親友同士でありこうやって冗談言いながらも関係を保つ、決して悪気は無い

恵里菜「ま、そんなとこが巴っぽいけどね!あっはっは!」

巴「私は好きで遅刻ギリギリな行動してないの!」

そう言いながらも恵里菜は自分の机に戻ろうとしてた

恵里菜「じゃ!今日も頑張ろうね!」

巴「ええ。がんばろ」

彼女が戻る。そして今日も頑張ろうとしてた

巴「今日も一日、頑張る…よ」


昼ごはん時…同期と後輩先輩が食堂で集まっていた

ここの会社の食堂は大きく、社員全員入るんじゃないかと思うほど大きい

そんな昼ごはん時、巴と恵里菜は先輩に連れられ食堂でごはんを食べていた

巴はようやくごはんにありつける…と思いお肉料理を頼み、食べていた

先輩「ねえねえ私の彼氏さあ。今日は食事を作れとか意味わかんないこと言ってるんだよ?」

後輩「わあ、先輩ってごはん作れるんですか~!」

先輩「できないできない!つか彼氏自分で作れるくせしてそういうこと言うんだよ!むかつくわ~」

恵里菜「あはは!面白いなあ」

巴「は、はは…」

先輩「もうちょっと心配できる彼氏のほうがよかった!…ところで、巴ちゃん?」

反応が薄かった巴に先輩が言ってくる

巴「は、はい!」

急に言われたもんだから変な反応をしてしまった

先輩「なにその反応。巴ちゃんって彼氏いる?妖怪なのはわかるけど結構キレイな顔してるし男がすり寄ってくるんじゃない?」

そう言われると巴は慌てて反応する

巴「い、いえ…あまり作ろうなんて思わないです…」

そう言うと先輩はふーんという顔をする

先輩「そっか。まあ、いいか…あ、私ちょっとすぐに仕事に戻らないと!」

後輩「あ、私もだった!お二人さん、ゆっくり!」

恵里菜「はーい!また後で~!」

巴「は、はい」

うるさい先輩と後輩が去っていった。去ったのを確認すると恵里菜は巴に顔を向ける

恵里菜「…全く!恋バナ恋バナばっか!恋愛ドラマの見過ぎなんじゃないかな!いつもその話ばかりで飽きてくるよ」

巴「は、ははは…そうかもね…」

巴がそう言うと恵里菜は言う

恵里菜「ねえ、巴。貴女…ハルカさんとはどうなの?」

そう言うと巴は少し照れて言う

巴「うん。順調だよ。ハルカ、最近スマホ持ったらしくていつも会話アプリで連絡してる」

巴がそう言うとスマホを取り出し会話アプリからハルカと喋った会話をしていた

恵里菜「おー…そんな会話をしてたとは…仲良しでいいね!…でも、この関係、いつまで続けるの?」

そう言うと困った表情になる巴

巴「…それは、わからない。ハルカとの関係は秘密にしたいけど…いまは、わからない」

巴が言うと恵里菜はうーんと考え出す

恵里菜「…ま、その話は2人でよく話し合って関係を続けるといいよ。大丈夫。私は応援するからさ」

巴「ありがとう恵里菜」

巴がそう言うと会話アプリから通知が来た。きっとハルカだ。返事を返そうとする

恵里菜「そうやって途切れることなく会話したらきっとより仲良くなれるよ」

巴「うん!ハルカ、とっても可愛いんだから!」

そう言う巴はさっきとは打って変わって笑顔満開であった

昼休みを使って恋人との会話を楽しむかのように巴はスマホを使っていた


夕方…今日は特別残業も無く、社員のほどんどが帰っていた

巴も帰ろうとしてた。が、今日はハルカの元に行こうとして違う道のりに行こうとする

恵里菜「巴、ハルカさんのとこ行くの?」

そう言うと笑顔で巴は言う

巴「うん!まだハルカが祀る場所、まだ間に合うから行くよ」

恵里菜「おお~いいねえ。じゃ、私バイクだから帰るね~」

恵里菜はバイク通勤をしてた

巴「じゃあね恵里菜」

恵里菜「ばいばーい!」

恵里菜はバイクのエンジンをかけると急発進して去っていった

巴「…さあ、行かないと」

巴は会社に行くようにではなくゆっくりとハルカを待つ場所へと行く


ハルカが祀る場所はこの会社から少し遠くにあるが、バスで行ける場所なので巴はバスで移動することになる

バスで席に座り、発車すると、巴はワクワクしてくる。あんな会話アプリで会話してたハルカは本当に人が違うように面白い

巴はなんとなくバスから見える風景を見ていた。会社のある場所はどちらかと言うと都会方面だが、行く場所はちょっとした田舎だ

バスで数十分しないうちに住宅街になる。そのとおりに神社へと向かう道がある

そんなハルカだが、今は既に通知は無い。なぜなら今は祈りの時間…

そんなこんなしてるうちに神社前へとたどり着く。名前は彼岸神社。バスを降り、間違えることなく、神社では無く洞窟内へと向かう

神社のすぐ横に洞窟がある。そこにハルカはいる。会社の服装をしてるためちょっと恥ずかしい。だがそんなこと言ってられない

洞窟の通路を抜ける。洞窟を進むと空洞から明るい光があった。そこには参拝客もいた

明るい光…その洞窟の中心部に、巴の恋人がいた。ハルカであった

ハルカはあぐらをして手で拝みながら祈りを捧げていた。参拝客もその祈りを通じるようにするように拝む

巴は既に用意されてる座布団に正座で座り、拝む。別になんも祈りはないが、少しだけ「この関係が保てるように」と願う

しばらくするとそろそろ時間なのか参拝客の祈りは終わりだんだんと人数が少なくなってくる

一人、また一人と帰っていく。そして、最後の一人が帰っていった。洞窟内で残されたのは巴とハルカだった

しかし巴はまだ祈りをしていた。目をつぶり、ずっと拝んでいた。誰もいない時に少し経つと声があった

ハルカ「…お疲れ様、巴。今日も会えて嬉しいわ」

その声はハルカだった。いつの間にか祈りの間から立ち、巴の前まで来ていた。巴は嬉しそうにハルカに抱きつく

巴「…ハルカ~~!」

抱きつくと、ハルカも嬉しそうに巴の頭をなでた

龍宮寺ハルカ…龍人族でも一番歴史が長い家系であり、どの代も祀る存在である

過去にあった天魔戦争時にはこの家系が活躍した記録が残っており、その代から崇められる家系となった

そして今、約15代目龍宮寺家主はこのハルカとなっている。約なのであまりよくはわかっていない

龍人は基本、寿命が長いためエルフ、天使、悪魔と同じぐらい寿命がとにかく長い。最高年齢200歳まで行った家系もあるらしい

このハルカも数十年生きてきたが、決して美貌も変わらず美しく、威風堂々しており、そして優しい

どちらかと言うともちろんハルカが人生の先輩だが、そんなことどうだっていい話である

2人が抱きついてる。そしてハルカが言葉を言う

ハルカ「今日はずっとここで祈りを捧げてたわ。肩が凝るし、ずっとあぐらだからちょっと足が痛いのよね」

そう言うと巴はハルカの肩を優しく触った

巴「うんうん…!ハルカもお疲れ!よく頑張ったね!」

優しい笑顔で言う。そう言われるとハルカは笑顔になる

ハルカ「お疲れ様とか頑張ったねって言ってくれるの巴のみよ。恋人になってなんて嬉しいんだろう」

またそう言うと笑顔が絶えない。本当に2人は大好き同士だからこそである

巴「うんうん!ねえ、この後どうするの?」

ハルカ「私の住む場所に行きましょう。私となら頭の固い坊主どもも何も言ってこないわ」

巴「うん!行こう!」

2人はひっつきあいながら部屋へ行こうとする


神社内へと移動する。途中、僧侶から何かチラチラと見られたがあえて無視。それだけであった

ハルカの部屋とたどり着く。そこは女性らしいキレイな部屋だった。…のだが布団はそのまま片付けてなかった

巴「あれ。ハルカ布団そのままだよ?」

ハルカ「あ、しまった忘れてたわ」

慌てて片そうとは思ったが、別に恋人なら…という理由で片付けることをやめた

ハルカ「まあ、私の部屋なんて私しか見ないから全然大丈夫なんだけどね」

やはり神聖な家系なのか。この部屋を見に行く人は少ない。自分で片付けることとなっている

だがハルカはまくらを棚から用意して布団に置いた

ハルカ「ふふふ。これで一緒に寝られるわね」

巴「あ、んもう。でもハルカとならいいよ」

元々体格の大きいハルカなのか布団もでかい

ハルカ「そうだ。そろそろ食事だけど…えーと」

ハルカがそう言うと廊下を見る。既に食事が用意されていた。もちろん、2人分である

巴「ん?私が来ることを知ってたの?」

ハルカ「そうよ。今日来るってわかってたから2人分用意しろって言ってたのよ」

巴「なるほど~。じゃあ食べようか」


食事を終えた2人は布団の上でイチャイチャしていた。今日のこと、明日のこと…

巴「今日ね~昼に先輩から恋バナされて反応できなかったよ」

ハルカ「あら。そんな恋バナほっといたら?」

巴「ほっておけないよ~。毎日あの話されるとただの自慢じゃん!ってツッコミたくなるよ」

ハルカ「恋バナはほどほどにしたほうがいいと思うわね」

巴「…でも、嫌じゃなかったよ。だってハルカがいるもん。ハルカとの関係を知ってるのは私の親友だけだからさ」

ハルカ「その親友さんは理解してくれるのね?」

巴「そうだよ。だから今日も行くってこと伝えたりアプリで話してるってこと言ったよ」

ハルカ「良き理解者で私も嬉しいわ。でも今日は祈りを続けたら独り言でブツブツ言ってるじじい居て困ったわ…」

巴「あははは…!そういう参拝客絶対いるよね」

ハルカ「あんな独り言言ってたら集中力途切れるって!あーあ、少し神聖な力が無くなったわー。辛いわー」

巴「クスクス…あっちこっちで大変だね」

ハルカ「本当ね。うふふふ…」

そう言うと2人はそろそろ寝ようとする

ハルカ「そろそろ寝ましょう?」

巴「うん!ハルカとの一緒の布団…嬉しいなあ…」

電気を消し、2人は布団に潜る。巴はハルカの香りのする布団に入り幸せに感じていた

ハルカが大きいためちょっと窮屈な感じだったが、そんな問題どうでもよかった

2人は見つめ合って、言う

ハルカ「ねえ…私の巴?」

巴「何?私のハルカ?」

ハルカ「…ずっと一緒にいようね」

巴「うん…ハルカと一緒にいるよ」

再び愛を誓う2人であった


ジパングの夜

それはどことなく快適な気温に恵まれた気候だった


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