第70話
「おーおー、随分に派手にやってますなぁ」
「ぐっ……もう勘弁してくれっ、知ってることはすべてお話した!!」
高台から戦場を眺める二つの影、一人は憔悴しきった様子で膝をついてもう一人の邪悪な笑みを浮かべる男に首根っこを掴まれていた。
膝をつく男の名前はバトラ、彼がアンドロマリウスと初めて邂逅したのは豪雪地帯ブリュークにある氷洞の中だった。
目的であった千年氷の一雫をキングスバレイとかいう三下に先に奪われ、仕方なくたまたまキングスバレイのロストアイテムを手に入れたアンドロマリウスから疾風迅雷を強引に奪い取った。
そのおかげで会長にボコボコにどやされるだけで済んだ。
成果なしで帰っていたら一体どうなったことやら。
キングスバレイにはすでにお礼参りは済んでおり、ブリュークでの一件はそれで終わっている。
バトラがアンドロマリウスと二度目の邂逅を果たしたのは会長から砂金狐を助けようとするであろうアンドロマリウスを消せとの命令が降ったからだ。
アンドロマリウスはセイントベアーズと親しい仲なのは周知の事実であり、セイントベアーズから助けが求められると予想された。
実際にセイントベアーズのギルドマスターであるガルドはアンドロマリウスにコンタクトを取っていた。
邪魔者を消す仕事は今までも受けてきたし、今回もいつも通り忠実に任務をこなすだけ、バトラはアンドロマリウスの戦闘を研究して万全を尽くして任務にのぞんだ。
その結果、任務に失敗してアンドロマリウスに拘束されてしまった。
尋問というほど重くない軽い質問をいくつか投げかけられる。
これがもっと重要な情報を教えるとなれば口を噤んでいたが、正直そんなことを聞いてどうするんだという質問だったのもあってすべて答えた。
自分の死と比べれば喋ってもいい内容だと判断したからだ。
デスペナルティは決して軽いものではない。
アイテムをロストするし、経験値も減少する。
しかし、バトラにとってそれらはどうでもいい。
それよりも死ぬという事実がよろしくない。
そんなことが会長にバレでもしたらどうなることか分からない。
「でもなぁ、ここで逃がしてすぐ敵対されるくらいなら殺した方がいいかもなぁ」
「なっ!? 約束が違うっ!!」
「冗談だよ、最期の質問に答えてくれれば解放してやるよ」
「……なんだ?」
「あの鴉を引き込むことができたのか?」
「引き込めたかどうかで言えば、それは否だ。鴉は強者との戦闘を望んでいる。闘技場にも参加していない強者と戦えると誘ったんだ」
「ほう……なるほどな、もう行っていいぞ」
解放されたバトラは嘘はついていない。
しかし、鴉の求めている強者がアンドロマリウスだということは伏せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます