第64話

 ガルドとレインマンが腕を組んだだけで衝撃波が広がり、地面が陥没する。

 力比べはレインマンに分があったが、ガルドはなんとか堪えていた。


「ふぬぅぅぅぅぅぅぅ」

 歯をくいしばって気合を入れ押し返し元の状態に戻す。

 一瞬の力ならレインマンに負けていたが、体力面ではガルドが一枚上手。

 一気に潰せず徐々に押し返され始めるレインマンはこのままでは分が悪いと悟り、手を外して拳を強く握りボディブローをお見舞いする。

 負けじとガルドも拳を返した。

 組みあっての力比べから一転、激しい殴打の応酬が繰り広げられる。

 レインマンの使用しているスキルの暴虐は強化系のスキルの中でも攻撃ステータスの上昇値はかなり高い。

 ただその代わりに攻撃するたびに体力が削られていく。

 ガルドが使用しているスキルは剛力、上昇値は高くないものの、攻撃力と防御力のステータスが上昇する。


「くっ……少しはやるなぁ。だが……」

 レインマンはバックステップでガルドから距離をとる。

「今だっ、撃て!!」

 後衛組の杖が、矢がガルドに向けられ集中砲火を受けることになる。

 丸まるようにして命を繋ぎとめたがフルアーマーはボロボロに崩れ、血が滴る。

 俯いたまま動かないガルドにレインマンがゆっくりと近づく。

 それは警戒ではなく余裕。


「終わりだな」

 レインマンは拳を振り上げたところでガルドが笑みを溢したことに気づいた。

「カウンター……ショック!!」

 ガルドから放たれた衝撃波でレインマンが吹き飛び、近くにいたプレイヤーたちも同様に吹き飛ぶ。


「いやぁ、さすがはセイントベアーズ。正直、こらあかんわと匙投げてましたわ、ほんまに……」

「はぁ、はぁ、はぁ……時間がかかり申し訳ない」

「いやいや、まさか四倍もの人数差をなんとかしてくれただけで御の字や、ひとまず今日はセーフティエリアにいきましょか。今後のことも打ち合わせせんとあかんしな」


 セイントベアーズと砂金狐は100人を超える不肖な輩どもを跳ねのけたものの被害は甚大で出発時の半分ほどしか残っていなかった。

 寄せ集めにも関わらず目的は明確なことからどこかの組織が裏にいるのはわかっていたものの未だに謎であった。


 相手側の次の動きに対応するため苦肉の策として第三の町の一つ前にある小さな農村で休憩をすることにしていた。

 小さいとはいえ村であることからセーフティゾーン、つまりは非戦闘区域でありプレイヤーは攻撃スキルを使用することができず、ダメージを与えることもできない。

 エリアの中にいれば安全は保障されている。

 戦力が回復するまで待機するしかないのだが、待っている一分一秒の間にも商機を失っている。

 それに、ポーションや飲食類は時間とともに劣化をしていくのでアイテムの価値も下がる。

 もう一つ言えば、自分たちの戦力が回復する時間を置くということは相手側も同様だということ。


 村の宿屋を丸々貸切にして砂金狐とセイントベアーズの主要メンバーが集まり作戦会議を行う。


「こんな状況じゃ総力戦になる確率が高いんよなぁ。しかもこっちの方がキツいって点やけども……」

「俺たちも声をかけれる人間と交渉してみようと思う」

 キリエはとあるプロチームに交渉をすることを決めた。

 ガルドもとある人物を頭に浮かべる。

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