第63話
「お前らぁ、気を抜くなよ」
セイントベアーズ、マスターのガルドが檄を飛ばす。
アンドロマリウスを護送してからセイントベアーズの名は広がり、ひっきりなしに依頼が舞い込んでいた。
それらの中でも今回の依頼は群を抜いて金が動く依頼であった。
「さすがは名高いセイントベアーズや。これやったらなんも心配いらへんなぁ」
「キリエさん、油断は禁物、まだ何が起こるか分からないですから」
「いよっ、さすがは超鉄壁のガルドはん、名声に溺れることなく一分の油断もない!!」
「下がってください、総員警戒態勢!!」
依頼の規模、重要度からセイントベアーズはほぼギルドフルメンバーともいえる25人で五台の馬車を護衛していた。
どれも空間拡張が施されており、見た目以上に運ばれているものは多い。
ギルド金砂狐は攻略組最先端を支えるギルドだった。
そもそもルミナスオンラインのゲーム上の目的は冒険者となって未踏の地の開拓をすること。
攻略組には物資を売り、最先端の素材を売ることで莫大な利益を得ていた。
今回は最先端にある拠点の規模を小さくして第三の町をメインにしようとしていた。
失敗すれば損失は計り知れないが、すべてはギルドマスターであるキリエの商売人の勘であり、これまで外してないからこそ今の金砂狐がある。
「一体どうなってやがる!?」
ガルドが驚くのも無理はなく、今回のルートは直前まで隠していた。
それが一行の前を塞ぐのは100人を超えるプレイヤーたちだった。
明らかな待ち伏せは裏切り者を示唆している。
しかし、今は裏切り者を探している暇などなく戦闘の火ぶたが切って落とされた。
寄せ集め……
連携らしい連携は特になくただ無造作に放たれる攻撃がセイントベアーズを襲うが、そこは守りに特化したギルド、すべてを防ぎ切るも次々と敵が押し寄せてくる。
「敵は数が多いだけだ!! 一人ずつ削っていくぞっ!! エヴァン、指揮は任せた。俺はちょっとばかし殴り込んでくる」
「了解しました。では後衛をよろしくお願いします」
「任せろっ!! うぉぉぉぉぉぉ!!」
ガルドが結界から身を出して押し寄せるプレイヤーを雑兵の如く腕の一振りで蹴散らしながら進んでいくと、後衛組を守るようにガルドよりも巨体の男が道を塞いだ。
「ようやく熊が巣穴から出てきたか」
「お前たちは何者だ? 目的はなんだ? 誰に頼まれた?」
「素直に答えるとでも思ってんのなら、脳内お花畑、冬眠が長すぎてまだ寝ぼけてるのかなぁ?」
「ふぅ、押し通る!!」
「たまたま知名度が上がった程度で調子に乗りすぎだ、テメェを殺せば俺にもスカウトがくるはずだ。俺は暴虐のレインマン。ここに血の雨を降らせよう」
ガルドとレインマンががっぷり四つに組み合う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます