第61話
「コウメイ、どうなってるんだ?」
「敵対ギルドがうちの仕事を邪魔していて、そのうえメンバーが襲われアイテムも奪われてる始末です」
メルルが円卓を強く叩き、席につく数人がビクッと体を震わせた。
円卓についているのはメルルがマスターを務めるギルドの幹部五人と別ギルドの交渉役の女性が一人。
ギルド女帝の鎖はアンドロマリウスの投稿した動画の破壊女帝VS巨大ゴーレムを見てメルルのファンになったプレイヤーたちが発端となって開かれたギルドである。
本来であればメルルが注目を浴び破壊女帝と呼ばれるようになるのはもっと先のことだったのだが、この動画の影響で破壊女帝と言う二つ名が広く浸透、さらにメルル自身もこれを機にと素をさらけ出して破壊女帝としてプレイ動画の投稿や活動を始めることにしたのだ。
童顔なのにキツい口調がいい味を出したのとプレイ自体のレベル、実際の容姿も相まってファンが急激に拡大、女帝の鎖は勢力を一気に広げていくこととなった。
当然のようにそんなギルドのマスターとして君臨するメルルは大量の貢ぎ物を受け取る代わりにギルドの問題事の解決を主な仕事としている。
今回起きた問題もメルルにエスカレーションされ、対策会議を行っているところだった。
「今回の件では私どももかなりの被害を受けていまして、つきましては一丸となって解決に向けて力を合わせればと思っております」
「ほぅ、うちが戦闘でそっちはバックアップをしてくれると言うわけか」
「姉さん、これが本当なら悪い話じゃないですよ。女帝の鎖は急激に人を増やしたのはいいが、実力が伴ってない奴が多い。アイテムで底上げできれば全力大幅アップは間違いない」
「さすがは女帝の鎖の頭脳、その通りでございます。それとこの件が解決した暁にはかのアンドロマリウス討伐にも助力することを約束します」
女性が言葉を発した瞬間にメルルが爪先を机に当てて一度だけ優しく音を出す。
コツンという音の後にしばしの静寂、いつもの怒気を放つ怒りではなく、静かに内側で燃える怒りにコウメイの頬を汗が伝う。
女性も異様な空気を察して固唾を飲んだ。
「ふぅ、ちっ、ちっ、ちっ、ムカつく野郎だぜ。あいつも、あんたらもな。まぁいい、アンドロマリウスのことはこっちでかたをつける。あんたらは今回の件にだけ集中しな。コウメイ、あとの擦り合わせは任せた」
「分かりました。諸々の調整はしておきます」
メルルが席を立ち部屋を出るのを確認して、コウメイは大きく息をついて腰の位置を浅くした。
「恐ろしい姉ですね」
「まだマシな方ですよ」
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