第41話
整備された街道を進んでいけば徐々に道が荒れ始めてくる。
いまだに馬車を使えているのはこの馬車のポテンシャルによるものだろう。
それでもお尻へのダメージは着実に積み重なってきている。
かといって外を歩く気にもなれない。
窓から外をのぞけばセイントベアーズの面々が汗をたらしながら護衛をしている。
襲い来る猛獣の相手をしているというのもあるが、それ以上にこの暑さが厄介なのだ。
酒宴火山へ近寄れば近寄るほどに火山からのおろし風が熱を運んでくる。
セイントベアーズは定期的に体を冷やすポーションを飲んでいるがそれでも堪えるだろう。
根性でどうにかなる問題ではなく、アイスポーションがなければ暑さでダメージを受けるくらいの熱波が吹き荒れている。
「ここからはフローズンポーションに切り替えるぞ。数はあるから余裕をもって飲むようにしろ」
ガルクが檄を飛ばす。
まだまだ道半ばでこれからさらに襲ってくるモンスターは強力になり、温度も上がる。
「全員構えろっ!!」
今いるメンバーで唯一の索敵係の男が声を張ると、横から巨大な蛇が高速で地面を這って近づいてきていた。
大きな顎を開き馬車に噛み付かんと飛びかかってくるが、空中で動きが止まる。
セイントベアーズの戦術は一つ、後の先。
相手の攻撃を受けて隙を晒したところを攻撃役が問答無用に叩き込む。
その役を担っているのが漆黒の全身鎧、兜には巨大な二本の角を携えたデュランだ。
十二星座をモチーフにしたブラックタウロスのフルアーマーは防御力を攻撃力に変換するスキルを持っている。
スキル発動で戦斧を振り下ろすと蛇の首が一刀両断される。
しかし、この程度でやれるほどここいらのモンスターは甘くはない。
身体側の切断面から新たに頭が生えて結界に牙を立てる。
牙が刺さりヒビが入る。
最初の一撃はスピードも出ていてかなりの威力があった。
そこに無慈悲な二撃目がくれば結界も壊れるというもの。
結界が音を立てて割れ魔力となって空中に霧散する。
なかなか幻想的な光景に見える。
俺もセイントベアーズにも焦りなど微塵もない。
再び蛇が空中で止まる。
結界が一枚しかないわけがない。
幾重にも張り巡らされたそれの表面の一枚が割れただけだ。
しかも、結界担当がすぐに張り直すのだから攻めるには面倒だ。
「どおりゃぁぁぁぁぁぁぁ」
ガルクが雄叫びを上げながら蛇の尻尾を掴み引きずる。
とんでもない怪力だ。
青色のフルアーマーには種類までは分からないが強化系のスキルがつけられているはず。
そうでなければおかしい。
蛇がガルクに巻きついて噛みつくが、さすがは守りが売りのギルドのマスター、逆に蛇の牙が砕ける。
ガルクは蛇の両顎を持って引き裂いた。
はぁ、とんでもないスプラッタ動画だ。
こんなの流せないじゃん。
一応、道中は動画撮影して投稿する許可をもらっている。
ガルクもセイントベアーズの宣伝ができるのならぜひしてくれと乗り気だった。
気合い入れすぎ。
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