第40話
「ふぅ……酒宴火山はAランク以上のモンスターが当たり前のようにそこらをうろつき、頂上にいるドラゴンはSランク以上とも言われている。トップランカーで固めたフルパーティでも山の半ばで全滅する。麓までだ、その地点までお前を連れて行ってそこで契約完了とする」
「それでいい。ついた瞬間に俺をそこに置いてすぐに帰ってもらって構わない」
「契約成立だ」
絶対ナル契約書に互いの名前を書き込む。
プレイヤー間で交わすことのできる絶体遵守の契約。
契約者同士が手をかざせば、ただただ契約の詳細が書き写されていく。
そこに駆け引きなど一切なく、わずかでも騙そうとする意志や不本意な契約を結ぼうとすればたちまち感知され契約書が燃えて、契約が結ばれることはない。
普通は成功報酬だけでなく失敗した場合の契約も記される。
故に互いが納得のいく契約を結ぶには信頼関係が必要になる。
少しでも大丈夫かなどと不信感をみせても契約が結ばれない。
故に絶対契約はよっぽどでもなければ成立しない。
「マジかよ……いいのか?」
「おい、余計なことを考えるから無駄になったじゃねぇか」
「すっ、すまん……その契約書はウチで賠償させてもらう」
ガルクがうろたえるのも無理はなかった。
絶対契約なんて初めてだったうえにアンドロマリウスが契約書に記した失敗した場合のセイントベアーズのペナルティはなしだったのだから。
「ふんっ、気にするな。それよりも心配するってことは今をときめくセイントベアーズが、俺を麓まですらも連れていけないと思ってんのか?」
「バッ、バカなっ、そんなわけがないだろ」
「だったら、契約書が燃えるわけがねぇだろうが」
ガルクはハッパをかけられる形で二度目にしてソロのアンドロマリウスとセイントベアーズギルドマスターのガルクの契約は成立した。
ガルクはギルドマスターとして依頼遂行のためにセイントベアーズからメンバーを選出する。
「随分と豪勢なメンバーじゃないか。一晩経ってビビったか」
「剛毅なお前にこちらも誠意を見せようかと思っただけだ。道すがら一切の脅威もお前に触れることはない」
フルパーティが二パーティ、つまり十人ものメンバーが俺を守ってくれる。
俺は優雅に馬車の中で昼寝でもしていれば目的地にたどり着くことができる。
馬車自体が強力なAランク級のアイテムで衝撃吸収の結界や自己修復のスキルがついている。
馬車を引く二頭の馬も三メートルを越す巨体のギガホースだ。
こちらもAランク級のモンスターとなっている。
体制としては万全。
「それじゃあ、しゅっぱつだ〜」
「なんでお前がかけ声を……まぁ、いい。ではエヴァンよろしく頼んだぞ」
ガルクは副ギルドマスターの眼鏡のクール美人エヴァンにギルドを任せて勝手に出発したアンドロマリウスとギルドメンバーたちを追いかける。
フルアーマーに身を包んだガルクは一回り大きくなり、遠くから見ればのそのそと動く様は巨大な熊に見える。
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