第39話
「はぁ!? ふざけてんのかっ!! 冷やかしなら帰ってくれ」
「いーや、いたってまじめだね」
アンドロマリウスは絶賛、名を売り出している新興ギルドのマスターと交渉をしていた。
セイントベアーズ、ギルド所属のほとんどが回復や守りを得意とするサポート専門のメンバーで固められ、互いにアイテムやスキルの組み合わせ、立ち回りを共有するとともに切磋琢磨し、その道のエキスパートといえる存在が何人も誕生していた。
ギルドマスターのガルクは熊とタメを張る偉丈夫の男で褐色の肌にスキンヘッドが眩しく光っている。
その横で眼鏡をかけたクール美人がお茶のおかわりを出してくれる。
ギルドはパーティよりも規模が大きく、ギルドハウスを使用することが可能になる。
維持費はかかるもののメンバーで割れば大した額ではない。
それだけで様々な恩恵を受けることができるのだから、入って損はない。
もちろんホワイトなギルドならと注釈が必要ではあるが。
ギルドごとにルールが設けられていて、ひどいところだと上位の人間だけが恩恵を独占して新規メンバーは搾取されるだけなんてこともある。
「俺もお前の動画は何度も見たさ。どうしてルーキーなのかは知らんが、その実力はトップランカーにも匹敵するだろうさ。だがそれでもこの依頼は冷やかしにしか思えない」
知名度が上がったおかげで襲ってくるバカは限りなく少なくなった。
最近の人気動画はメルルVS巨大ゴーレムだ。
ちゃっかりと隠し撮りしていてよかった。
本来、撮影用のアイテムは自分の近くにしか動かせないんだが、パーティを組んでいた場合はパーティメンバーの戦闘なんかを撮影したりもできる。
距離の有効範囲はあるが、今回は同じダンジョン内だったし、パーティを抜けても数時間程度なら撮影を続行できる。
もちろん、編集は完璧でギミックに関しては隠し、メルルとコウメイにも申し訳程度のボカシは入れたが、分かるやつにはすぐわかるだろう。
大体がゴスロリに大槌なんて目立ちすぎだし。
ただ、あの動画でメルルの株が上がった理由が分からん。
コメントの大槌で叩いて欲しいなんて、自殺志願者かなにかかよ。
「成功報酬として100万、絶対契約も使ってやる。俺を酒宴火山の麓まで連れていけ」
「100万、それに絶対契約だと……」
俺がセイントベアーズに依頼をしに来たのは守り特化で護送に優れているからというのもあるが、新興ギルドというところも重要な点だ。
ギルド設立時は何かと金がかかる。
ギルドハウスの維持費だけでなくメンバー募集もしなければいけないし、依頼だって集めてこないといけない。
セイントベアーズの今のメンバーを考えれば100万なんて大した額ではないが少なくもない。
むしろ絶妙な金額ラインだろう。
俺がかき集めたアイテム類を売って作ったほぼ全財産。
この金額ではトップランカーが在籍するギルドには依頼ができない。
逆に安くてもそこらの二流、三流ギルドには荷が重い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます