第33話
「考えてることは同じようだな」
「……そうみたいですね」
互いにどう出し抜くか隙を伺っている状態で空気が張り詰める。
互いに入り口から入って直線上にある倉庫を肩を並べて見ている。
「早い者勝ちということでいいですよね」
先に動いたのはメルルだった。
回れ左して走っていく。
予想外の行動にその場で立ち止まってしまって動向を見守っているとメルルが壁にズラッと並べて飾られていた騎士の彫刻の一体を砕いて、その下の台座を全力で叩いた。
その瞬間に床が大きく揺れて、部屋に入って左側の壁全体が崩れる。
「……!? こんなギミック知らないぞ……」
誰にも聞こえない声量で本音が漏れる。
俺の知っているギミックとは全く違う。
この倉庫前の大広間の部屋に入って右側の壁にも騎士の彫刻が並べられている。
そのうちの一体のポーズを変えることで台座がスライドして奥に続く道が現れるのだ。
もしも別の騎士のポーズを変えてしまうと、騎士の彫刻が動き出して襲ってくる罠が仕掛けられている。
左側の壁が崩れて現れたのは全体的に丸々としている一般的な土のゴーレム。
しかし、サイズが全然違っていて10メートルはありそうな巨大なゴーレム。
二つの丸い瞳と額にある丸い瞳が赤く光って動きだす。
ターゲットは最も近くにいたメルルだった。
巨大ゴーレムは拳を大きく振り上げて、振り下ろそうとするがメルルはその場から動こうとしない。
「姉さんっ!! 聖女の盾!!」
ガーゴイルの猛攻を受けてもかなりの時間耐えていた盾が一撃で粉々に叩き割られる。
しかし、一瞬の時を稼いだおかげでメルルはその場から移動をすることができた。
「やってくれるじゃねぇか!!」
瞳孔が開き口を吊り上げて笑みを浮かべるメルルは後方に逃げるのではなく、ゴーレムの足元へと潜り込んで脛を大槌で叩く。
「姉さん、口調はいいのか?」
「あぁ、もういい、そんなルーキーの振りした性悪男にかまってられるかっ!! あんたも守りはもういいからガンガン攻撃しな」
「はぁ、攻撃つってもなぁ」
本来は後衛で攻撃に一切参加しなくてもおかしくない神官に攻撃を促すのは貢献度で負けたくないからだろう。
パーティを解散した今、俺が二人よりも高い貢献度を叩き出せば巨大ゴーレムのアイテムは俺の独り占めとなる。
まぁ、パーティに入っていてもボス初討伐の報酬はパーティ内で最も貢献度の高いプレイヤーのみなのだから、大して今と変わっていないはず。
メルルは俺も巨大ゴーレムの初討伐を狙っていると警戒しているようだが、巨大ゴーレムの出現なんて想定外でしかない。
たしかに隠しボスのドロップアイテムともなれば、かなりの価値があるんだろうが、パーティを組んでいての個人戦ならまだしも二人の合計貢献度を一人で上回るなんて不可能に近い。
俺としては山東に巻き込まれないようにその場を後にして右側の壁のギミックを解きたい。
しかし、その行動が仇となってしまった。
ゆっくりと移動していたのがメルルには怪しく映ったんだろう。
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