第22話
-クエスト-
イタズラ精霊を退治せよ。
「うぅん……思ったよりも数が少ないな」
妖精の隠れ里でクエストを受けることで行けるようになる特殊フィールドには暴れ回る精霊がたくさんいる、はずなんだが、その数が思っていたよりも少なかった。
クエスト自体はとっくにクリアした。
何度も受けられるクエストではあるものの隠れ里とを行き来するのは時間の無駄だし、報酬も美味しくないので精霊狩りをしている。
下位精霊から中位精霊がわんさかと出るはずなんだが……
「やっぱ先客がいたか」
フィールドにモンスターが少ない理由なんて他のプレイヤーが狩っているしかない。
しかも5人のフルパーティのようだ。
妖精を使役するのは結構難易度が高い、しかし、パーティ内に1人でも妖精を連れているプレイヤーがいれば条件達成となる。
「……なぜあの男がここに」
「どうしたの? 大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ、だがいつでも戦闘に入れるように準備しておいてくれ」
いつものふざけた態度とは違う俺の雰囲気でターニャは何かを察知して固唾を飲んで押し黙る。
思い出すのは前世の記憶。
弱肉強食、力のなかった俺は搾取される側の人間だった。
狙いやすかったのだろう、何度も何度もPKの餌食になったのだが、そんなPKの中で最も鮮烈な記憶を植え付けてくれたソイツは殺されるその瞬間ですら美しいと思ってしまうほどの技を見せてくれた。
10回以上殺されたが、何度見ても美しかった。
悪鬼渦巻くPKの中で最も知名度が高く、PK数もズバ抜けた数を誇っていた。
本来は一人につき一体しか使役できないパートナーである妖精を何体も自由自在に操ることからついた異名が妖精王。
PKをするとき以外はほとんど表に出てこなかったためその秘密はヴェールに包まれている。
「んっ、なんだ? 他にもここに来れたやつがいたのかよ」
「へぇ、ルーキーじゃん。運がいいんだねぇ」
妖精王のパーティメンバーがこちらに気づいて近づいてくる。
「ソロで来れるなんてすごいな。でもここから先はソロじゃきついと思うぜ。なんならパーティに入れてやってもいいけどどうする?」
「えっ、それはありがたいご提案なんですけど、そちらはフルパーティじゃないですか」
「気にすんなって、3人ずつに別れればいいんだよ」
「騙そうとしたりしてないですよね?」
「な~に言っちゃってんの、そんなわけないっしょ」
「そうですよね」
男2人が俺とパーティを組むために妖精王のパーティを抜けて手を差し伸べてきた。
「じゃっ、申請すっからよろしく」
人を見下した不快な目つき。
そうでなくても妖精王とつるんでいる時点で信用なんてするわけがない。
ただ気になるのは肝心の妖精王は俯いたまま俺やパーティメンバーの様子を窺っている。
まるで、いじめられてるようなおかしな状態に見える。
どちらにしてもパーティになるつもりなど毛頭もない。
パーティを組むメリットは経験値が分配されることと、パーティ単位で効果のあるアイテムやスキルの恩恵を最大限活かせる。
そして、個人個人のアイテムボックスに加え、パーティ専用アイテムボックスが使用できるようになる。
デメリットはドロップアイテムの確率が変動し、レアアイテムがドロップしづらくなるくらいだろうか。
基本的にパーティ推奨なのである。
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