第16話

「おいおい、ルーキーがこんなとこまで駆け足できちゃあ危ないぜ。しょうがないからお兄さんたちが色々教えてやるよ」

「そうそう、俺らはPKじゃないから勘違いしないでね、俺らが教えてあげる代わりにアイテムいくつかくれるだけでいいんだよね」

 見るからに粗暴の悪そうな2人組がアンドロマリウスに絡む。

 ここは第二の街クロウリング、そこそこプレイが上手ければルーキーでも来ることが可能な街ではあるが、大抵がたまたま運良くいいアイテムを獲得してその恩恵で来ることが多いので初心者狩りが多い、治安の悪い街でもある。


「またか……相変わらずここは治安が悪いな」

「何でアンドロマリウスばっか狙われるんだろう?」

「お前のせいだ、お前のせい」

「てへっ」

 剣を突きつけられ平然と頭の上にいるターニャと会話をする。

 この街に入ってすでに4回目ともなると相手の扱いも雑になるというもの。

 なぜこんなにも狙われるのか、それはネームの横にある初心者マークが未だに外れていないからである。


 およそ一週間かけて霊廟を攻略したのだが、一週間経っても初心者マークが消えることはなかった。

 というよりも消さないことを選択した。


-インフォメーション-

一週間が経過しました。

初心者マークを削除することができます。

削除しますか?


 普通は自動で消えるもので選択制ではなかったはずが、わざわざメッセージが出たのだ。

 初心者マークをつけておくメリットはアイテムをロストする際の救済があること。

 しかし、それは後半になればいくらでも対処できる。

 デメリットは周りから一目で初心者とバレるので舐められること。

 そして称号がルーキーしか選択できないことだ。

 称号とは様々な偉業を達成することで獲得可能で自由に一つ選択することができる。

 称号ごとに恩恵があるのだが、ルーキーの恩恵こそがロストアイテムの救済措置なのだ。

 つまりは初心者マークは残しておくメリットがない。

 メッセージに続きさえなければ。


-インフォメーション-

一週間が経過しました。

初心者マークを削除することができます。

削除しますか?

削除した場合、妖精ターニャとの契約が打ち切られ二度と契約することができなくなります。


 あくまでもターニャはルーキーを救済する妖精なのでこんなことになったんだろうと推測ができる。

 俺はこのことをターニャに話した。

「そうなんだ。まっ、アンドロマリウスはルーキーじゃないし……仕方ないよね。契約が切れても応援はしといてあげるわ」

 ターニャ悲しそうな顔をしてそんなことを言っていた。


「バーカ、面白そうじゃん。冗談ではなく本当に最強のルーキーになるってのも。所詮称号の恩恵なんて微々たるものなんだよ」

「えっ、いいの?」

「あぁ」

「ほんとのほんとのほんとに?」

「ふっ、てかっ、もうキャンセルしたっての」

「ありがとう、アンドロマリウス。私頑張るね」

「多少は期待しとくよ」


 そんなことを思い起こしながら初心者狩りをボコボコにして逆にアイテムをいただく。

 今日はログアウトして動画の反響の確認でもしておくか。

 プロゲーマーになるには実力はもちろん、影響力も必要になる。

 実力のアピールと知名度集め、そのための動画投稿だ。

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