第15話

「ズーズーさんはバフをお願いします。ニャル子さんと麒麟さんは攻撃して奴の気を逸らしてください。キングは待機を」

「りょーかい、いい子にしてりゃあいいんだろ」

「天使の祝福あれ」

「フレイムランス」

「重力操作」

 アストリアは16歳から20歳で構成された若手チーム、リーダーのキョーヤを中心に双剣使いキング、火の魔法使いニャル子、光の魔法使いズーズー、大剣使い麒麟の五人でパーティを組んでいる。


 相対するは2メートルを超える猿型のモンスター、火々狒々ひひひひだ。

 特徴は首元、足首、手首、尻尾の先から炎を噴出していること。

 各所から噴出する炎を自在に操って高速立体移動してヒットアンドアウェイをする非常に厄介なボスモンスター。


「くっ、早すぎて捉えられないわ」

「ふぅん!!」

 ニャル子のフレイムランスを空中で躱しながら近づいて攻撃したのを麒麟が大剣で防ぐ。

 しかし、飛び蹴りを防いでも尻尾での攻撃を見逃していて麒麟の横腹を捉えていた。


「グフっ……」

「ヒール」

 ズーズーがすぐさま回復魔法をかける。


「キョーヤ、流石にそろそろ崩れるぜ」

「大丈夫、準備できた。皆さん引いてください。フリーズエクスペンション」

 次の瞬間、辺り一帯が凍りつき氷の山ができる。

 空にいた狒々は片足が氷に捉えられて炎を出して溶かそうとしたところだった。


「そうは問屋が卸さないってね、烈風双斬」

 双剣による二連撃が見事に決まって狒々の首を落とした。


「さっすがの切れ味だぜ烈風双剣『鎌切』、本当に俺が貰ってもいいのかよ」

 怒れるウィンドマンティス討伐報酬で獲得した双剣、スキルに烈風双斬と切れ味増加を持つ優秀なアイテムだ。

「あぁ、このパーティならダメージディーラーのキングが持ってるのが最適だろう」

「うむ、文句なし」

「俺もキングが持ってるのがいいと思う」

「私は今回の火々狒々のアイテム貰っちゃったし」

「サンキュー、にしてもこれはどうなってんだ?」

 キングは凍りついた空間を見てため息をつく。


「すまない、加減はどうも苦手なんだ」

「キョーヤ君は器用そうに見えて意外と脳筋だもんね。でもリーダーとしての指示は的確だからよく分かんないプレイスタイル」

「結果がでるなら何でもいい。俺たちプロに求められてるのは結果のみ」

「プロリーグの準備も進んでいると噂されている。それに応じて続々とプロチームが参戦してきている。ウチでもストリーマーチームが参入するらしいし、遅れるわけにはいかない」

「先輩方もこっちに移ってくるんですね。楽しみだなぁ」

「まっ、やっとこさ初心者マークも外れたことだし燃えてきたぜ。それに動画ももうアップされんだろ。俺らの名前が轟くぜ」

「今、動画班が編集してくれてるらしく、もうすぐ動画がアップされる。そうすればスポンサーももう少し出資してくれて装備を整えれるはずさ」

 アストリアは異例の速度で攻略を進めていた。

 後日、ウィンドマンティスの出現情報、怒りモードの初討伐、今回の火々狒々などの戦闘を編集して何本かに分けてアップする予定だったのだが、これらはすべてとある人間の動画によって陰に埋もれることになる。

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