第17話

「はーい、こんにちはこんばんは、最強ルーキー、アンドロマリウスで〜す。今日はクコの森に隠されたダンジョン、クルシファの霊廟を攻略していきたいと思いま〜す」

 何の因果かこのときのアンドロマリウスは初心者マークが消えなくなることなんて知らずに冗談で最強ルーキーだと名乗っていた。


「ここは霊廟というだけあってアンデット系のモンスターが出ます。基本的に脆いのでガンガン進んで

いきましょう!!」

 地面からゆく手を阻むようにスケルトンが這い出る。

 アンドロマリウスの装備は魔法使いのそれでモンスターの大群をどう突破するのか。

『初攻略!! クコの森の隠しダンジョン』というタイトルの動画につられた視聴者はそこに注目していた。

 動画が上がっているということは生き延びたということ。

 ルミナスオンラインには録画機能が備わっている。

 むしろそれ以外の方法での録画は不可能なので、動画投稿などするにはこの機能を使わなければならない。

 しかし、この録画機能で撮った映像は街などのセーフティゾーンでしか取り出すことができず死亡した場合、映像は破棄される。


 隠しダンジョンの情報もそうだが、そこを見つけて攻略したプレイヤーがどのようなプレイをするのかに注目するのは至極当然であった。

 アンドロマリウスが取った戦術はゴリ押し。


「マジックバレット、マジックバレット…………ファイヤボール、ウィンドカッター…………マジックバレット、マジックバレット…………アイシクルピラー、ライトニングボルト…………」

 次々と押し寄せてくるスケルトンの頭に魔法が炸裂していく。

 マジックバレットを連射した後のクールタイムを他の魔法で補い、再びマジックバレットを連射していく。


 そのプレイスタイルはあまりにもこれまでの魔法使いのあり方とは異質すぎて視聴者の全員が驚きを口にしていた。

「あんな数の魔法の発動が可能なのか? 多すぎるだろ」

「まるで弾幕じゃないか、チートだチート」

「どのアイテムでこんなことが可能に? 広範囲魔法は使えるのか?」

 魔法使いの役割は一撃必殺。

 広範囲高威力の魔法を求められて、他の魔法はあくまでもおまけ程度の扱いだった。

 その常識が覆る瞬間だった。


「弾幕を張れるのは分かるわ。でも普通はもっと威力が低くなるはず。ましてや彼はルーキーなのよ。モンスターを一撃で倒せる威力は高すぎる気がするのだけど」

「彼が言ってたようにアンデットは耐久力が低い。だから一撃なんじゃないか」

 攻略を進めているプレイヤーたちはアイテムやスキルなどの効果もある程度抑えている。

 連射できる原理はわかっているし、やろうと思えばできなくはない。

 ただし、それには莫大な費用がかかる上に威力が低すぎて使い物にならない可能性すらあった。


「クコの森は所詮、初心者向けだ。上に行けば通用しなくなるだろ」

「たまたまいいアイテムが揃って目立ってるだけだな」

 結局、上位勢はどうせ上では通用しないと動画を途中で見るのをやめる人が大半だった。

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