第12話
PKには前世でもそれはそれはお世話になったことがある。
せっかく頑張って手に入れたアイテムが奪われる悔しさ、悲しさ、怒り。
ルミナスオンラインのデスペナルティはアイテムボックス内にあるアイテムの平均ランクが半分を下回るようにロストする。
ロストしたアイテムはその場にドロップして所有者なしの状態となり誰でも拾えるようになる。
これを俗にロストアイテムなどというのだが、仲間がいれば回収してもらえる。
しかし、それ以外のプレイヤーがいれば奪われる。
対処方法は複数あって被害を抑えることは可能ではあるものの、残念ながら初心者には難しい話である。
その代わり、初心者は平均ランクの半分ではなく三分の一を下回るようにロストする。
別プレイヤーが近くのフィールドでたまたま死亡してロストアイテムを拾った場合、それをどうするかは拾ったプレイヤーの良心に委ねられる。
そもそも、拾ったことがバレない可能性も高いわけだし。
ただし、意図的にプレイヤーをキルしてロストアイテムを奪うのは害悪プレイも甚だしいゴミ屑野郎ということだ。
逆に殺してロストアイテムを奪っても問題にはならない。
俺は恨みを晴らすように三人に対して頭を深く下げた。
「はっ、んだよ情けねぇな」
「あんだけ舐めた口聞いといて命乞いかよ」
「ぷしゅ!?」
愉快な断末魔を聞いて頭を上げると三人のうち一人の首が切断され、血しぶきを上げていた。
「なんで、このタイミングで!?」
「ちっ、構えろ」
「じゃぁ、お先です」
二人がここのボス、ウィンドマンティスと相対している間に俺は戦線を離脱して走る。
「アンドロマリウス、ラッキーだったね」
「ラッキーじゃないんだな、これが」
ウィンドマンティスの出現条件はあの湧水近くにプレイヤーが四人以上いて、合計で頭を二回下げたら現れる。
その際のマンティスのターゲットは最も頭が高い位置にある人間になる。
必然的に俺が襲われる可能性はなかったし、立ち位置的にターゲットにされづらい場所を確保していた。
「本当にこっちの方向でいいの?」
「問題ない」
「でもすごい勢いで追いかけてきてるよ。街の方に逃げたほうがよかったんじゃないの。助けてくれる人がいたかもしれないし」
「始まりの街にウィンドマンティスを倒せる奴なんてほぼいない。それにモンスターを引き連れて人の多い方へ逃げるのは害悪プレイだ」
「でも、このままじゃアンドロマリウスがバラバラにされて食べられちゃうよ」
「俺に作戦があるから大丈夫だって、くぅぅぅ」
遠くから飛んできた風の刃が木々を薙ぎ倒して俺の胴体にヒットした。
木々が間に入ったことで威力が抑えられたのと、ドラゴンスケイル装備でなければ走れなくなっていたところだ。
俺とマンティスの差は徐々に縮まっていき、ほぼ追い付かれたのと同時に目的地に辿り着いた。
目の前にはウィンドマンティスの倍以上もある巨大蜘蛛が渓谷に張り巡らされた巣からこちらを見下ろしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます