第11話

 俺の胴体に噛み付いたジャイアンアントの牙が砕ける。

 このエリアの推奨レベルは3~5、俺は倍以上のレベル10だ。

 それに装備している防具も中盤でも通用する格違いの防具を一式身につけている。

 

-ドラゴンスケイルジャケット-

ドラゴンの鱗で作られたジャケット。

物理攻撃、魔法攻撃、両方の耐性を持つ。


-ドラゴンスケイルズボン-

ドラゴンの鱗で作られたズボン。

物理攻撃、魔法攻撃、両方の耐性を持つ。


-ドラゴンスケイルグローヴ-

ドラゴンの鱗で作られたグローブ。

物理攻撃、魔法攻撃、両方の耐性を持つ。


-ドラゴンスケイルブーツ-

ドラゴンの鱗で作られたブーツ。

物理攻撃、魔法攻撃、両方の耐性を持つ。


 マジックバレットのクールタイムの短さはスキルの中でも一二を争う。

 たったの3秒待てばスキルが再発動可能となり、六発撃てるようになる。

 ジャイアンアントの攻撃はどう頑張ってもこちらにダメージを与えることはできず、むしろダメージを受けている始末。

 群がっていたアリたちはそれを理解したようで半数ほど数を減らして逃げていった。


「うーん、もう少しゆっくり進んだほうがいいか」

 俺は辺りを見回して状況を確認してペースを落とすことに決めた。


 ゆっくりと確実に襲ってくるムカデや蛾のモンスターたちを狩りながら森の奥へと進んでいくと緑はより深くなり、不気味に木の葉を揺らす生ぬるい風が駆け抜ける。

 この辺りから推奨レベルが6~8へと上がる。

 まぁ、多少レベルが上がった程度では特に問題にならない。


「たしかこの辺りだったはず……っと、あったあった」

 木々の一切が刈り取られた開けた空間、中央には湧水が流れ出ていた。

 癒しの湧水と呼ばれ、飲むと体力と魔力を回復してくれる。

 持って帰ることはできず、手で掬って口に運ぶか、直接口をつけないと効果が発揮されない。


「うん、美味い!!」

 味も抜群なのである。


「え~、私も飲みたい飲みたい」

「だーめ、大人しくそこで休んでな」

「一人だけずるいよぉ」

 何もしていないターニャが駄々をコネ始めた。

 この後に予定がなければ好きにさせてもいいんだが、来客の予定があるため妖精の止まり木から出てこないよう促す。


「さてと、いつまでこそこそしてるつもりだ?」

 街を出てからずっと三人組が俺を尾行してきていた。

「なんだよ、気づいてたのか」

「だから、とっとと殺ろうっていったじゃん。こんな森の奥深くまで来なくてよかったし、しかも回復されてるし」

「ちっ、まさか、湧水のこと知ってるとは思わねぇだろ」

「いや、動画で出回ってるっていっただろうが」

「それよりもあの鎌野郎が来る前に早いとこ終わらせようぜ」

 三人組の男がこちらを物色するように睨みつけてくる。


「鎌野郎?」

「ふんっ、あいつのことは知らねぇようだな、ここのボスモンスターでいつ急に現れるか分からず、気づいたときには首を落とされてるってバケモンだよ」

「ふぅん、ようはビビってるってことだな。お前ら見るからに大したことなさそうだし」

「あぁ!? こっちはレベル10オーバーが三人、いつまでその舐めた口が聞けるかな」

「初心者狩りのゴミ屑なら良心も傷まないってもんだ」

 こいつらは俺のプレイヤーネームの横にある初心者マークを見て、かつレアなアイテムを持っているのを確認してターゲットにしたんだろう。

 初心者マークはチュートリアルの塔を出てから一週間経過しないと消えない。

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