第10話

 始まりの街で全ての準備を整えた俺は緑の生い茂る森の中に足を運んでいた。

「まずはレベリングがてら色々と試していこうと思う」

「サポートはこのターニャちゃんにまっかせなさい!!」

「来たぞ」

「ひぇぇぇぇ、やっぱ中で応援することにするわ、頑張ってね、バイバーイ」

 そう言い残してターニャは妖精の止まり木に消えていった。


「妖精が森に住む虫が苦手なんてそんなことあるのか?」

 妖精といえば森のイメージが強いが、ターニャは塔の中にずっといたことを考えると虫が苦手ということもありえるか。

 ターニャの力の確認もしたかったんだが、またの機会になりそうだな。

 それに少し先に行けば虫の出てこないエリアもある。

 人よりも大きな無数のアリ型モンスターたちが蠢めきながらこちらの様子を伺っている。


「さぁ、いくぞ虫ども。マジックバレット」

 チュートリアルの塔で貰った魔本のスキルを発動させると半透明の弾丸が放たれて、人並みサイズのジャイアンアントの頭を吹き飛ばした。


 無謀、広範囲に渡る攻撃魔法のスキルがあるならまだしも序盤ではそんな魔法、珍しいし俺も持っていない。

 そんな状態でソロでモンスターの群れに挑むなんて自殺志願も甚だしい。

 もちろん俺はそんなつもりは毛頭もないが、スキルにはクールタイムというものがあり、剣なんかであればスキルがなくても普通に攻撃できるのに対して魔法使いの武器は通常攻撃には向いていない。

 とくに魔本に関しては皆無だ。


「マジックバレット、マジックバレット、マジックバレット……」

 追加で五発の弾丸が飛んで敵を屠る。

 ここでマジックバレットのクールタイムに入り、しばらくこのスキルが使えなくなってしまう。

 これでもこの魔本は当たりの部類なのだ。

 というのもこの魔本、マジックバレットのスキルの他にもう一つ、弾倉式詠唱キャストリロード(バレット)なるスキルが備わっている。

 こちらは常時発動のパッシブスキルで同スキルスロットのバレットスキルの発動が本来は一発放てばクールタイムが必要なところを六発まで放てるようになるという優れもの。

 チュートリアルの塔でアサシンナイフのドロップガチャをしてるときにたまたまドロップしてくれた。


 とはいっても減らせたのは六体だけでまだまだ群がってくる。

 クールタイムの隙を縫って一体のジャイアンアントがその鋭い牙を俺の胴体に突き刺してカキィィィィィンという甲高い音が森に鳴り響いた。

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