第9話
「主人よ、合成を頼みたい」
「はいよ、いらっしゃい、合成元となるアイテムと素材を見せてもらえればスキルと値段を教えてやるよ」
始まりの街で合成屋を使用するのは何も知らないルーキーだけだと言われている。
合成をすれば武器が一段階以上も強くなるのだが、最初の頃は合成するよりもより強力な武器を作った方が効率がいいからだ。
そのため序盤の合成は素材と金の無駄だと敬遠されている。
しかし、それは何も知らない一般ピーポーに限った話。
「ねぇねぇ、合成ってスキルスロットが空のアイテムが必要なんだよ」
「そうだぜ、そこの妖精の言う通り、ただのアイテムじゃあダメだぜ。よく勘違いされるがスキルスロットが空のアイテムとスキルスロットなしのアイテムは違うからなぁ」
「何も問題ない」
モンスターがドロップするアイテムにはスキルありとなしがあり、スキルなしがドロップする確率が最も高い。
しかし、スキルなしのアイテムが本当にハズレかどうかは鑑定するまで分からない。
鑑定することでスキルなしのアイテムが実はスキルスロットが空だったということもあるのだ。
ちなみにスキルスロットが空のアイテムはスキルなしのアイテムの十倍以上の価値が余裕でつく。
それほどに抽選確率が低く、希少価値が高いということ。
「この10個のアイテムに精霊の小石の合成を頼みたい」
「あぁーーー、それって……私が上げた指輪じゃん!!」
「んっ? まだ未鑑定だなぁ、坊主悪い事は言わねぇ、十個もあれば一個くらいはなんて甘い期待はよすんだな。鑑定料だってルーキーからしたらバカにならないぞ」
鑑定料は一個につき10,000リヒトゥというルーキーにとっては簡単に手が出せない超高額設定になっている。
十個で十万リヒトゥ、それだけあれば豪華な食事に配信環境だって整えることができる。
身なりももう少しマシなものにできるかも。
手が震えながら握りしめた札をカウンターに置く。
この程度の額で何をビビってるんだ。
俺はトッププロになって億を稼ぐ男だぞ。
こんなんでビビってちゃあ話にならねぇ。
大丈夫に決まっている。
「本当にいいんだな坊主。望まない結果になっても俺を恨むなよ」
「ねぇねぇ、本当に大丈夫なの?」
「あっ、あぁ、大丈夫なはずだ。やってくれ!!」
金は竜鱗を売って工面した。
いざとなればまだ懐にはいくらかのリヒトゥがあるし、なくなれば別の方法で稼げばいいだけの話。
鑑定時のエフェクトで店が眩い光に包まれる。
光は収束していき結果が現れるのだ。
今もそうだろうし、前世でも鑑定ガチャと呼ばれプレイヤーを絶望の淵に何度も叩き落とした三大ガチャの一つ。
俺も例外なく夢を見て何度裏切られたことか。
しかし、今世は違う!!
さぁ、俺の栄光への扉を開き、祝福を与えてくれ。
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