就職活動
僕、
大学3年になって、そろそろ就職に向けた活動を始めないといけない時期になってきた。
周りはやれ大手商社のインターンシップに参加しただのオフレコで内々定貰っただの騒ぎ出して、これから始めようって僕みたいな平凡な学生を焦らせてくる。
ぴろんっ♪
LINE着信。
僕は慌ててスマホを手に取り画面を覗き込む。
母上『一度くらい私を出演させなさい。』
僕はスマホをベッドの上に放り投げた。
気が向いたら出て来てもらいますよ、母上様。
それはさておき、就活に於いてはまず『軸』を決めないといけない。
どんな職種がいいのか、どんな業界に入りたいのか……この辺りを固めておかないと、何せ求人票は山のようにあるので幅広くやっていては時間が足りなくなる。
「大地ぃ!出掛けるよぉ!」
時間が無いって言ってる傍からこれ。
同じように就活しなきゃいけないのにこれ。
「就活しなくていいの?」
「何か文句でもあるの?」
「あ、いえ、無いです。」
そりゃ愛莉はその抜群のコミュ力で面接なんか余裕なんだろうけどさ。
僕みたいなのは色々準備しとかないと不安になるんだよ。
そんな事を考えながら、愛莉に連れて来られたのは大学のキャリアセンター。
着くなり愛莉は真っ直ぐにパソコンの並ぶ机へと向かい、真剣な表情でモニタを眺め始めた。
なるほど。
いくらコミュ力高い愛莉でも、やっぱ人生決めることだもんな。
適当に受けて適当に内定貰って就職ってわけにはいかないんだろう。
平然としているように見えて内心そうでもないって感じかな。
「ここなんかどう?」
「え?」
愛莉がモニタに映して見せたのは、地元では割と大手で学生から人気のある事務機器の企業。
愛莉はここ受けるのか。
「どうも何も、こんな企業に就職出来たら最高だと思うよ。」
「でしょ。じゃあまずは企業情報しっかり調べていきなさい。」
「はい?」
「何よ?」
「え?いや、愛莉がそこ狙うんじゃなくて?僕?」
「私はパパの仕事手伝うから就活しないもん。」
「あ~……」
……と言いつつ、愛莉の両親の事も幼い頃からよく知っていると思っていたんだけど、そう思ってみると愛莉の親父さんって……何やってるんだろう?
「おじさんの仕事……って?そう言えば、おじさんが何の仕事してるとか知らないんだけど……」
「トレーダーだよ。」
「あぁ……」
トレーダーの手伝いって何だよ?
何手伝うことがあるって言うんだ?
ただパソコンのモニタを見て株や為替の売買する中の何を手伝うんだい?
「パパが”慣れるまでは収入に波が出来る”って言ってたから、その間は大地に頑張って稼いでもらわないとね。」
え?
何つった?
愛莉がおじさんの仕事手伝って収入が安定するまでは僕が稼がないといけないってどういうこと?
「僕が稼ぐ?」
「パパやママの時代ならパパが”一家の大黒柱!”とか言って女性は家に入ってなんて感じだったけど、もうそういう時代じゃないもんね。あ、勿論料理は好きだから任せて欲しいんだけど、お互い出来ることで助け合っていくのって素敵よね。」
それって、割と内角ギリギリを攻めたようなプロポーズじゃね?
「えっと……それは大学卒業して就職したら……その……ケッコンって感じ?」
「ん?そりゃそうでしょ。」
極々当たり前~って言い方。
愛莉の中ではもう線路敷いてたんだ。
「え?違うの?大地は私と一緒になりたくないの?」
「そんなわけないだろ。」
「じゃあ、大学卒業したらすぐ籍入れようね。絶対幸せにしてみせるから!」
それ僕の台詞~。
僕が愛莉に言って、愛莉がほっぺに桜を散らすやつぅ~。
愛莉男前過ぎぃ~。
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