校舎裏2
僕、
学校は制服があるのでさすがに愛莉に買ってもらった服を着て行くわけにはいかない。
着慣れた制服。
あと1年半くらいしか着ないんだと思うと何だか感慨深い。
「おっはよぉ~大地っ!」
玄関で座って靴を履いていたらいきなりドアが開いて天使の笑顔を突き出してきたのは愛莉。
前屈みになってるからオープンシャツの胸元から深い谷間が覗けそう。
辛うじてベストで支えられているたわわな膨らみは、いけないと思いつつもつい視線が固定されてしまう。
「おはよう愛莉。」
極めて冷静に挨拶を返した僕に対し、愛莉は『ふっふ~ん♪』と何故か得意気に笑いながら前屈していた体を起こす。
僕の目の高さには愛梨のスカートの裾と程良く引き締まった白い太腿。
本人曰く、『校則ギリギリの短さが一番可愛い』との事らしいスカート丈は、僕にとっては眼福……いや、目の毒だ。
何とか理性を保ちつつ立ち上がって鞄を持つと、愛莉が勢いよくドアを開けて外へ飛び出し、それに続いて僕が家の中に『いってきます』と言いつつ出る。
今日も一日が始まる。
◇◇◇◇◇
「おはよう花坂さん。今日もカレシと登校なんだね。」
学校に近付き見知った顔が増えて来ると方々から挨拶が飛んでくる。
その中で聞き慣れない言葉を交えて挨拶をしてくるのは、学校でもモテ男代表みたいなイケメンの
愛莉に好意を寄せていると公言しているだけあって、登校から下校まで愛莉が誰と居ようとお構いなしに声を掛けてくる。
だが当の愛莉はこの二階堂を毛嫌いしているのは一目瞭然だ。
「おはよう。アンタもさっさと彼女作って一緒に登校すればいいのに。」
「いやぁ、僕が一緒に登校したいのは花坂さんだからねぇ。」
「それは残念。一生叶わない夢ね。大地行こ。」
そう言って愛莉は僕の腕に抱き付くようにして進路方向へ体を押した。
二階堂は愛莉に冷たくあしらわれるのは慣れたもので、『ははっ』と短く笑って僕たちの後ろをのんびりと歩いて着いて来る。
目的地が同じ学校だから当然なんだけど。
それよりも、
「ふぅ。毎朝面倒だよね。明日から家出る時間変えようかな。」
学校が見えてくる所へ来ると、愛莉は『むにゅ』の反発力を使って僕の腕から離れる。
さらば至福の時よ。
「でも何か負けた感じになるのが嫌なんだよね。」
愛莉は何と勝負してるんだ。
俯いて思案に耽るような表情の愛梨の横顔は、長い睫毛と真剣な眼差しが見て取れてカッコイイと思う。
「ニセモノだから後ろめたさがあって面倒なのか。」
不意に愛莉が歩みを緩めて正面を見据えたままそう言った。
「ニセモノ?」
「そうよ。ホンモノなら後ろめたさも無くなるじゃん。私天才。」
「え?な、何の話?」
「朝のホームルームまでは余裕あるわね。大地、着いて来て。」
「え?あ、はい。」
何か思い付いた時の愛莉の行動を邪魔したり拒否したりすればどうなるかはこれまでの付き合いで十二分に把握している。
僕はおとなしく愛莉の後ろを着いて行く。
相変わらず僕より随分背は低いのに歩くの速いんだよな。
◇◇◇◇◇
校門をくぐり、正面玄関には入らず、そのまま校舎沿いにぐるっと回って校舎裏に辿り着く。
ここは以前、愛莉がオドオドした女生徒の髪を切った場所。
まだ生徒は半分も登校していない時間帯だけあって、当然誰も居ない。
「さてと。」
立ち止まって辺りを見渡した愛莉がくるっと体を僕の方に向けて天使の笑顔で僕を見て言った。
「告白して。」
「は?」
「聞こえなかった? こ く は く し て 。」
「え……っと……え?」
何だって?
告白して?
某メジャースポットであるここに連れて来られての『告白』ってあの『告白』のことだよな?
「どうしたの?」
「あ、いや……告白って……その……一般的に言う”告白”のこと?」
「それ以外何があるって言うのよ?」
こんな朝っぱらから強制的に連れて来られてムードも何も無い中で告白って……相変わらずだけど僕の意思は完全に無視されてる。
「早くしないとホームルーム始まっちゃうよ。」
いきなり告白しろって言われて時間制限付きなん?
そりゃ僕は愛莉の事が好きだよ。
でも、好きだからこそちゃんとしたシチュエーションで胸をドキドキさせながら言いたいじゃん。
唐突過ぎて言葉が浮かんでこないよ。
「えっと……その……」
どうせ拒否したところで聞き入れてくれるわけもなし。
過去に何度か頭の中でシミュレーションしたのを言うしかないか。
「あ、愛莉……ぼ、僕と付き合っt「いいよっ!」
早っ。
まだ言い終わってすらないのに早っ。
ゴング鳴るか鳴らないかのタイミングで右ストレートが綺麗に顔面に決まったくらいの早さ。
感動も、達成感も何も無い。
僕の人生初告白なんだけど。
ぽかんと口を開けて固まったままの僕の腕に、『んふふっ♪』と嬉しそうな顔で抱き付いてくる愛莉。
「さ、教室行こっ!カレシの大地っ!」
僕的には喜ばしい事なんだけど、何かよく分からない内に、僕は愛莉の彼氏になっていた。
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