誤爆送信 X軸②
店を出て二人と別れたあと、僕は右手の拳を強く握りしめてガッツポーズをつくった。計画は完璧だった。得られた結果にも大満足。
さて、コータローとグニマルは疑問に思わなかったのだろうか。なぜ僕がスマホをテーブルの辺に対して水平に置くことにこだわったか。
僕はどうしてもあの2人に自分のスマホを触らせたかったのだ。触ったという事実をつくりたかった。
あれもそう、仕掛けの1つ。現在時刻をわざわざ時間計測アプリで開いてみせたこと。
時間計測アプリ──あれは時計ではなくストップウォッチだ。ストップウォッチのカウントを現在時刻と錯覚させ、さらに誤認させるためスマホの左上に表示されている本当の時刻を隠す必要があった。縦向きで握ると現在時刻が左上に表示されてしまう。だからスマホを横向きにし、手で覆い隠したのだ。2人とも僕の正面に座っていたから、操作中の僕のスマホを盗み見ることはできなかった。実際、2人とも僕を疑う素振りは全く見せなかった。
では何のために僕はそんなことをしたか? 決まってるじゃないか。2人のどちらかがいたずらメッセージを送ったという事実を生み出したうえで、七瀬と接点をもつため。失敗しても送ったのは自分じゃないと言い訳ができる。それがこの作戦の最大のメリット。もし本当の時刻を見せていたら、僕が席に座っているときにメッセージが送信されたのがばれていた。逆に犯人は僕しかありえなくなるのだ。リスクを取らずに大きな賭けができる。七瀬に断られても学校で痛い目を見る心配はない。噂なんか簡単にSNSで拡散される時代だ。告白で残りの学校生活を台無しにするのは愚策だと僕は判断したのだ。
七瀬にメッセージを送った犯人は、僕──。
コータローとグニマルはもちろん無罪。まさか僕が犯人だとは夢にも思っていないだろう。ゲーム中にスマホの画面を確認し、本当の時刻に気づかれたら一巻の終わりだったが、幸いにも気付かれなかった。予想通り2人ともガチャに夢中で現在時刻など気にしていなかった。ちなみに僕がURを2回連続で当てたのもフェイクで、本当はリリース直後からリセマラを繰り返し、徹夜で2体集めておいた。それをあたかもファミレスで当てたかのように演出したに過ぎない。
ごめんな2人とも。僕の告白に付き合わせて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます