第41話 最終決戦

「喰らえ、先手必勝!」


 俺はアイマスクを外して爆発スキルを発動させる。この部屋はそこそこの広さがあるため爆発スキルを使っても大丈夫だろう。 


「バリアしてるから効きませ〜ん!」


 魔王は両手の人差し指と中指を絡ませてバリアを作る。クソガキみたいなことするじゃねえか。


「俺の爆発でそんなバリアぶち破ってくれるわ!」


 爆発スキルを連打しまくる。流石に何十発も叩き込めばバリアも破壊できるだろ。


「私のバリアは無敵なのよ!」


 何だよ、そのインチキなバリアは! 魔王、チート過ぎるだろ。


「今度はこっちからいくわよ。ヘルフレイム!」


 魔王の手からどす黒い巨大な炎が放たれる。俺はとっさにヘッドスライディングをして、それをギリギリで回避する。


「魔法陣も詠唱も無いのに、どうして魔法が?」


「私が魔王だからよ!」


 本当、こいつ何でもありだな。今まで戦ってきた幹部達とは段違いの強さだ。


「師匠、魔法陣が完成しました!」


 俺が魔王の気を引いている間に魔法陣を描くとは、なかなか優秀な立ち回りじゃないか。我が弟子は戦闘能力が無くたって、ちゃんと役に立つな。

 俺は魔法陣の上で詠唱を終えると、メアリーに習った最上級魔法を放つ。俺の修行の集大成だ。


「ライトニングストーム!」


 ライトニングストームは風と雷の混合属性の魔法だ。雷を纏った暴風が魔王を襲う。


「やったか!?」


「師匠、それはフラグですって!」


 暴風が止んで、中から魔王の姿が現れる。ピンピンしていて全くダメージを与えられていないようだ。


「だから言っているでしょう? 私のバリアは無敵だからどんな攻撃も効かないのよ!」


「ほら、師匠がフラグ立てるから〜」


 今のは俺のせいじゃないだろ。ただ単にあいつのバリアがぶっ壊れ性能だってだけだ。


「せっかくだから遊んであげるわ。ヘルフレイム! ヘルフレイム! ヘルフレイム!」


 詠唱をする必要が無いため、魔王は連続で魔法を放ってくる。だが毎朝ランニングをして鍛えた俺のスタミナを舐めてもらっちゃ困るぜ。素早い動きで炎を躱し続ける。


「ヘルフレイム! ヘルフレイム! ヘルフレイム!」


 魔王の攻撃を避けながら、俺は策を巡らす。

 よく観察すると、あの無敵バリアは自分自身が攻撃している間は解除されるようだ。ならば、あいつの攻撃に合わせてこちらも攻撃を叩き込めば良い。


「ヘルフレイム!」


「今だ!」


 魔王が攻撃を放ちバリアが解除される一瞬の隙をついて、俺はアイマスクを外して爆発スキルをぶち込む。さあ、どうだ?


「残念でした! 私の反射神経を舐めないことね」


 爆発が発生する直前に魔王はバリアを張り直したようだ。強いスキルを持っているうえに、慢心もしないんじゃ勝ち目が無い。これかなり絶望的な状況じゃないのか?


「そろそろあなたで遊ぶのも飽きてきたわね。とどめを刺してあげる!」


 不味い、殺される! 街で俺を待っている皆のためにもここで負けるわけにはいかない。

 どうする? 考えろ。考えろ、俺!

 俺はイチかバチかの賭けに出ることにした。


「魔王さん、やっぱり戦うのはやめよう!」


「今更何を言っているの? あなたのことは殺すって決めたんだから!」


「実は俺さ、あんたのことが好きになっちまったんだ」


「えっ?」


「とっても可愛いし、戦ってるうちに愛着が芽生えてきちまった」


「ほ、褒めたって無駄よ! そんなお世辞を言われたくらいで、あなたを見逃したりしないから! この、おバカ!」


「お世辞じゃないって。俺はあんたに本気で惚れたんだよ」


「あの、えっと……」


「俺と結婚してくれないか!」


「……良いわよ。ただしあなたが魔族になることが条件よ」


「ああ、わかった!」


「じゃあ魔族の契約をするから、こっちにいらっしゃい」


 魔王はバリアを解除した。俺に心を許したからだろう。


「隙あり!」


 俺はそこに爆発スキルを叩き込む。相手は完全に油断していたからか、バリアを発動させる間もなく爆発をもろに受けた。


「きゃぁぁぁぁ!」


 巧みな話術で相手の心を掴み、油断を誘う。そして相手の気が緩んだ隙を逃さずに攻撃する。我ながら完璧な作戦だ。

 あの魔王、あまり男慣れしてなさそうだからな。騙すのは簡単だったぜ。


「よくも……よくもやってくれたわね!」


 ゲゲッ! まだ生きてやがったか。流石、魔王というだけあって、しっかりと体力もある。だが、かなりボロボロになっているな。もう一発で倒せるだろうか。


「私の乙女心を弄んで、絶対に許さない!」


「これは戦いだぞ。どんな手を使ってでも勝てば良いんだよ。なあ、ジェシカ?」


「師匠、さっきのは流石に無いです。男として最低だと思います」


「そ、そうか……」


 ジェシカがこれまでに無いほど冷たい目をしている。地味に心が痛むからやめてくれよ。


「殺してやる! 絶対に殺してやる!」


 ヤバい、ヤバい。めちゃめちゃ怒ってるじゃん。さっさとケリをつけないと厄介なことになりそうだ。

 俺はとどめを刺すために再び爆発スキルを発動させた。

 しかし、魔王は即座にバリアを展開し、俺の攻撃を防いだ。


「もう気を緩めたりしないわ。徹底的に殺してやるから覚悟しなさい」


 本気モードの魔王との戦いが始まった。

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