第31話 遂にできた友人
「というわけでクソガキ共が全部悪いんだよ。魔女さんは普通に良い人だったぞ」
「なるほど、わかりました。それでは魔女討伐のクエストは取り下げておきますね」
ギルドに戻った俺は受付嬢に魔女の館であったことを話した。納得してくれたようで魔女さんは討伐対象から外れた。これからは平穏な暮らしを送ってほしいものだ。
「わざわざ館まで足を運び貴重な情報を提供してくださりありがとうございます。こちら、ギルドからの謝礼です」
そう言うと受付嬢は机の上に報酬金の入った袋を置いた。
「これいくら入ってる?」
「五万ゴールドも入ってますよ、師匠!」
「随分と多いな。ろくに戦いもしてないのにこんなにもらっちゃって良いのか?」
「はい! 罪の無い魔女を討伐せずに済んだことに対する感謝の気持ちです!」
「なるほどな。なら、ありがたくちょうだいするぜ!」
「はい!」
俺は報酬金を受け取ると、ギルドの外に出た。
「今日はこの後、リュートさんと飲みに行くんですよね?」
「ああ、そうだ。でもまだ早いな」
高難度クエストに挑戦するとのことだったので長期戦を想定していたのだが、魔女と和解したため予定よりも早くクエストが終わったのだ。そのため約束の時間よりだいぶ前に街に戻って来てしまった。この持て余した時間をどうしたものか……
「せっかくなので私と遊びましょう!」
「別に良いけど、何して遊ぶんだ?」
「遊園地です!」
「遊園地なら前にも行ったじゃねえか」
「何回行っても楽しいですよ!」
「う〜ん……」
「行きましょうよ! 行きましょうよ!」
「わかった、わかった! 遊園地に行こう!」
「わーい!」
ジェシカに押し切られる形で遊園地に行くことが決定した。なんだかんだ俺もこいつに甘くなっちまったな……何故か庇護欲を掻き立てられるんだよ。
「いやぁ〜、楽しかったですね〜!」
「満足したか? そろそろ約束の時間だから行くぞ」
「はい!」
遊園地を出てしばらく歩くと、リュートとの待ち合わせ場所に向かった。集合時間よりもちょっと早いため、リュートはまだ来ていないようだ。
「お、ダンテじゃん!」
聞き馴染みのある声が俺に話しかけてきた。リュートじゃないな。え〜っと、この声の主は確か……
「拓人か?」
「おう!」
「あれからどうだ? 何らかの職業に就けたか?」
「いや、まだだ。お前に言われてまずは何らかの技能を身に着けないといけないと思ってな」
「おお、そりゃあ良いね。具体的にどんなことしてるんだ?」
「ホグワーチュに通ってるぜ」
「ホグワーチュって魔法の専門学校の、あのホグワーチュか?」
「そう、そのホグワーチュ」
「あそこ、学費めっちゃ高くなかったっけ? 確か二年間で一千万とか。お前にそんな大金払えるのか?」
「奨学金借りたから大丈夫!」
「うわあ……情弱向けの悪徳商法にまんまとひっかかってるじゃん」
「そんなことはない! ちゃんと魔法について教わったぞ!」
「どんなことを?」
「先月は詠唱のやり方について学んだな。今月は魔法陣の書き方について学んでいるぞ。来月は杖の握り方を学ぶ予定だ」
「どれも一ヶ月もかけてやるような内容じゃねえよ。ていうか、杖の握り方って何だよ! お前、完全に騙されてるぞ」
「え、マジで?」
「魔法の使い方だったら三万ゴールドの月謝で俺が教えてやるよ。だから専門学校なんてやめちまいな」
「それは助かるぜ! 早速、退学手続きしてくるわ!」
拓人は退学手続きをするために専門学校に向かって走り出した。
まーた、悩める少年を救ってしまったか。これで毎月三万ゴールドの固定収入が入ってくるし、俺の懐も潤うぜ。正直、月謝三万ゴールドでもだいぶぼったくりだけど、詐欺まがいの専門学校よりはマシだろ。
「そろそろ約束の時間ですが、リュートさんまだですかね?」
「徹夜でクエストをやって疲れてるからな。そんな急かさなくて良いよ」
そんな話をしていると、こちらに走ってくる足音が俺の耳に入った。
「ごめん、待ったかい?」
「お、来たか! それじゃあ飲みに行くか!」
「ああ! それじゃあ行きつけの店に案内するよ!」
リュートの先導で俺達は店に向かった。
「マスター、いつものカクテルを」
「はいよ……」
無愛想なマスターが酒を用意してリュートに差し出す。
「そちらのお客さんは……?」
「じゃあ俺も同じのを」
「そちらのお嬢さんは……?」
「じゃあ私も……」
「ちょっと待てい!」
注文をしようとするジェシカの口を俺は慌てて塞いだ。
「酒は子供の発育には良くない! ジュースを頼みなさい」
「誰が子供ですか! 私は立派な大人のレディです!」
「いつまでもチビのまんまで良いのか? 大きくなりたくないのか?」
「早く大きくなりたいです!」
「だろう? ならジュースにしときなさい」
「わかりました! ミックスジュースください!」
「はいよ……」
「全員に飲み物が行き渡ったな? それじゃあ乾杯!」
俺達はグラスをカチンとぶつけて乾杯すると、飲み会を始めた。
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