第25話 モンスター軍団襲来

「どうだ? もうモンスターは来てるか?」


 俺とジェシカは街の入口に到着した。俺達以外にもたくさんの冒険者がそこには集まっている。騒がしい様子はなく静まり返っている。皆とっくに覚悟を決めているのだろう。


「まだですね。ただ遠くの方にうっすらと影が見えます。あれがモンスターの軍団ですかね」


「マジか……こっち側の戦力はどれくらいだ?」


「百人くらいですね」


「百人? ちょっと少ない気がするけど大丈夫なのか?」


 この街は都会ではないがド田舎という訳でもない。冒険者の数もそこそこ多いはずなので、百人じゃあまりにも少な過ぎるだろう。結局、自分の命が惜しくて避難しちまったのかな。俺自身もここに来たことをちょっと後悔してるし。


「心配いらないよ。ここにいるのはこの街の選りすぐりの強者達。そしてそのリーダーである僕もいる! 絶対に勝てるよ!」


 俺達の会話に一人の青年が割り込んできた。声質は爽やか系イケメンって感じだな。


「お前は誰だ?」


「僕はリュート。この街で最強の冒険者さ! 僕がここにいる限り誰も死なせない!」


「おう。頑張ってくれよな、リュート!」


「任せてくれ!」


 これはわかりやすい噛ませ犬だな。イケメンで最強の冒険者とか負ける要素モリモリじゃん。多分、開幕五秒で倒されるな。


「来たぞ! 皆、僕が合図したら戦闘開始だ!」


「おおおお!」


 盛り上がってるなあ。こういうのも全部フラグになるの気づかないのか?


「すっごいたくさんいますね! 何匹くらいでしょうか?」


「ちょっと待ってろ。新しくゲットした索敵スキルを使ってみる」


 俺はこめかみに手を当て、全身の神経を研ぎ澄ます。すると、周囲にいる敵の数が頭の中に浮かんできた。


「せ、千匹もいる……」


「え、こっちの十倍じゃないですか! ヤバいですよ!」


 俺だって驚いてるよ。いくら何でも多過ぎるだろ。モンスターが一度に千匹も集まるなんて聞いたことないぞ。多くても数十匹くらいが限度だろ。


「数が多いだけじゃありません。黒スライム、クリスタルカイザー、キングゴブリン、トロトロトロル、シーホース、モリンフェン、デスアーマイゼ、ネズミーマウスなどなど凶悪なモンスターが勢ぞろいです!」


 ちょくちょく変なモンスターが混ざってるな。ていうか、ネズミーマウスってガチのモンスターだったのか。そんな危険なのをよく遊園地に置いておけるな。


「皆、行くぞ! 僕に続け!」


「うおおおお!」


 リュートがたくさんの冒険者を引き連れて突っ込んでいく。さて、何秒持つか数えてみよう。一、二、三……


「ぐわぁー!?」


「リュート隊長!?」


「まさか、あのリュート隊長がこんな簡単にやられるとは……」


「終わりだ……もう全部終わりだ!」


 噛ませ犬隊長、三秒しか持たなかったな。皆に慕われていたお前が簡単に負けたせいで、完全にお通夜ムードになっちゃってるぞ。どうすんだ、おい。


「師匠、ここは格好良く決めちゃってください!」


 そう、俺はこの瞬間を待っていた。皆がボコボコにされて絶望しているところで、爆発スキルをぶっ放して敵を一掃。周囲の目には俺が英雄に映るだろう。嫌われ者を脱却するチャンスだ!


「皆、下がれ!」


「あん? 何だお前?」


「リュート隊長が簡単にやられちまったんだぞ。お前ごときにどうにかできる訳ないだろ!」


「そうだ、そうだ!」


「うるさい、良いから下がれ!」


 冒険者達は渋々ながらも俺の指示に従い、後ろに下がる。


「さあ、師匠! やっちゃって〜!」


「おりゃぁぁぁぁ!」


 アイマスクを外すと、大量のモンスターが視界に入る。すると、奴らはドカンドカンと次々と爆殺されていく。こりゃあかなりの数だな。これだけのモンスターが街に侵入すれば大惨事は免れないだろう。


「おお、すげえ!」


「あれだけの数のモンスターを一瞬で蹴散らしたぞ!」


「あのリュート隊長でも勝てなかったのに!」


 モブ共の歓声が気持ち良いな。このスキルをゲットして初めて嬉しいと思ったぞ。しかし、まだ少数のモンスターが生存している。

 

「うーん、流石に全部は倒しきれないか」


「爆発耐性持ちのモンスターと、回避性能の高いモンスターがいますからね」


 仕方ない。残りは腕利きの冒険者さん達に片付けてもらおう。多分、全員俺よりも高レベルだろうし負けはしないだろう。


「お前達、いっけぇー!」


「うぉぉぉぉ!」


 俺の号令で百人近くの冒険者達が生き残ったモンスター達に襲いかかる。リュートのポジションを奪っちゃったね。


「ジェシカ、お前も行ってこいよ。経験値をがっぽり稼げるぞ」


「私みたいな雑魚が行って大丈夫でしょうか?」


「屈強な冒険者様達が弱らせたモンスターに最後の一撃を加えるだけで良いんだよ。ああいう荒くれ者って小さい子には優しいから協力してくれるだろ」


「わかりました! 行ってきま〜す!」


 ジェシカがモンスターの群れに飛び込んでいく。見た目のアドバンテージを活かすのも大事だよな。

 自分の役目を終えた俺は静かにアイマスクを装着する。それから数十分のうちにモンスターは綺麗サッパリ一掃された。



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