第18話 ダンジョン探検
「この辺りがお二人の戦闘力で攻略可能で高報酬のクエストです!」
「ありがとうな。ジェシカとよく相談して決めるよ」
セシリアからクエスト内容の書かれた紙束を受け取る。目が見えない俺の代わりに、ジェシカはペラペラと大量の紙に目を通している。
「どうだ?」
「やっぱり報酬が高いクエストはどれもモンスター討伐ばかりですね」
「俺もそこそこレベルが上がってきたし大丈夫だろ。ただ爆発スキルを使うとコアも粉砕しちゃって報酬をもらえないから、普通に戦って倒さないといけないけどな」
「師匠のスキルって爆発スキル以外だと、かき氷生成くらいしかありませんよね? それでまともに戦えるんですか?」
「スキルになんか頼らなくたって俺にはレベルアップで得た筋肉がある! 白杖でボコボコに叩けばどんなモンスターでも倒せるぜ!」
「師匠、流石です! でも賢者なのに賢者らしい要素が全然無いですね」
「お前だって勇者らしい要素ゼロだろ」
「確かに〜」
「それで、どのクエストをやるべきだと思う?」
「そうですねえ、太古の洞窟でのアンデッド狩りなんかどうですか?」
太古の洞窟というのは、この国ができるより遥か昔から存在している歴史ある洞窟だ。アンデッドモンスターが多く生息しており、最近は奴らが洞窟の外に出てきて人々を困らせている。
「でもあの洞窟って初心者には向かない場所なんだろ? レベル10で大丈夫なのか?」
「太古の洞窟は光源が無くて真っ暗なうえ、松明を灯すとアンデッドがめっちゃ寄ってくるから難易度が高いんです。アンデッド一匹ずつは弱いのですが、たくさん集まると厄介なんですよ。ですが、私には心眼スキルがあるので松明を使わずに攻略できますよ」
あー、そういえばジェシカは心眼スキル持ってたな。まさかこんなところで役に立つとはな。
「じゃあそれにしよう!」
「はい!」
洞窟攻略となると長期戦を覚悟しなければならない。しっかりと、食料や水などの冒険の必需品を揃えておいた。一万ゴールド叩いて回復ポーションも購入した。痛い出費だけど死んだら元も子もないからな。
「準備万端、出発だー!」
「えいえいおー!」
馬車に揺られること約二時間、俺達は目的の洞窟に到着した。
「じゃあジェシカ、心眼スキルを使って俺を先導してくれよ」
「心眼発動!」
前を歩くジェシカの肩につかまり、洞窟の中に入る。何か急に寒くなったな。心のどこかに未知のダンジョンに対する怯えがあるのだろうか。
「師匠、心眼すごいですよ! 真っ暗な場所のはずなのに、洞窟の内部がくっきりと見えます!」
そりゃ良かったな。俺がずっと欲しがっているスキルを簡単に手に入れやがって、嫉妬心で気が狂いそうだわ。
洞窟内をしばらく歩いていると、ヌチョリヌチョリと気持ち悪い音が聞こえてくる。それと同時に腐った臭いが俺の鼻を刺激した。
「師匠、前方からゾンビが一匹きてます!」
「任せとけ!」
俺は足音と臭いを頼りにゾンビの場所を推測すると白杖を思い切り振り回す。すると、ドンと肉を叩く鈍い音が聞こえた。ちゃんとヒットしたようだ。白杖を振り上げ、すかさず次の一撃を繰り出す。
「師匠、撃破です! すぐにコアを回収しますね!」
アンデッド系のモンスターは一度倒しても一定時間が経過すると復活してしまうため、それを防ぐためにすぐにコアを取り出さなければならないのだ。
ジェシカは小刀を取り出し、ゾンビの胸部を解剖する。モンスターによってコアの場所は異なるが、ジェシカはそれをしっかりと記憶しているようだ。小さな頃は暇な時にモンスター図鑑をよく読んでいたらしい。昔はぐうたらじゃなくて勉強熱心だったんだなあ。
「回収できました!」
「ナイス!」
ジェシカから受け取ったコアを腰にぶら下げている袋に入れる。これが後々お金に変わるわけだから大事にしないとな。
「またアンデッドが来てます。あれはスケルトンですね。三体いるので気をつけてください!」
スケルトンはアンデッド系の中でも弱い方のモンスターなので、三体集まってもそこまで脅威にはならないだろう。さっさと片付けちまおう。
動く度にカラカラという骨が軋む音が聞こえるので動きを推測しやすい。白杖を大きく振りかぶり、頭部に直撃させる。まずは一匹。
その勢いに乗ったまま、二匹目には横薙ぎの一撃を喰らわせる。ガシャンと胴体がバラバラになった音がする。こいつ、全体的骨が脆くなってるな。カルシウム不足なんじゃねえの?
二匹目のスケルトンも問題無く撃破した。レベル10にもなるとモンスターを一撃で倒せるんだな。自分の強さに惚れ惚れしちゃうぜ。
「師匠、危ない!」
咄嗟に白杖を構えてスケルトンの振り下ろした棍棒を受け止める。カキンという音をたてて攻撃を弾き返すことに成功した。バランスを崩したスケルトンに渾身の一撃を叩き込み、どうにか撃破した。
この白杖、意外と頑丈な作りになってるんだな。恐らく、こいつが折れていたら負けていただろう。
「はぁ〜、危なかった……」
「師匠、何か私に言うことありませんか?」
「危険を知らせてくれてありがとうな。お前がいなかったら、攻撃をモロに喰らってヤバかったわ」
「油断は禁物ですよ!」
「気をつけるよ」
「それじゃあコアを回収してきますね!」
ジェシカはスケルトンの頭蓋骨を解剖してコアを取り出した。
俺は自分の頬をペチペチと叩いて気を引き締め直し、洞窟の更に奥へと足を進めた。
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