第15話 特訓

「師匠、やっちまってくださーい!」


「おらぁ!」


 俺はアイマスクを外して、向かってくるモンスター達を粉砕する。


「よっしゃ、三体同時撃破!」


「後ろからも来てます!」


「任せとけ!」


 素早い動きで振り返り、後方のモンスターも難なく撃破した。

 レベル上げのためにモンスターを狩り続けて、かれこれ三時間。爆発スキルを生かして既に大量のモンスターを葬っている。


「何か強くなった気がする! レベルが上がったかもしれん」


「本当ですか?」


「ほら、腕の筋肉触ってみ?」


「おー、微妙に硬くなってる気がします」


「だろ? そろそろ休憩時間にするか」


「はい!」


 ジェシカは地面にシートを敷き、そこにランチボックスを置く。待ちに待ったお昼ごはんのお時間だ。


「今日の昼食は何だ?」


「愛情たっぷりツナマヨおにぎりです。ギルドの売店で買ったやつですけど」


「見た目からして、このおにぎりは俺を食べたいって気にさせない」


「え、食べてすらもらえないんですか? ぐすん……」


「冗談だから泣くな! そもそもアイマスクしてるから見た目とかわかんないから!」


「そうですか。じゃあ、いただきまーす!」


「いただきます!」


 俺はツナマヨおにぎりを口の中に運ぶ。口の中に広がるツナの香り、そしてマヨネーズの風味。安いのにうまいな。異世界人って変人が多いけど、食に関しては尊敬するわ。マヨネーズ考えたやつ天才だろ。


「そういえばさ、俺はモンスター狩りまくって少し強くなったけど、お前はどうなんだ? ずっと俺の応援ばっかりしてて、全く戦闘してないように感じたけど」


「失礼な! 私だって、ちゃんとモンスター倒してましたよ!」


「嘘だぁ〜。戦ってる気配無かったぞ」


「本当ですって!」


「じゃあ、どんなモンスター倒したの?」


「デスアーマイゼです!」


「すっげえ仰々しい名前のモンスターだな。クリスタルカイザーみたいな凶悪なやつか? そんなのにお前が勝てるわけないだろ」


「いや、ちっちゃな蟻さんモンスターです」


「蟻って、あの蟻? 黒くてちっちゃくて、踏み潰すとすぐに死ぬあの蟻?」  


「そうです、その蟻です」


「それって本当にモンスターか? ただの蟻なんじゃないのか?」


「れっきとしたモンスターですよ! ただの蟻より微妙に大きいんです」


 そんなしょうもないモンスターに立派な名前をつけるなよ……前々から思ってたが、モンスターに名前をつけてるのは誰なんだ? たまに明らかにおかしい名前のモンスターいるし、深夜テンションで命名してるだろ。


「そんで、その蟻を倒しまくってどうだ? 強くなった実感あるか?」


「百匹くらい倒しましたが全然ですね」


 やっぱりレベルが90超えるとレベルアップに必要な経験値が桁違いなんだろうな。蟻から得られる経験値はごく僅かだろうし、何百匹倒してもレベル挙がらないだろうしな。かといって、経験値効率の良さそうなモンスターにはボコボコにされちゃうだろうし……今度、ジェシカのレベルを上げる方法をセシリアに相談してみるか。

 そんなことを考えているうちに昼飯を食べ終えた。


「さて、午後のトレーニングといきますか!」


「私はどうすれば良いですか?」


「蟻でも踏み潰しとけ!」


「了解です!」


 俺はアイマスクを外し、モンスター共の虐殺を再開した。












「ダンテ様の帰還だぜ!」


「ジェシカちゃんも帰還しました!」


「お二人ともおかえりなさい! 特訓どうでした?」


 日が暮れるまでモンスターを狩り続けた俺達はギルドに帰還した。今日一日でかなりの数のモンスターが倒せたぞ。

 ジェシカは蟻を三百匹潰したらしい。なんか可哀想になってくるよね、蟻が。一寸の虫にも五分の魂と言うしね。


「楽しかったぜ! 久しぶりにアイマスクを外して、外の景色を楽しめたよ」


「それは良かったです!」


 いくら盲目生活に慣れたといっても、やっぱりずっと視力が無い生活を続けるのはきついよ。人がいない街の外だと爆発による被害を気にしなくて良いから、気軽にアイマスクを外せる。地面に大きな穴をいくつかあけちゃったけど、人に迷惑かからない場所だし多分セーフだろ。


「どれくらいレベルが上がったか調べてもらえるか?」


「かしこまりました!」


 セシリアは引き出しをガサガサと漁り、採血道具の準備をする。


「師匠、私は採血しなくて良いですか? デスアーマイゼを踏み潰していただけなので、どうせレベル上がっていないでしょうし」


「そうかもしれないけど、一応やっとこうぜ。もしかしたらレベル上がってるかもしれないし」


「針が痛いから嫌なんですよ!」


「針の痛みに耐えれば経験値が溜まるかもしれないぞ」


「う〜ん……」


「ちゃんと採血できた偉い子には、帰りに好きなお菓子を買ってあげるぞ」


「本当ですか? やりましょう! ぜひとも採血しましょう!」


 お菓子にめっちゃ食いつくじゃん。ガキかよ。一応、こいつ俺より四つも歳上なんだよな? やっぱり体が幼いと心も幼いんだな。いや、逆か? 心が幼いから体が幼いのか?


「さあ、お二人とも腕を出してください。チクッとしますよ〜」


 俺の腕にプスリと針が刺さる。今日の朝よりも痛くないな。腕の筋肉が強くなったからかな? ジェシカは相変わらず泡吹いてるけど。

 採血が終わると、セシリアの足音がカウンターから遠ざかったいくのがわかる。結果を調べに行っているのだろう。どのくらいレベル上がってるかドキドキするなあ。




 

 




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