第14話 レベル
「よし、ジェシカ。出かけるぞ!」
「やっぱり明日にしませんか?」
「昨日も一昨日も同じこと言ってたじゃねーか! 今日こそは行くぞ!」
「え〜」
たけのこ狩りのクエストから三日が経った。たけのこを背負った状態で全力ダッシュしたせいで、昨日と一昨日は全身が筋肉痛で動けなかったのだ。回復魔法でも筋肉痛までは治せないらしい。
嫌がるジェシカを無理矢理引っ張り出して、俺達はギルドに向かった。
「おっす、こんにちはー!」
「ダンテさん、遅かったですね」
ギルドに入ると、勤務中のセシリアが出迎えてくれる。
「悪い悪い、ジェシカが駄々をこねるからなかなか出発できなくてな」
「今日もクエストをやっていきますか?」
「いや、今日はクエストはやらない」
「どうしてですか?」
「今まで二回のクエストをやってきたが、二回とも危険な目に合ってきたんだよ。だから俺達はもっと強くならなければいけない。クエストに行くのはもっと強くなってからにしようと思ってな」
「なるほど」
「というわけで、どうやったら強くなれるか教えてくれないか? ギルドの職員ならそれくらい知ってるだろ」
「それならレベルを上げたらどうですかね」
「レベル? 何それ」
「え……知らないんですか?」
「知らん!」
だって仕方ないじゃん。成人してすぐに視力を奪われ、ほとんど冒険にも出てなかったわけだから、冒険者としての常識を学ぶ機会が無かったんだよ。
有料の講習会もあるらしいけど、そんなことに金を使いたくないし。
「じゃあアホで無知なダンテさんのために説明して差し上げるので、耳の穴かっぽじって聞いてくださいね!」
「は、はい……」
何もそこまでボロクソ言うことないだろうよ。確かに冒険の知識に関しては無知だけど、平均程度の頭脳は持ち合わせているつもりだぞ。まあ、教えてくれるっていうんなら素直に聞くけどよ。
「敵を倒すと経験値という物が得られます。トレーニングによっても経験値は得られますが、モンスターを狩った方が効率は良いですね」
「ふむ……」
「経験値が一定以上溜まるとレベルが上がります。ここまではわかりますか?」
「まあ、なんとなくだが理解できた。そのレベルってのが上がるとどうなるんだ?」
「強くなります。具体的に言うと、攻撃の威力が強くなったり、素早く動けるようになったりします。ちなみにレベルの最大値は99です」
「なるほどな。レベルをたくさん上げて強くなれば、クエストを安全にこなせるというわけか」
「そういうことですね。あと、レベルが上がった時にランダムにスキルを獲得できる可能性があります。レベルが高くなればなるほど、ランクの高いスキルを獲得できるようになりますよ」
つまりレベルを上げまくれば心眼スキルを獲得して、視力を取り戻すことができるわけか。心眼はAランクスキルだからそうそう簡単には手に入らないだろうけど、根気よくモンスターを狩り続けていつか必ず手に入れてみせるぞ。
「ところで俺達のレベルはいくつなんだ?」
「調べてみますか?」
「頼むわ」
「それじゃあチクっとしますよ」
「いってぇ!?」
俺の腕に激痛が走った。何かで刺されたぞ。
俺の右隣から、ぷくぷくと泡を吹く音が聞こえる。ジェシカも同じ目にあったのだろう。
「いきなり何すんだよ、タコ!」
「そうですよ、タコ! 私、危うく死ぬところでしたよ!」
「何って血液検査です! こんな小さい針で死にかけるってあなたはどれだけ紙耐久なんですか?」
「何で急に血液検査!?」
「血液検査でレベルを調べられるんですよ!」
そりゃずいぶんと科学的な検査方法だな。なんかもっとさあ、「ステータスオープン!」みたいな格好いい感じじゃねえのかよ。
「そんで俺達のレベルはどうなんだ?」
「ダンテさんはレベル3ですね」
この前、スライムを狩ったからレベルが上がってたのか。コアを破壊したせいで金は稼げなかったが、経験値はちゃんともらえるんだな。
「それでジェシカさんは……」
こんな雑魚、どうせレベル1だろ。だがどんなに弱くても俺は見捨てないぜ。なんたって師匠だからな!
「レベル90ですね」
「ん? 聞き間違いかな? もう一回言ってみて」
「ジェシカさんはレベル90ですね」
「え……」
ジェシカがレベル90? それ、マジで言ってんの? こんな雑魚なのに?
「お前、何でそんなにレベル高いの?」
「昔、お父さんが強くなる秘薬をくれたのでその影響かもしれませんね」
飲むだけでレベルが90まで上がるってどんなチートアイテムだよ。そしてそんなチートに頼ったにも関わらず、全く強くならないジェシカはどんだけ雑魚なんだ? その秘薬、俺が飲んだ方が絶対有効活用できたって。もったいないなぁ……
「レベル90まで上がったのにそれだけ雑魚だと、これ以上強くなる見込みもないな。絶望じゃん……」
「まだレベルアップのチャンスが九回もあるじゃないですか! きっと私、大器晩成型なんですよ!」
「まあ、そうだな。とりあえずレベル上げに行くぞ」
「うぃっす」
「最近、この地域に生息しないはずの凶悪なモンスターが多く発見されていますので気をつけてくださいね」
「忠告サンキューな、セシリア。街の近くで狩りをするよ。もし危険な目にあってもすぐに帰って来られるからな」
「それが良いと思います!」
「それじゃあ行ってくるぜ」
「行ってらっしゃいませー!」
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