第13話 大儲けだぜ
俺達は今、帰りの馬車で揺られている。虎ってめちゃめちゃ足が速くてびびったよ。危うく追いつかれるところだった。持ち前の逃げ足の速さでどうにか逃げきったがな。何か俺達、全然強くならないのに逃げるのだけが上手くなっている気がする。悲しいなあ……
「すぴー、すぴー」
隣の席ではジェシカが可愛らしい寝息をたてて眠っている。体力が無いのに無理して走り続けて、相当疲れたのだろう。
「ししょう……」
ん? 俺のことを呼んだか? いや、寝言みたいだな。どんな夢を見ているのだろう。
「私、強くなります……」
うんうん、それは良いことだ。
「強くなって、お金いっぱい稼いで、師匠と一緒に一生ダラダラニート生活します……」
強くなって行きつく先が結局そこかい! 怠け者の性格が完全に根付いちゃったよ。俺のせいなんだけどね。
しかし動機はどうあれ、ジェシカだって強くなりたいという気持ちはあるんだな。実力が全く伴ってないけど。そろそろ俺達が強くなるための方法を本気で考えないといけないな。
俺はジェシカの頭をポンポンと撫でた。
「まもなく終点でございます」
「むにゃむにゃ……着きましたか?」
「おう。ギルドに行くぞ」
「うぃ〜」
馬車から降りた俺達は、この前のぼったくり僧侶にジェシカの回復をしてもらい、その後ギルドを目指して歩き始めた。回復代は持ち合わせてなかったからツケにしといてもらったぜ。払うつもりないけどな。
「ダンテさ〜ん、たけのこの金額の計算が終わりましたよ〜!」
受付嬢に呼び出されて、俺達はカウンターに向かう。さーて、いくらになったかな?
「合計で七万ゴールドになります。これだけのたけのこを集めてきたのはあなたが初めてです。すごいですね!」
「予想以上の収穫だな。クリスタルカイザーに殺されかけたけど、苦労した甲斐があったぜ」
「クリスタルカイザー……ですか? それは、もっと遠くの地方に生息するモンスターのはずですが」
「いや、竹林にいたんだよ! バッチリこの目で見たぞ!」
「ふむ……」
「嘘じゃないって! 信じてくれよ!」
「疑っているわけじゃありませんよ。この前、報告していただいた黒スライムの存在もしっかり確認できましたし。クリスタルカイザーについても調査させていただきますね」
「おう、頼むぜ」
この辺は強いモンスターが出ないから人気で地価の高い地域だったはずだが、最近は凶悪なモンスターがよく出現するようになったな。天変地異の前触れなのかもしれないな。
報酬を受け取り、俺達は家路についた。
「ただいまー!」
「おかえりなさーい!」
俺は家に帰るなり、テーブルに袋を置く。
「これは?」
「良いから開けてみな」
「こ、これは……」
中身は今日俺達がクエストで稼いできたお金だ。セシリアのやつ、びっくりして絶句してるな。俺だってやればできるんだよ。
「ダンテさん、遂に犯罪に手を出したんですね……一緒に警察に行きましょう!」
「は? ちげーよ! これはクエストで稼いだ報酬!」
「本当ですか? たった一日で七万も稼いだと?」
こいつは俺のこと何だと思ってるんだ? 俺がそんな人の道を外れるようなことをするわけがないだろうよ。あ、でもジェシカを連帯保証人にしようとしてたか……まあそれは反省したからノーカンで。
「安心しろ。ちゃんと真っ当に稼いだ金だ」
「ううっ……成長したんですね……」
セシリアは感極まって泣き始めてしまった。俺は華麗にハンカチを差し出す。
「この爆破能力を生かせば効率良くクエストをこなせるってことがわかったよ。これからも頑張って金を稼ぐよ」
「頑張ってくださいね! ところで、そろそろ夕飯の支度をしますが何か食べたい物でもありますか?」
「クエストの報酬として、たけのこを少しだけ分けてもらったんだ。これで何か作ってくれるか?」
「はい!」
セシリアは鼻歌を歌いながら夕飯の準備を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます