第5話 パーティーメンバー募集します
「お前がダンテ・ウィリアムズか?」
「そうだけど」
「俺の名はマイク、お前がパーティメンバーを募集していると聞いてな。パーティを組んでやってもいいぜ」
まだ五分も経ってないのに希望者が来るとは驚きだ。俺はSランクスキル持ちの賢者ってことで肩書きだけは立派だから、パーティを組みたいという人が多いのだろう。
「じゃあ簡単な面接をやります。とりあえず自己PRをお願い」
「俺は上級職のバトルマスター、その中でもかなり上位の部類に入る強者だ。長年愛用しているこのハンマーでどんな敵も粉砕するぜ! 報酬の半分をよこすなら、仲間になってやらないこともない」
脳筋タイプか。こいつの実力がどんなものかはわからんが、スライム討伐くらいなら誰でもできるだろ。やけに偉そうなのがムカつくけど、そこは目を瞑っておこう。
「採用で」
「よし! それで俺は何をすれば良いんだ?」
「とある事情で俺は目が見えない」
「だろうな。アイマスクしてるし」
「だからお前はモンスターの生息地まで俺を運ぶ。そして俺に危険が及ばないように、俺を守りながらモンスターと戦う。以上だ」
「お前は何をするの?」
「んー、応援とか?」
「ふざけるんじゃねえ! それじゃあ俺一人でクエスト受けた方がマシじゃねえか!」
「それじゃ困るんだよ。俺も借金を返さないといけないからさ。人助けだと思ってパーティを組んでくれよ」
「目も見えない、戦闘能力も無い、おまけに借金まみれ。本当にゴミみたいなやつだなお前。誰もお前なんかとパーティを組むやつなんていないだろうよ!」
カッチーン。怒りました。完全に怒りましたよ、俺。そこまでボロクソに言ったんだから痛い目にあってもらわないとな。
俺はアイマスクを外し、マイクを凝視する。こいつ、スキンヘッドで色黒で筋肉ムキムキとか典型的な脳筋だな。
「ぶはっ!?」
マイクは猛烈な爆風に煽られ、ギルドの壁を突き破って遥か彼方へ飛んでいった。
この壁も弁償しなきゃいけないのかな。嫌だなあ。
そんなことを考えていると、次の希望者が俺の前に現れた。
「初めまして。ルヒィと申します」
声の感じから察するに、俺と同年代の男だな。さっきのベテランとは違って、彼は俺と同じ駆け出し冒険者だな。
「ルヒィ君よろしく。とりあえず自己PRを頼むよ」
「僕はつい最近、冒険者になったばかりで今回が初めてのクエストです。職業は海賊王です」
「海賊王か。じゃあ海での戦いとかが得意なのかな?」
「いえ泳げません」
「え、海賊王なのに泳げないん?」
「でもSランクスキルを持っているので役に立てると思います!」
こいつもSランクスキル持ちか。俺のスキルとは違って、ちゃんと役に立つスキルだと良いんだけど。
「どんなスキルなの?」
「体がゴムみたいに伸びます」
「ふんふん、それで?」
「それだけです」
「それだけか……」
お前もハズレスキルなのかよ。体が伸びるって使い道なくねえか? 敵を遠くの殴る時に手足を伸ばすと、その間自分の防御が疎かになるし。遠距離攻撃がしたいなら魔法や飛び道具を使えば良いしその能力の旨味そこまで無いよな。ルヒィ君自体もなんか弱そうだし。
「今回の選考についてですが、慎重に検討した結果、ご希望に添いかねることとなりました。大変恐縮ですが、どうかご理解頂けるようによろしくお願い致します」
まあ簡単に言うと不採用ってことだ。
「そんな! 僕だって役に立てます! パーティに入れてください!」
「どうかお帰りください!」
俺はアイマスクを外してルヒィを視界に入れる。爆風で派手に吹き飛ばしてやるぜ……ってあれ? こいつピンピンしてやがるぞ!
「ふっふっふっ……効かないねえ、ゴムだから!」
「うるせえ! さっさと立ち去れい!」
俺はルヒィの体を持ち上げ、外に投げ飛ばした。可哀想な気もするけどゴムなら頭を打っても大丈夫だろう。
それにしてもなかなかまともなパーティメンバーが来ないな。最上級職の勇者とかが来てくれたら最高なんだけどな。勇者というのは全ての冒険者の頂点に立つ者で、物理も魔法も最強の職業だ。一人で何でもできちゃうから他人とパーティを組む勇者は少ないがな。
「こんにちはっす。私にも面接してください!」
おっと、次の希望者か。声の高さから察するに俺より二歳か三歳年下の女だな。ということは未成年の冒険者かな? この世界では通常は十六になるまで職業は割り当てられないが、学校を飛び級で卒業できるほどの逸材は特例として未成年でも冒険者になることができる。ということは彼女はなかなか優秀な人材なのかもしれない。
「こちら履歴書です!」
パーティメンバーの面接で履歴書用意してくんのか。偉いな。
「悪いけど見ての通り目が見えないから履歴書読めないんだわ。とりあえず、ざっくりと自己紹介してくれる?」
「私の名前はジェシカ・エリオット! 職業は勇者です!」
「え、勇者!?」
「はい、勇者!」
「はい採用!」
「やったー!」
そりゃあ即採用に決まってますよ。だって勇者だもん。不採用にする理由が無いね。
「それじゃあここにサインしてもらおうか」
「なんぞこれ?」
「ここに名前を書けば君は晴れて俺の連帯保証人になれる!」
「れんたいほしょーにん?」
「連帯保証人というのはな、どんな時も苦楽を共にする真の仲間ってことだ」
「真の仲間! 分かりました、サインします!」
やはりな。こいつは冒険者としては優秀かもしれんが、所詮は子供。騙すのは容易いぜ。こいつに借金を押しつけて、後はセシリアの家で悠々自適な余生を送るぞ!
「何しとんじゃい、このアバズレ!」
「うげぇ!」
突如俺の頭部に激痛が走る。
「いきなり何すんだよ、このおっぱい女!」
「お姉さん、おっぱい女さんって言うんですか?」
「違います、セシリアです! ダンテさん、こんな年端もいかない子を騙して心は痛まないんですか? どうしようもない人だとは思っていましたが、まさかここまでとは思ってなかったです!」
「冗談に決まってるだろーよ。いくら何でも小さな女の子に借金を押しつけるほど俺もクズじゃねえよ」
「それなら良いんですが」
本当は押しつける気まんまんだったけどな。
「さて、それじゃあ冒険に出発しようか!」
「行きましょう、親分!」
「親分はやめろよ。何かダサいから」
「じゃあ、お頭!」
「それもダサいな」
「じゃあ何が良いですか?」
「うーん、そうだな……」
俺は相応しい呼び名とは何か、頭を悩ませる。
「まあクエストが終わるまでに考えておこう。それまではダンテさんとでも呼んでおけ」
「了解っす! ダンテさん!」
「よし、じゃあ気を取り直して出発だ!」
「おー!」
これが俺と相棒の出会いだった。
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