漆黒の沼

私はあれから彼に会い続けた。回数を重ねれば重ねるほど彼という薬の副作用は私を苦しめた。私の心を蝕んだ。彼には私以外一体何人とあっているのだろうか。もし彼が私だけだと言ってくれるのなら私は全てを失ってもいいと思った。それほど彼を手に入れたかった。

10回目に彼にあったとき彼は私に自分は君にとってどんな存在なのかと尋ねた。 誰よりも愛してる、と言いそうになって私は口を閉じ、友達、と言い直した。本心ではなかった。彼を失う方が辛かった。本当は誰よりも愛してほしいと言いたかった。そんなことを言えるほど私は強くなかったし、自信もなかった。それに友達なら、別れもない。恋人になれば別れが来るのだ。そうであるならば友達のまま彼のそばにずっといたい。友達なら別れなどないのだから。たとえ彼に恋人ができようと友達ならそばでそれをみていられる。ずっと。永遠に。

私の気持ちとは裏腹に彼の表情は少し安心してるかのように見えた。彼もなんらそこらの男たちと変わりはなかったのだろう。他の人とは違うと感じたのは私だけだったのだ。ここで私の気持ちは冷めて仕舞えばよかったのが、決して消えることはなかった。

それからしばらくして彼と連絡が取れなくなった。他の人と会うので忙しいんだろうか。そんなことを考えると心が張り裂けそうになった。そうして私はたびたび仕事をやすみ始めるようになった。人間というものは一度怠けると再び動き出すには、かなりの労力が必要になるものだ。私は仕事にとうとういけなくなった。友達に連絡をすることもできなくなり、一日中カーテンを締め切った部屋で死んだように寝続けた。寝ることでしか、心の苦しみは消せなかった。

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I'm mad about you I love you ルナ @luuna0707

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