スマホの裏面が割れちゃった

「弟が違うバスに乗ったそうだ」と血管が浮いている目が僕の目を見つめた母が言った。


「へぇ違うバスに乗ってたか」と素っ気ない返事を返すと、「今すぐ弟を探してもらっていい?」と言われた。


はあ?なんで僕が弟を探さなければならないの?僕はそんなに暇はない。漫画や小説などやらなきゃいけないことがあるのになんで僕に頼んだの?両親は仕事なので探しにいくのが難しいので、特別な用事でもない僕に頼んだと思う。


はあと大きなため息を吐いて、「わかった。探しに行く」と渋々しながら答えた。玄関から出た瞬間にもわぁとすごい熱気が漂っている。真っ青な空から強烈な日差しが漏れていて、頭や皮膚をいじめていた。


暑い。。。と思いながら探した。行きそうな場所に向かってみたが、弟らしきな人はいなかった。もしかしたら遅れてバスが来ているかもしれないので、もうちょっとここで待ってみようとした。


熱気と強烈な日差しの中であちこちの体中に汗が出始めていた。何度もハンカチで拭いても拭いても終わりが見えない無限に汗が出し続けていた。


スマホを起動して、時計を確認するともう1時間になっていた。なかなか来ない。イライラしている僕が頭の中で「なんで違うバスに乗ってるの?」「なんでスマホを持ってないの?スマホを持っていたならすぐに連絡を取れるだけど」など抑えきれないくらい不満の言葉が溢れていた。


暑い環境の中で我慢するのはもう限界だと思って、待つのを諦めて、家に帰ることにした。服の中に下着がビッショリと濡れていた。大量の汗を吸収したか、濡れていたままだと気持ち悪い。早く着替えたい。


ノートやクリアファイル、筆箱、スマホを持って移動した。たまたま目の前に黒い車が停まっていた。黒い車から帽子をかぶっている人が出てきて、どうやらゴミを捨てに行っているそうだ。


チラ見した瞬間にあれ?なんか軽くなった。・・・胸の騒ぎがする。心臓がドクンドクンとダイナミックに動いている感覚がする。


下を見てみると。。。スマホが地面の上に置いてあった。やっぱりか、さっきに感じたのは正解だった。どうやらスマホがノートやクリアファイルの上から滑り落ちていた。


落としたスマホを拾うとするが、見なくてもわかる。だってさ家ではなく外なので、床と比べて固くできている。なので、なので。。。伸ばした手がゆっくり慎重にスマホを拾った。裏返してみると、複数のヒビが入れていた。


おお、なめらかな平面よりヒビのある平面の方が美しく見えた。。。いや、そんなことより、やっぱり予想した通りにスマホの裏面が割れていた。


割れた裏面を見ると、僕の心までも割れた。力が出ない、漫画を描く気がない。割れた心は悲しいなのか、ショックなのかわからないが、勝手に涙が出てきた。なんで泣いているのかわかった。


それは使えなくなるまで使い続けようと自分の中で自分のスマホに約束した。それなのに僕がその約束を破っていたので、罪悪感に襲われて、僕のせいでスマホがダメになってしまったと自分を責めた。


自分を責めるたびにメンタルが弱り、涙腺が脆くなっていた。3時間も仰向けになってぼんやりと過ごした。力が出ない、何も動けない。ただ涙が流れるだけしかできなかった。


このままだと自分が壊れてしまう———危機感を感じて、何か楽しめそうなことはないか考えた。最初に思い浮かんだのは、Pixivに投稿している漫画を読むことだった。


最近、好みの漫画がたくさんあって楽しんで読んでいる。面白い内容を読むと気持ちが明るくなる、悲しい内容を読むと気持ちが憂鬱になる。物語に沿って感情が豊かになれる。


割れた裏面は新聞紙の上に置いて、水や汗などを付けないように気をつけながらスマホを起動して、漫画を読んだ。読んだのは、サラリーマン系の恋愛だった。


読み始めると、次々の話に気になって指が止まらずにスクロールした。ほのぼのしたり、笑ったりして、さっきの気持ちを忘れて物語の世界にめり込んで夢中になった。次の話なしまで読み終えた。


嘘のように気持ちが軽くなった。自分を責めなくなった。割れたことはまだ忘れないが、ケースをつけていないので、割れたのは仕方ないと思った。使えなくなるまで使い続けようと約束したのに、僕の不注意で約束を破ってしまい、本当にごめんなさい。


割れたスマホをそのままに使うと水とかなどを付けると水没して壊れてしまうので、新しいスマホを交換した方が良いと勧められた。


仕方なく今のスマホとお別れをして、次は新しいスマホを長く使い続けられるようにケースとかなどを付けて大切に利用していきたい。

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