第22話 怪しい奴と、魔王タイトと、同類

 姿隠しを使い、色々な所を偵察する。

 フォリアを観察する様な、怪しい動きをしている奴を見つけたので、後をつける。

 怪しい奴は魔法で通信をしているらしい。

 くそっ、用心深い奴だ。

 アジトを見つけて一網打尽とはいかないか。


 怪しい奴は生徒の従者らしい。

 自室は突き止めたので、部屋からいなくなってから、引き出しを漁る。


 住所と合言葉が書かれた物が見つかった。

 馬鹿だな。

 パスワードは覚えやすくて、他人には分からないように、しておくものだ。

 まあ、姿隠しを使えば俺には合言葉は必要ないんだけどな。


 書かれている住所に行くと怪しげな酒場だった。

 たぶん奥の部屋が秘密の部屋だろう。

 姿隠しを使っても、音や匂いや体温とかは、誤魔化せない。

 扉を開けると気づかれるだろう。

 俺は扉の前で辛抱強く待った。

 フードを被った男が扉の前で合言葉を言う。


 扉が開いたので、男の後について入った。

 中には20人程の男がいる。

 俺は問答無用で水球を放った。


 突然の攻撃になすすべなくやられていく男達。

 この男達の罪なんて別にどうでもいい。

 善人かも知れないし、悪人かも知れない。

 俺は法の支配から解き放たれて生きるのだ。

 こそこそしているのが悪い。


 皆殺しにしてから、書類を漁る。

 出て来たのはフローラ王妃化計画。

 何じゃこりゃ。

 フローラは悪の手先だったらしい。


 あの無害そうな雰囲気に騙されたな。

 計画はこうだ。

 見目麗しい平民の女を手先にして、シクリッド王子を誑し込む。

 そしてシクリッド王子を王位につける。

 女は王妃になるという魂胆だ。


 エンゼルはこの計画の犠牲者になったらしい。

 フォリアの暗殺依頼書も見つけた。

 アジトは複数あり、暗殺依頼書はこの組織全体に、行き渡っているらしい。

 厄介だな。


 突然、建物が揺れる。

 何だ。


 俺は慌てて酒場から出た。

 首に短剣の刃が押し付けられる。

 短剣の主は俺の真後ろにいる。

 ぬかった。

 慢心してた。


 建物の破壊音が聞こえた。

 もうもうと立ち昇る土埃。

 どうなっているんだ。


 土埃が治まると、目の前には3人の女と1人の男がいる。


「姿隠しか。【姿隠し解除】」


 男に姿隠しを解除されたようだ。


「タイト、殺す?」


 俺の後ろから声がした。


「魔王タイト? あなたの手引書を読みましたわ」

「マイラ、待て。日本語を読んだというのか?」

「ええ、日本人なのですの」


 どうやら死なないで済みそうだ。

 タイトも転生者で、同類らしい。


 タイトと二人で飲みに行った。


『日本人に会えるとはな』

『俺もだ』


 二人は日本語で話している。


『日本語なんてもう使わないからほとんど忘れてる』


 そうタイトが言う。


『俺はまだ一年経ってないからな』


『カレー食いたいな』

『そうだな。料理人が転生しないかな』


『TSって辛いだろ』

『それほどでもないな。女だと0721が気持ちいい。快感神経を刺激すると凄いぞ』


『なんでまた魔導師のアジトなんかに?』


 あいつらは魔導師か。


『やつらのターゲットになった』


 俺は答えた。



『ありそうな事だ』

『タイトもやつらと因縁がありそうだ』


『ああ、数えきれないほどな』

『フローラという生徒をシクリッド王子と結婚させたらやばい』

『なんなら俺が対処しようか。こう見えて王族には顔が利く』

『いいや。俺の復讐だから、俺がやる』

『言っておくが、王子は殺すなよ』

『これから起こる事を考えたら可哀想な男だよ。でも同情はしない。生き恥をさらして生きてもらおう』


 タイトからの飲み会が終わると俺はピンクのてるてる坊主を吊るした。

 頭の中になんて書いて入れたかは秘密だ。

 さあ、出陣だ。

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