第14話 店と、力場と、初めての客

 病気治療のポーションは、口コミで売れ出すようになった。

 一般の人は買いに来ないが、広まるのも時間の問題だろう。

 俺はなんと色街の一角に賃貸で店を持てるようになった。

 えっちなお店だが、娼館のたぐいではない。

 あん♡そこっ♡ポーションを売る店だ。


 娼館の女将が骨を折ってくれたので、開店にこぎつく事が出来た。

 と言っても1坪ぐらいのお店だが。

 女性向け、あん♡そこっ♡ポーションありますと書かれたのぼりが、はためく。


 客が来ない。

 暇だ。

 腕時計の時間を確認するとさっきから30分しか経ってない。

 魔法陣ラジオからはハスキーな歌声が流れる。


 ご褒美あげちゃおうか。

 駄目だ、まだ売り上げは上がってない。

 シャワーポーションと自然治癒ポーションは娼館に卸しているが、シャワーの類似品は魔道具ですぐに出てくるだろう。


 いや、出てくる事はないか。

 プログラム魔法の効率を出せるのは魔王タイトと俺だけだと思う。


 それにしても暇だ。

 女性向けのエロい目的のポーションなんて売れないよな。

 まずターゲットが違う。

 金を持っているのは客だ。

 男だ。


 娼館に変な物を持ち込むと出入り禁止になる。

 俺のポーションをプレイに使いたくても出来ない。

 男は買わないわけだ。

 娼婦は0721しないだろうな。

 エッチしまくってるものな。


「店の調子はどう?」

「あっ、ラピアお姉様。いらっしゃいませ。暇ですわ。居眠りしそうです」

「だから、病気治療のポーションにしときなさいって言ったのにさ」

「よろしいのです。しょせん道楽ですわ」

「あなたからは、人生に疲れた人の雰囲気がするよ。若いのに苦労してるんだねぇ」


 しみじみ言われてしまった。

 そんなに苦労が滲み出ているだろうか。

 まあいいさ。


 病気治療のポーションを作るのは別に良いんだ。

 女の子が病気で苦しんでいるのは見ていられない。


 娼館にはかなり格安で卸している。

 あのポーションはウイルスなら殺すから、たいがいの病気は治療可能だ。

 風邪にも効く。

 水虫にもだ。


 あん♡そこっ♡ポーションは現在、シャワーとエアハンマーの二つだ。

 品数が少ないな。


 ぶるぶる来るのは作ってない。

 なぜなら材質の問題があるからだ。

 異世界にはプラスチックなどは存在しない。

 ゴムもだ。


 魔法は召喚魔法だから、材質は自然界にある物になる。

 金属と木と石ぐらいしかない。

 これでは、ぶるぶる来る物は作れないだろう。

 丸い玉の奴なら金属でも作れそうだが、色々と難しい。


 ゴム素材が欲しいな。

 何かないかな。

 魔法手引書のページをペラペラめくって流し読みする。

 むっ、力場とな。

 これで柔らかい物に触った感触を出せないかな。

 考えて試してみよう。


 ドアが開いた。

 お客さんだ。


「いらっしゃいませ」

「あなた、恥ずかしいのなら、外に出て待っていてもいいのよ」

「恥ずかしくなんかないよ。悩みを打ち明けるのが恥ずかしいだけだ」


 おお、カップルだ。

 こういう客層もあるのか。


「どのようなお悩みかしら」

「子供が出来ないのよ」

「そうなんだ。僕も困っている」


 これも予想外の悩みだな。

 俺は医者でも何でもない。

 どうアドバイスしたら良いだろうか。

 年の頃は奥さんが10代の後半、旦那さんが20代ちょうどぐらいだ。

 若いから健康に問題はなさそうだが、不妊の原因は色々とある。

 体の問題だと、どれが原因でも俺の手には余りそうだ。

 医者じゃないからな。


「わたくしに出来るのは、このエアハンマーのあん♡そこっ♡ポーションを勧める事ぐらいしか出来ませんわ」

「それはどういった効果なんです」

「エアーハンマーを小刻みに打って、刺激を与えるのですわ」


「あなた、試しに使ってみましょう」

「そうだな、お前」


 やった初めての客だ。


「そこを少し行った所に連れ込み宿がありますわ。そこで試してみたら、いかがかしら」

「そうしてみるよ」


 そして、一時間ぐらい経った時に、あのカップルが再び現れた。


「あのポーションもっと下さい」

「そのご様子では満足されたようですわね」

「ええ、今までにない充足感よ」


 カップルに前戯の仕方を色々とレクチャーしてしまった。

 前段階が足りなかったのだ。

 これで、子供ができるかどうか分からないが、満足してもらえたのなら嬉しい。


「私は、サイラと彼は夫のノッチ。これからもよろしくね」

「はい、ごひいきにお願い致しますわ」


 ご主人は顔を真っ赤にしている。

 レクチャーの刺激が強かったらしい。

 でも真剣に聞いていたから、これからは充実した性活、もとい生活が送れるだろう。

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