第3話 液状化と、ポーションと、細胞のイメージ

 さて何を溶かすか。

 家探しして奥から箱を引っ張り出してきた。

 ご丁寧に箱に魔石と書いてある。


 魔法の手引書によればイメージできれば、魔法は何でもできると書いてある。

 溶かす魔法に関して面白い項目を見つけた。

 魔石を溶かすと液体の魔道具が作れるらしい。


 そう言えば、魔道具はどうだろう。

 作れないかな。


 魔石を一つ手に取る。

 ええと。


「【かの呪文を魔石に刻み込むのですわ。種火】、これで出来たはずでしてよ」


 女の子なんだから女言葉にしてみた。

 魔道具化した思われる魔石を起動させようとするが失敗した。

 魔道具化が上手くいってない。


 やっぱり魔道具化はおいといて、溶かす事をしよう。

 魔石を手に取って。


「【魔力を持って、魔石を溶かすのです】。やりましたわ」


 手の間から魔石が溶けた液体が垂れる。

 入れ物がいるな。


 コップや食器もあったので持ってくる。

 さて、プログラム的魔法も試さないと。

 性能が段違いという事だから。


 まず、タイトの手引書によれば、プログラムを呪文にした場合、効率がとても良くて、安定性もばっちりだと言う事。

 関数は架空の物で構わないらしい。

 ただ、詳しく書くほど、効率と安定性が上がると言う事だ。

 俺だって簡単なプログラムぐらい書ける。

 よし、こんなのでどうだ。


extern void liquefy(char *target,int target_size);

char magic_stone[100]; /*魔石100立方センチ*/

void main(void)

{

 liquefy(magic_stone,sizeof(magic_stone)); /*魔石を液体にする。*/

}


 この呪文で4センチちょっとの魔石が液体になるはずだ。

 プログラムは紙に書くと唱えなくてもいいらしい。

 書く物がないぞ。

 これは困った。

 砂でもいいのか。

 床の隅に砂が溜まっていたので、持って来て床に呪文を書く。


 適当な魔石を持ってきて、コップに入れた。

 さあ魔法だ。


「【魔石液状化】でしてよ」


 短縮詠唱してみたが、おお成功だ。

 コップの中に液体が出来た。


 短縮詠唱とは呪文をあらかじめ書いておいて、見て呪文をイメージする事だ。

 この時、題名を言えば短縮詠唱、言わなければ無詠唱となる。

 もっとも使い勝手が良いのが短縮詠唱らしい。


 それで、液体化した魔石のポーション化だが、いくつか問題がある。

 魔王タイトにも実用化は出来なかったらしい。


 なぜかという理由も書いてある。

 電気回路を考えた時に個体でないと、出来ない。

 常に流動している液体では無理だとの事。


 それで魔王タイトは溶かした魔石を塗料にして、紙に塗ってから魔道具化したらしい。

 ところが紙を折り曲げると魔道具としての機能を停止したとある。


 本当にそうか。

 物は試しだ。


「【魔力を持って、魔石水をポーションに変えるのです。効果は風】。できたのかしら」


 作ったポーションを舐めてみる。

 風が起こった。


 問題ないようだ。

 残ったポーションを再び舐める。

 やはり風が起きる。

 さっきの風は気のせいとかでは無かったな。

 出来ている。


 もう一度作ってみよう。


「【魔力を持って、魔石水をポーションに変えるのです。効果は生水】。できたのですわ」


 ポーションを舐めてみる。

 何もない空間に水が現れて落ちた。

 成功だな。


 なんでポーションが出来ないなんて、魔王タイトは書いたのか。

 電気回路と書かれていたな。


 それだと確かに無理だと思う。

 電気回路は液体では無理だ。


 でも無理でない物はある。

 ナノマシンだ。

 細かい部品一つ一つが独立しても動けば、ポーションは出来るはずだ。


 魔王タイトがイメージしたのが機械、だがエンゼルに機械のイメージはないはずだ。

 動く物と言えば生き物しか存在しなかったのだろう。

 エンゼルの動く物は細胞のイメージだと思う。

 細胞も考え方はナノマシンと似ている。

 ポーション化が出来るだろう。

 全て推測だがな。


 稀有な才能だ。

 ポンコツなんて思ってごめん。

 魔王タイトにも出来ない事が出来たのだ。

 後でほめてやらないとな。

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