第2話 手引書と、魔法と、イメージ
手に持っている本を見る。
魔王タイトの魔法手引書と日本語で書いてある。
中身も日本語で書いてある。
これを見て転生の記憶が甦ったんだな。
魔王タイトは日本人もしくは転生者だったようだ。
ペラペラとページをめくる。
呪文のページを見ると、おいおい、呪文がC言語じゃないか。
PythonかJavaに何でしないのか。
せめてC#にしようよ。
C++でも良い。
まあC言語をやっていればC#とC++の役には立つけど。
俺も大学で色んなデータ処理にパソコンは使ってた。
理系だったから、プログラムも組める。
C言語も、もちろん分かる。
ただし関数とか全然覚えてない。
本とかネットとか参考資料なしにプログラムしろと言われたら、どの言語も使えるかどうか怪しい。
C言語の事は、今は置いといて。
体の持ち主の記憶を辿ると魔法の事が分かった。
魔法はどんな言語でも受け付けるらしい。
国も違えば微妙に言葉も違う。
大陸が違ったら、魔法文明は存在してませんなんて落ちはないようだ。
とにかくイメージがあれば魔法は使えると。
詠唱はイメージを補足するものだと。
『火球』だけでも火の玉は飛ぶし、『火よ飛べ』としても良い。
『fireball』でも、もちろん受け付ける。
異世界の英語でも受け付けるなんて、なんて間口が広いんだ。
ただし法則がある。
詳しく詠唱してイメージするほど、消費魔力は減って安定する。
長い呪文ほど性能がいいわけだ。
但しその分詠唱に時間が掛かる。
これを回避するために短縮詠唱や無詠唱の技術がある。
良い呪文とは、詳しく説明してて、なおかつ短い呪文だ。
何を考えたか魔王タイトなる人物はプログラムで詠唱をすると考えた訳だ。
『void main(void) { fireball(); }』なる呪文が載っていた。
超お手軽ならこれだと。
分かりやすいようにしてみると。
void main(void) /*メイン関数。木で言うと幹*/
{ /*始まりの印*/
fireball(); /*ファイヤーボールを呼び出す。木で言うと枝*/
} /*終わりの印*/
ちなみに『/*』と『*/』に挟まれたのがコメント、いわゆる説明書きだ。
唱えてみる事にする。
「【void main(void) { fireball(); }】」
魔力を込めて唱えてみた。
駄目じゃん。
エンゼルは、魔法が大の苦手らしい。
魔法の発動に成功した事がないんだとか。
さっきのはプログラムだったから駄目だったんだ。
「【火よ火球となって飛べ】。駄目だ、やっばり発動しない」
俺の記憶が甦って改善されているかもと考えたが、やっぱり駄目だ。
魔法が命綱なんだよ。
このポンコツめ。
罰だ。
乳を揉んでやる。
標高
思い知ったかこのこの。
ふぅ馬鹿な事をしてしまった。
どうやっても魔法は使えないようだ。
まあそのおかげで舌を切り取られなかったんだがな。
魔法防止の方法は舌を切り取って、スペルブックを持たせないと記憶にある。
これをしても、イメージだけで魔法は発動するらしいが。
ただし、イメージだけで発動すると効率はもの凄く悪くなるみたいだ。
普通の人はイメージだけで発動すると種火の魔法を一回使うのが限度だと。
とにかく魔法が使えない。
もっとも、エンゼルは魔力が3万を超えているから、魔道具を使えば日常生活は何とでもなるらしい。
推測だが、魔法はイメージが大切。
エンゼルはそのイメージがなかったのではないかな。
屋敷から出ないで育てられ、家事も一切しない。
着替えさえしない。
下の世話もやらせていたらしい。
それで、何にもしなかったので、イメージが育たなかったのだと思われる。
このイメージというのは脳の記憶でなくて体で覚えるものらしい。
今だって魔法が使えないからな。
それで考えた。
エンゼルがやっていた唯一の作業は、お茶を飲む事だ。
食べる事もやっていたがこれはまあ置いといて。
お茶を飲む時に砂糖やらミルクを入れる。
気が向けば水中花なんて物も入れる。
これしかしてないってorz。
とにかく砂糖は溶かしたわけだ。
それで溶かす魔法なら出来ると考えた。
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