第28話 旅立ち 4
「隆、童玄と私がなぜ別々に生きなければならなくなったのか、童玄からはなにも聞かされてはいないのか」
「はい」
「そうであろうな。まだ五歳になって間がないにも関わらず、この様な目に遭わなくてはならぬとは」
銀月梠は項垂れた。
「おじさん、大丈夫ですか」
銀月梠は隆の頭を撫でる。
『私たちの長兄、
隆は銀月梠の心の声を訊いて悲しくなった。大きなどんぐりお目目から大粒の涙が溢れて、頬を伝って落ちていく、精把乱は銀月梠の心の声は訊けなくても気持ちは伝わってくる。涙を流すものだからブロッコリー頭の葉は水分が無くなりしんなりと萎びて垂れ下がる。
尊敬する偉大な父、童玄も銀月梠と同様、悲しみを抱いているのなら助けてあげたいと思った。困っている人を助けるのが隆の宿命である。隆の目から地面に雫がぽつりぽつりと落ちて、そこに生えるオジギソウがじわりと葉を閉じた。三人が座っている周辺に生え茂るオジギソウは次から次へと森の茂みまで
閉じて道を作った。
「あっ!」
涙を通してぼやけた小さな光の粒が見えて隆は目をこすり涙を拭った。
「どうしたのだ。隆」
「おじさん見えました」
「オジギソウが教えてくれたようであるな」
隆は立ち上がり小さな粒の光に向かい歩き出す。
「隆様!」
精把乱の声に隆が振り向いて微笑んだ。
「僕、行ってきます!おじさん、僕、必ず駿さんを見つけて、戻ってきます。精把乱、また、オレンジのジュースを作ってくださいね」
「はい!もちろんです。隆様の戻ってくるのを首を長ーくして待っております」
「隆、気をつけるのだぞ」
「はい!」
隆の背中は勇ましく光の中に溶けるように消えて行った。
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