第5話  時が動き出した

 真っ赤な人間こと、恐神駿太郎が目を覚まし少しばかりの会話をした。


 曹は朝食を部屋に持って来るよう李静に指示を出すと駿太郎は用意してある部屋で共に食すると言いだし、李静は肩を貸して一緒に歩いて移動した。


 縁側を歩きながら庭園を見下ろすとそこには少々規模は小さめであるが、堂々と立派な枯山水の庭があった。懐かしく感じた駿太郎は足を止めて庭に見入っている。


「どうなされましたかな」


 曹は振り返って駿太郎の顔を見上げ、駿太郎が見ている庭に目を向けた。


「庭がどうかしましたかな」


 脳裏にふと浮かんだ景色とよく似ている。

幼い時であろうか父親の膝の上でこんな庭を眺めている自分を思い出す。


「いや、昔見た事があるような気がしただけだ」


「そうですか、駿さんのお国でもこんな庭園造りなのですかな」


「お国……故郷つうことか?」


「つうこと?」


 李静は首を傾げる。


「つうことか!」


 と駿太郎は李静の目を覗き込む、


「つうこと……ですね。はい!つうこと」


 李静は眼球の鋭さに慄きながら、意味もわからないのに知ってる風に納得し、李静の茶色い肌が栗だっているのを見た曹は、深く追求することをやめて、踵を返し居間に向かい歩き出した。李静も曹を見習い、なにもなかったような顔をして駿太郎の腰を押し歩き出す。


 駿太郎は、すっかり抜け落ちて忘れていたはずの幼い記憶が甦ったことに気を取られていると縁側の柱によろけて頭をぶつけた。


「痛っ!」


「大丈夫ですか?」


「大丈夫なわけねえだろ!」


「すみません!」


 李静は、全く自分に非がないにも関わらず、何やら腰がひけてばかりでどうにもままならない


 曹は見て見ぬ振りで居間に入り自分の場所に菅の円座を置いて腰を下ろした。


 居間には座卓が置いてあり、そこに二人分の朝食が並んで置いてある。


 曹は手を差し伸べて、


「そこが駿さんの席ですぞ」


 李静はゆっくりと駿太郎を円座に座らせようとすると駿太郎は座卓に手をついて顔を歪め腹の傷の痛みに耐えながらゆっくりと腰を下ろした。座卓には平たい丸い箸置きに箸が置いてある。


 李静は台所に行き、土間に下りて雪駄を履き最初に味噌汁を注いだ後、白い濁った白湯のような汁を腕に注ぎ入れ木盆に四つのお椀をのせると、汁を溢さぬようにゆっくりと歩いて、それを座卓の上に置き、駿太郎、曹、自分の順番に置いた。


「駿さんは目覚められたばかりなので、これだけですからね」


「お……おお……」


 やっと目覚めた朝飯がこれだけかと、言葉を失った。


「おめえが助けてくれたのか?」


 気を変えるためそんな事を訊いてみたりした。


「あー食べながらでもお話しいたしましょうな。では、頂きます」


「頂きます!」


 李静は目を閉じて感謝の気持ちを込めて目を閉じた。二人の様子を伺いながら駿太郎も手を合わせ拝んだ


 目が覚めた時から、腹はぐうぐうとう鳴りっぱなしで、まあ最初の飯はこんなもんだろうと思っていたものの、曹のおかずをみて益々腹の虫が鳴き止まない。


「おめえの飯、豪華だな」


「そうですかな?」


 目の前にある朝食は具沢山の味噌汁、白飯大盛り、青菜の煮びたし、ほうれん草と油揚げの白あえ、卵焼き、じゃがいもととうもろこしの和物が並んでいる。


 駿太郎はふた腕、重湯と具なし味噌汁だけである。それを見比べて、


「まあ仕方ないですからな。屁はでましたかな」


「屁?ああ、そろそろ出そうだな」


「今、しないでくださいね」


「出そうな時、出さないと、駄目なんですよ。李静」


「そうなんですか?知りませんでした」


「まあ、十日間も意識が戻らない患者なんぞ、今まで診たことありませんからな」


 曹はもぐもぐと口を動かしながら駿太郎がここに来た経緯を語りはじめた。


 森の小川のほとりに倒れているところ、村の長の息子である隆たんによって発見されました。隆たんと共に私と四人の村人で森へと向かいます途中、その間ずっとひたすら駿さんの様子を説明をされたました。

そこに着くと隆たんのいう通り真っ赤な駿さんが倒れておられましてな。


 衣服が真っ赤に染まるほどの出血で、

倒れていた地面にも、どろりとした血の塊が落ちていましたぞな。

 それほど酷い出血で、ひどい傷を負い瀕死の状態だった事は言うまでもなく、とにかく危険な状態でした。


 と、曹は既に、馴れ馴れしく駿さんと呼んでいる。


 駿太郎の腹を指差し、


「そこですぞ」


 と説明する。


 腹の真ん中の傷はかなり深いもので致命傷でしたな。それは奥の方まで差し込まれたのではないかと思われました。

内臓の損傷も激しかったぞな。

もう少し発見が遅れていたら多分死んでいたでしょう。


 と曹はきっぱりと言い切った。


 駿太郎な診療所に運ばれ治療をすることになり、その時、着ていた服がどこの国の物なのかと、みなは盛んに話題にした。


「あれはどこの服ですかな。あのような衣服は生まれて初めて見ましたぞな。あれはどこで手に入れられたものでしょうかのう」


 問われて、


「あん?確か……チノパンとポロシャツだったよな……ユニクロだったと思うぞ」


 そう答えたのだけれど、


「ゆ•に•く•ろ」


 曹も李静も声を揃えてゆっくりと確認し合い「ユニクロ」を「ゆ•に•く•ろ」と拍子を取るように言っている。二人はなんとなく気まずく可笑しくて、ニヤリと笑い合った。


 だが、それしか言えない、その辺りの記憶がどうも曖昧ではっきりとわからない。

曹も李静もそのユニクロという響きが、気にいったのか


「ゆ•に•く•ろですな」


「ゆ•に•く•ろ……ですね」


 初めて耳にする響きでお経を詠むように何度も何度もくちずさみ連呼し続けている。


 李静は「あっ!」と思い出したように拍子を打って、


「その服は洗濯してしまってありますから」


 駿太郎に伝えた。


「と言っても、もう着ることはできませんけど、切り刻まれてますし、穴だらけで、ぼろぼろで、血液も綺麗には取れませんでした」


「いや!すまなかった。迷惑かけたな」


「いえ、迷惑だなんて、全然思ってませんよ本当に、思ってません。ええ、全然!」


 顔の前で手を振りながら、細い目をくっつけて微笑んだ。


 曹は話を続けた。殺傷部が三箇所あり縫合手術をしましてな。それは大変な手術でした。このような手術は初めてでしたからな、

話す言葉には重みがある


「童玄師匠と一緒に手術したのも初めてですね」


 曹はうんうんと頷きその時の光景を思い出し良い気分に浸っている。切傷などは村の秘薬である藻草を用いりまして、その藻薬は簡単に手に入らない薬草で、駿さんは特別な治療方で治療を施しましたぞな。そして、駿さんがこの長閑村に来て十日目にとなりました。それが時事でございます。


 駿太郎は自分に起きた一連の出来事を思い出すかのように頷きながら飯を食っているというより啜っている。ただの重湯は不味い、しかし腹に入ると、心がじわりとなんだか温まる。


 李静は時々箸を持つ手を止めて、駿太郎の様子を伺う。曹は平然と語り、平然と飯を食い、いつもと変わらぬ様子だ。


※※※※※


 今朝の長閑村は、うっすらと靄がかかっているがこれもまた珍しく花びらには露がすらりと垂れる。


 その長閑村に四季はなく、年中変わらぬ気候で穏やかで過ごしやすい。


 時折、霧がたちこむと、村人たちは新鮮な心持ちになり浮かれたつ。

霧の中を走り回り、先の見えぬ真っ白な世界が無限に広がる見事な場景である。

本日は、うっすら靄なので落ち着いて、早朝から畑仕事に勤しんでいる様だ。


はう、おはよう」


「浩おじさん、おはようございます」


 畑で腰を屈めてほうれん草の収穫をしている楊浩の背中に向かって童玄と隆が声をかけた。


 浩はゆっくりと腰を伸ばしトントントンと叩きながらゆっくりと振り向いた。

浩はほうれん草の育成が生業である。


「これは、童玄師匠、隆たん、おはようございます。今日も長閑で安泰ですね」


「長閑で安泰が一番です」


 童玄はいつもと変わらぬ優しい笑みで応える。浩も穏やかな面持ちで真面目な好青年だ。


「曹先生の処に行かれるのですか」


「ああ、そろそろ彼も目を覚まされるのではないかと思いましてね」


 浩も駿太郎を助けに行った一人である。

初めてみた余所者をまじかで、自分の手で触れた時、浩は不思議な感覚を得た。


 浩は怜の二歳下の実弟で、隆には叔父にあたる男だが、特別能力があるわけではない、ただの村人である。


 しかしなんらかの感覚を得た事は事実でありその事を童玄に話そうかどうしようかと悩んでいるうちに日が過ぎて今もって話せていない。


 隆は浩の事が大好きである。隆も変わらぬ、くりくりお目目と下膨れの頬をして微笑んでいると、


「隆たん、相変わらず可愛い顔してますな」


「はい!浩おじさんも、若いのに腰トントンしてますね」


「立ち上がる時は気をつけないと、この前みたいに急に動けなくなりますから」


「あの時は大変でしたね」


「あの時、隆たんがここを通ってくれて助かりましたよ」


「はい!こんど、痛くなっても、ぼくがここを通りますから」


 先日、浩はいつものように、ほうれん草の収穫中をしていた時、突然、ぎっくり腰になった。


「うぅ動かない、どうしたらいいんだろうか

うぅ動けない、腰が……腰が……誰か、いませんか」


 首だけ動かし周りを見みてたけれど、誰も見当たらなかった。声を出そうにも、まともに出せない、少しでも動こうとすると、

「ぎゃー」と叫びそうになるほどの激痛である。その場から動けなくなって困っていたところ、隆が偶然通りかかり人を呼びに走って村人を集め診療所に連れて行ったという出来事があった。隆は困ってる人に出くわすタイプのようである。


「童玄師殿、おはようございます」


 隣の畑から声だけが聞こえる。背の高い鞘に隠れて姿が見えない。隆は駆け寄って姿を探していると、


「ああ、そんさん、おはようございます。昨日はとうもろこしを頂きまして、ありがとうございます」


 背の高い童玄はいち早くそんを見つけることができた。するとさやの間をかき分けながら童玄のいる方へと向かっているのだが、


 真っ赤な顔して必死にさやと格闘しているのは、背丈は低く、麦わら帽子姿の笑うと目尻に皺が三本入る丸顔が特徴の孫駕王(そんがおう)という面倒見のいい老人である。やっとのおもいで畦道に出て来た。


「童玄師殿、隆たん、相変わらず可愛いですなあ。あの……たんび御礼は言わないようにお願いいたします。孫の伝(でん)の教育をしていただいてるのですから」


「それはそれ、これはこれでしょう」


 長閑村の民たちにはある種のここでの生活の規程がある。


長閑村には五十世帯、総勢百五十五人の村人が住んでいる。


 村人ひとりひとりに畑が与えられ一種類の野菜、果物などを責任もって育成し、それを其々育てた野菜などと交換して日々食する。米、小麦に関しては全員で管理をし皆で分配をする。


 曹は医療提供、村の女性たちは怜を筆頭に、花の苗、裁縫、ジャム作りなど女性ならではの作業に他諸々勤しむこと。


 童玄は自宅の横に小屋を立て、そこで村の子供達の教育をすること。


 こうして、長閑村では長閑で平和な日々の生活が成り立っているのである。


 しばらく歩き、そうの診療所に着いた。


「おはようございます」


 隆の甲高い可愛らしい声が診療所に響き渡る。李静はいつものようにペタペタと足音をたてながら玄関先まで小走りに出て正座をし頭を床につけた。


 三和土に立つ二人は手を繋ぎ李静を見ると互いに顔を見合わせ微笑む。


「李静さん!おはようございます」


 二人の声が重なると、耳心地よい音を奏でるようだ。


「はい!おはようございます。童玄師匠、隆たん、本日もお天気よく、長閑で宜しゅうございます」


「長閑ですね。ここに、来るまでも、浩や孫さん達とも挨拶を交わして来ました。彼らは早朝からよく働きますね」


「はい、みなさん働き者です」


「牛蒡の育成はどうですか」


「父さん!李静さんを見ればわかります。元気そのものです」


「……」


 童玄は牛蒡男の様子を伺ったわけではなく、畑の牛蒡の様子を訊いたつもりなのだが、隆は心なしか落ち着かなく気が焦っているようだ。


「李静さん!真っ赤な人間は目を覚ましましたか」


 李静はゆっくりと顔を上げて、細い目のままにこりと微笑む。


「はい!隆たん!真っ赤な人間、起きました。今、先生と朝食を食べております」


 隆はくりくりお目目を、ますます、くりくりさせて満面の笑みで童玄を見上げた。


「どうぞ、お上がりください」


 履き物を脱ぐと上がり框(かまち)で二人揃って膝を折って、腰を下ろし靴を揃えて立ち上がる。


 李静は一糸乱れぬふたりの様子を伺いながら、右手を差し伸べ、先に廊下を歩き二人を居間へと案内した。


※※※


「しかし、あちらこちらに龍の絵が飾られているんだな」


 駿太郎は箸を置いて絵を見上げる。


「それはもう、どの部屋にも飾っておりますよ。貴方様がお目覚めになるのを心待ちにしておりましたからね。毎日、毎日、此処にいらしては、龍の絵を描き、待っておいででした。飯の味は如何でしたかな」


「ああ、まあ、多少は腹の足しになった。あの牛蒡男が作ったのか」


「はい、あの牛蒡男がこしらえました。名は李静りーじんと申します。ちなみに私は」


「エンジェルジジイ……だろ」


「えん……えん?言えませんがな」


「エンジェルだ!」


「ん?えん……じぇるとは?」


「天使って意味だ」


「ほおー天使をエンジェルというのですか?ほおー、変わった言い方ですのう」


 曹は言葉の違いに驚いたものの、意外と面白みのある男ではないかと嬉しく思った。


『私はエンジェルジジイか……』と心の中で呟く、ペタペタと足音が聞こえて来たと思ったら、童玄と隆が会釈をして居間の敷居を跨ぎ腰を下ろした。


 痛む腹を押さえて頭を下げた。


「俺の命を救ってくれたんだってな。礼をいう」


「いえ、助かって本当によかったです。一時はどうなることかと心配いたしました。この子が森に出かけていて良かったです」


 童玄の横にちょこんと座っている隆に目を向ける。自分を見つけ、助けを呼ぶと言う行動をした子が、この子なのかと駿太郎の思考を止めてしまった。


 あまりにも幼く、まだどう見ても赤子に毛が生えたような幼さで、そういう思考ができるように見えないものだからどうも繋ぎ合わすことがでない。


「この小せぇのが、俺を見つけてくれたのか?こんな小ぃせぇ……」


 隆は唯々嬉しげに微笑んでいる。やっと念願かなっての真っ赤な人間と対面できたのだ。


 大きな目の中でつぶらな瞳がきらきらと輝く、疑心のない屈託な笑顔、穢れていない真っ新な心、隆の無垢な可愛らしさが、駿太郎の心をぶち抜いた。


「おめぇが、俺を助けてくれたのか?」


 なんとなく、てめえらしくねぇ、優しい声で、てめえらしくねえ、穏やかな言い方が、小っ恥ずかしくなって、こそっと俯き歯に噛んだ。


「ぼく見つけただけです。父さんが藻薬を湿布し、曹先生が治療してくれたので助かりました。ぼくは見つけて、父さんに知らせただけです」


「おお、そうか!ありがとな」


 小さいわりにはしっかりしているガキだ。もしかしたら見た目が幼く見えるだけで実際は思ったよりも高学年?なのかも知れないと駿太郎は思った。


「あっそうだ!あんたがこの絵を描いたんだってな。素晴らしい龍だな」


 駿太郎は童玄をいつもの駿太郎の鋭い眼球で見やった。


「いえ……それは……」


 駿太郎は童玄が龍の絵を描いたと思い込んでいるようで、


「どの龍も生きているようだな。俺は龍が好きでな。この背中……」


 駿太郎はゆっくりと壁の龍を見上げた。


「もしかして、その龍は俺の背中の龍なのか?」


 そこにいる全員が駿太郎と同じ顔して龍を見上げる。


「今、気づいたのですか?気づくの遅くないですか、それに……」


「あん?」


 李静は龍の絵は隆が描いたものと伝えたかったのだが、二人の鼻先は触れ合うほど近く、駿太郎の鋭い眼球が李静の目を捉える。


 蛇に睨まれた蛙のように身動きできなくなった李静はぴくりとも動かなくなった。

 そのすぐ横から隆が顔を近づけ微笑んで見ている。


「あの、真っ赤な人間さん、ぼくにお名前、教えてください」


「あん?」


 その鋭い眼球を隆に向ける。間近で見る怒迫力ある眼球に、隆は、「ぐっ!」と声を出し気合を入れて、目に力を入れる。と、息が止まる。


 李静は今のうちにと、急いで腕を下げ、その場から台所に逃げ去った。


「隆、息が止まってますよ。息をしなさい」


 なんとも、おっとりと声をかける童玄である。


「おめぇ、何してんだ?」


「真っ赤な人間さんの!目の!まね!」


 まだ息を止めたまま、息をしようとしない隆に駿太郎は自分の額をごつん!と小さな額に頭突きした。子供だろうがなんだろが、駿太郎は手加減しない。


「痛ーい!」


 隆は悲鳴を上げた。曹はびっくりたまげて円座からひっくり返り、童玄はあっけに取られ、ガチャンと激しい音がしたと思ったら、李静が茫然とし気が抜けてお椀や皿をのせたお盆をそのままそっくり土間に落としていた。


 隆は額を床につけて足首をバタバタと揺らしている。


「痛い!真っ赤な人間!なにするの!です」


「おめえがいつまでも息を止めてるからだろうが!死ぬぞ!」


 駿太郎は目をむいて怒鳴った。それは、それは、けたたましく波や風が唸りをあげ、荒れ狂るような怒号、戸愚呂を巻いて天井高く舞い上がり圧倒的な存在感の炯眼(けいがん)を持つ黒龍が隆の身体を包み込んだ。


 隆が黒龍を描き続けた意義はまさに運命のつながりを示している。


 顔を上げた隆の額は少しばかり赤く腫れていた。額を摩りながらも嬉しそうな隆の顔をみた童玄は心なしか寂しさを覚える。


 この出会いが隆と駿太郎の始まりである。

この出会いが、この先の二人の未来にどのような影響をもたらすのか、この時、駿太郎も隆も知る由もなかった。


 童玄は静かに目を閉じゆっくりと息を吐いた


 曹もまた、時が来る事に胸の奥がちくりと痛む、


「李静、お茶でも入れましょうか」


「あっ!はい!曹先生」


 李静は落とした物を素早く片付け、お湯を沸かし茶の準備を始めた。


 黒龍は眼光炯々と二人を見つめる。


 時が動き出す。


 もう誰にも止めることはできない。









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