第8話
「何をする!」
「こうするのさ!」
なんとかうまく、朧車に飛び乗った勇人は、バイクのブレーキを握った。
ぐんぐん朧車の速度が落ちる。
やがて朧車は失速して止まった。
気付けば、車は300メートル程後ろで止まっていた。
「無茶をする」
「こうでもしなければ、止まらなかっただろう?」
「確かにな。だが、我の止め方は他にもあっただろう。我を破壊するとかな」
「ああ。だが、そんなことをして、内村さんが喜ぶと思うか?」
朧車は少し沈黙した。
「だから、命をかけたのか?」
「人の悲しむ姿は見たくないからな」
「馬鹿な男だ」
「なんとでも言え」
「だか、嫌いではない。この体、あの男に返そう」
そう言うと、朧車はバイクから幽体し、半透明な姿で勇人の前から走り去って行った。
終わり
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