第7話

「速い」

 アクセル全開でバイクを追いかける。

 あと、3メートル程と言うところまで追い付いたが、そこから距離が縮まらない。

 そこで勇人は、バイクに話しかけることにした。

「朧車!」

「我を知っているのか?」

 バイク=朧車が喋った。

「ああ」

「今時、我を知っているとは珍しい人間だ」

 朧車は少しスピードを落とし、運転席側に並走を始めた。

「朧車、止まってほしい」

「なぜだ?」

「お前の体の持ち主がいるからだ」

「ほう。どこにいる?」

「ここだ」

 言って勇人は助手席にいる内村を指した。

「知らん顔だ」

「お前の新しいオーナーだぞ」

「それは、人間のルールだ。私には関係ない」

「そりゃ、そうだが。どうしても止まってくれないか?」

「ああ」

「そうか。なら、仕方ない。内村さん、ハンドルをお願いします」

「え、え、え?」

 内村は戸惑いながらも、勇人に言われるままハンドルを握った。

 それを確認すると、勇人はドアを開け、朧車に飛び乗った。

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