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 猛スピード/ガソリンエンジンのような荒々しさはないが、タイヤが地面を蹴る音と、電動モーターがキーキー音を立てている。車内は左右前後、上下に揺れる=気分が悪くなりそう。

 守衛はニシとテツの乗った多目的輸送車ハンヴィーを見るなり基地のゲートを開けてくれた。

 疾走=「構内徐行30km/h以下」の看板が見えた。平時なら懲戒処分モノの運転。タイヤがキリキリと擦過音を立てる。

「地下の自働工廠ったら、北側の広場でこの間から工事してたやつだよなぁ」

「ええ。資材搬出用の出入り口があるので、多目的輸送車ハンヴィーでそのまま乗り付けることができます」

「共振器は1つ300kgはあるだろ。それにデカい。ニシさんが作っている間、トラックを取ってこようか」

「いえ、急がないと潰瘍が広がってしまいます。この多目的輸送車ハンヴィーに乗せていきましょう」

「載せるってもせいぜい1台だけだろう」

「魔導で軽くして積み上げます。それなら5台でも10台でも運べます」

「まったく、魔法ってのは便利だねぇ」

「ええ魔導・・ は便利です」

 基地の北側の更地=古い地下鉄の駅をさらに拡張/魔導機械の群れを収納。そこへ続くスロープの中ほどで停車した。扉が閉じたままだった。

「ついてねぇなあ、俺たち」

 テツ=溜息。

「世界を救っているってことです」

「そういうことにしておこう。扉を開けてくるからちょいと待ってろ」

 その時、空気を揺らす爆轟があたりを包んだ。地面が揺れて、ひどい耳鳴りに襲われた/同時に強力なマナの流れを感じた。粉塵で視界が悪くなった。

「直近です。たぶん、地下施設の直上あたり」

「ああ、畜生」テツ=扉の操作パネルの前で「今の爆発で緊急プロトコルが発動した。この裏側で防爆ドアまで閉まりやがった。開けるには、俺より上位のアクセス権限が必要だ。佐藤女史に来てもらうしかない。が、そんな時間はない。少し時間をくれ。緊急プロトコルをオーバーライドする」

 銃と筋肉の男=そういうイメージだったが、電子的な知識も持ち合わせていたのか。

「大丈夫です。こじ開けます」

 ニシが固く閉ざされた扉に手を触れた。

「こじ開けるって、軍事規格のブラストドアだぞ……って失敬。魔法使いだったな」

「魔導士です」

 備品を壊すとか、そういうことに配慮している余裕はない。お上品じゃない方法で開けるしかない。

 高速詠唱。声なき声を唱えた。左右に引っ張っ・・・・てみた・・・。表側の薄い扉が押しつぶされるようにしてひしゃげた。しかしその奥が動かない。重く/分厚く=扉というより壁だった。

「どういう構造ですか。金庫みたいな」

「たまげたねぇ。一体全体いったいぜんたい、何のためにこんなものを。劣化ウラン弾でもなきゃ穴を開けられな……違う、開け方だったな。扉の重量自体もそうだが、左右、内部にかんぬき状の鉄柱が刺さっているはずだ。それを焼き切れば、持ち上げあれるはずだ。いや、普通は持ち上がらないんだが」

「任せてください」

 高速詠唱。新たにエメラルド色に輝く魔導陣が扉の左右に現れた。その上部からゆっくりと熱線を照射=鋼鉄製の閂を焼き切っていく。

 激しく火花が飛び散る/テツは腕で顔を覆った。

「ぶったまげたねぇ。こんなこともできるのか。これじゃ、どんな敵でも負ける気がしねぇ」

 テツ=ニタニタ/武者震いが止まらない様子。

「扉を持ち上げます。多目的輸送車ハンヴィーをお願いします!」

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