18

 敵:確認。

 数:たくさん。

 判別:C型怪異。

 判断:雑魚ばっか。

 C型怪異=幅の広い鎌のような両腕を広げる/銃弾をはじき、軟標的=人間を刈るための禍々しい造形=悪意を持って創られた異形。

 カナの指が軽やかに動きマナを編む。それはマナの旋律となり響き渡る四重奏カルテットだった。

「スパークッ!」

 C型怪異の群れの真ん中で凶悪な光が勃興=光を天賦とする最高位の魔導士の本領発揮/怪異の物理防御も魔導障壁もまとめて焼き払った。

 怪異の体が一瞬にして灰になる/消失。

 影/もやとも判別できないぐらい小さくなって消えた。

 後悔すべき点として、ニシがいないこと=私の輝く姿を見てほしい。

 カナは一歩も動かず/周囲の怪異は瞬く間に灰燼に=ただ指でマナをかなでるだけだった。

 ふと、横の若い隊員と目が合う。

「……何よ?」

「え、いや、魔法の呪文が」

魔導・・。それが何か」

「昔、自分の妹が見ていた『Magical★Girl』で聞いたことがあるような。きらっと光って敵を倒す、みたいな」

そんなわけ・・・・・ないでしょ・・・・・偶然です・・・・

「す、すいません」

 どうして謝るの。怒っていない。

「いいから。あっちをお願い。群れを倒すのは得意だけど1匹ずつ潰すのは苦手だから」

「あっ、はい」

 若い隊員はなるべくカナに目を合わせないようにして立ち去った。

 昔? 『Magical★Girl』はまだ放送中だっての。まったく。それに敵なんかじゃなくて悪のフォーチュナーなんだから。まったく。

 1歩前へ踏み出す。倒しても倒しても、わらわらと怪異が潰瘍から出現する。

 方々では騒々しい銃声が立て続けに起きているが、人が足りない。いや、全員がいたとしても、こうもC型怪異ばかりでは戦力不足だ。

 ちらり。目の端に影が走った=確認:怪異/1匹だけ。

 またも指が動く/マナを編む/旋律を紡ぐ。

「シャッダー」

 細い声/詠唱。

 C型怪異は細い光の線条に包まれる/あっという間に裁断=消失。

 左右方向から同時に怪異=全部で10匹くらいか。

 指先がマナを編んで印を結んだ。

「フラッシュ!」

 高々と唱える=たちまち鋭い閃光が放たれ怪異が炎に包まれる。

 しかしまだ動いている。

 ちらり=睥睨。

 前触れもなく巨大なコンクリート塊が横殴りで飛んでくる=怪異が消失した。

「んーだめね。光以外の魔導は美しくない」=溜息/魔導の美学。

 詠唱を誰にも聞かれなくてよかった=安堵。

 とりあえず今は防げている。今だけは。ただこれは消耗戦だった。

 隊員たちの武器の残弾には限りがある/敵は無限。武器が無くなったところが防衛線の穴になる。大元の潰瘍の出口をふさがなくてはキリがない。

 その時、空気を揺らす爆轟があたりを包んだ。地面が揺れて、巨大な噴煙が縦方向に伸びた。

「今度は何よ!」

 噴煙を見やった。

 ──背後から襲ってきた怪異を、目視なしで光の刃でなますに切り刻む。

 これはただの爆発じゃない。どこかで見た覚えがある。確か……。

地中貫通爆弾バンカーバスター に似てるけど、地面が盛り上がる爆発がない。高質量体が高速度で貫通しただけ? でもどうして」

 思案。

 ──指先の向きをわずかに変え、別方向から襲来した怪異を焼却。

 確かあの辺りは、導入したばかりの新機軸の魔導機関と自働工廠がある。

 嫌な予感。

 建設途中の現場を見た感想=なぜ軍事施設並みの強化コンクリートで封じるのか。第三次世界大戦あのせんそうで常盤興業が外国の軍隊に襲われたせい? たぶん。それだけ隠し通したいものなのか。

 じゃあ、敵の目的は潰瘍ではなく、新機軸の魔導機関?

「まさか、これは陽動」

 誰が? まずい=しかしここを動けない。

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